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 要は『ヤバい〜、ハチさんこのままだとぶつかりますよー!』と考えてるのに、自分は避ける行動に移れないという……。


 なんで頭と体のリンクがこんなに鈍いのだ?

 私のスマホか?

 読み込みが遅いならぬ飲み込みが遅い。

 スマ子はいらないとこだけ早いんだよな。


 鈍いのは、頭の中でこんなに1人で騒いでるからか?


 普通の人は違うの?

 脳内で喋ってないの?

 妄想が常に流れてないの?

 どうなの?

 サチ子は鈍いの?

 鈍いな。

 それは確かだ。

 って、そうこうしているうちに階段あと2段ですけどー!

 南無三!


 と、いうタイミングで、ハチさんはくるりと回れ左で飛んでいった。

 サチ子と違って実に鮮やかな無駄のない動きだ。

 サチ子は私だ。

 ……。




 ハチさんは、またも風呂敷包みを抱えてきた。

 今日は引き戸を開ける音などは聞き逃した。

 あら、私はそんなにゲンナリしていたの?

 あのオシャレ什器を見逃すなんて……って!


 なんじゃこりゃー!


 今日は反対側に来てしまったので、庭を突っきって移動しなければ見ることはない。そう考えていたものが、そこにはあった。


 昨日のオシャレ什器だ。

 これ自体はシンプルだけど、さり気なくレースの上に商品(か、どうかは相変わらず謎)が置かれていたり、可愛らしい。

 私にはない、センスの良さというものを全面に押し出している。

 フラフラ近寄るけど気後れして店員さんに声をかけられない感じ。


 そして、昨日とはちょっと違った。

 多分。棚の中が。

 昨日は小瓶がほとんどだったが、今日は小瓶より背の高い物も並んでいる。気がする。


 よく見たい気もするが、ハチさんはすぐに私のところに戻ってきた。

 ひょい、と差し出されたのは昨日より小さい包み。

 中身の大きさの差はわかるけれども、風呂敷 自体が昨日と違うかもしれない。

 昨日の大きい まんまるボールを包んでいる風呂敷だったら、これもっと余るもんね。

 結び目も綺麗で、そんなに風呂敷が余っていない。

 風呂敷自体、何枚かあるのかもしれない。

 大きさの種類が。

 本格的に風呂敷包みで販売してるのかしら。


 で、今は風呂敷はどうでもいい。


 えーと、これ食べ物でごんすかねまた?

 いただけるんですかね?


「開けてもいいですか?」


 おぉ!自然に口から出た!

 私にしてはいいぞ!

 なんせ今は甘いものはいい。

 絶対、食べたくない。


 明らかにハチさんがやってる蜂蜜屋。

 昨日のように、ハチミツ単独ではなく活用した商品だろうと、甘いのは違いなさそうだ。


 やば。

 そのうちハチのコとかが売られてたらどうしよう?

 すごく気まずい。

 ていうか、いらない。食べたくない。

 絶対いらない。

 ギリギリ蜂の巣ぐらいだったら食べてもいい。

 蜂の巣も食べたことあるが、すっごくワクワクして食べてみたら、口の中にクチャクチャ残って嫌な感じだったけど。

 なんかお菓子食べてる時に、間違ってビニールが口に入って噛んでるみたいだった。


 そういうわけで、蜂蜜かはちみつを使った食べ物以外はノーセンキューである。

 そして甘かったら、食べるのは後回しだ。


 ついでに。

 はちみつ梅などのように、しょっぱい系のものにも蜂蜜は使われるが、私はあれも全然ノーセンキューだ。

 ただの思い込みとか頭の中がアップデートできていないと思うけれども。

 どうしてもシソとか梅とかって、しょっぱいものっていう安心感があるので、口に入れて甘いと体が受け付けないのだ。

 びっくりして吐き出してしまいそうになる。

 いくら理性で押さえつけようとしても、そういったものはなかなか体が覚えてくれない。

 ちなみに梅酒は気にならないが、梅ジュースも飲まない。


 私はビビリなので、変なところでけっこう保守的なのだ。

 あんまりアレンジの方に関心が向いていかない。

 梅ジュースとかは、ただ単に小さい頃ウチで飲んでなかったから慣れてなくて手が出ないだけだと思うが。



 壁に片膝をつけて、その上で落とさないように慎重に包みを解く。

 軽いな。

 結び目を引っ張るうちに落としそう。


 出てきたのは具だくさんのサンドイッチだった。

 色合いを見ると、多分同じものが2つ。

 風呂敷包みのサンドイッチは人生初かもしれない。


 小さなメモ紙が入っていて、横書きで『はにーますたぁどアジ』と、書いてあった。

 ハニーマスタード()ですか。

 そうですか。

 ひらがなとカタカナですか。


 ハチさんが書いたの?


 ブウゥン。

 いかがですか?とでも聞くように、ハチさんが距離を詰めてきた。


 あ、近寄んないで。


「あ、えーと。

 甘そうなので後で食べますね。」


 ハチに気をつかう私って、何してるんだろう。


 ハチさんはちょっと止まってたかと思ったが、そのままくるりと踵を返し、ブゥーンとちょっと飛んでった。

 そして店の横に。

 用は建物の入り口である。

 その入り口を塞ぐ形で什器が置いてあるのだが、その横、残った出入口のところでちょっと高度(高度?)を下げた。


 そして……あ!

 よく見ると。

 出入り口側、庭の方からこちらを体を半分壁から出して覗き込んでいる、……何あれ?

 虫みたいなのがいた。


 ハチ?


 ハチだろうか。

 ハチさんよりはずっと体が小さい。

 大きくても困るが。


 しかし普通の蜂はよりはでっかい。

 私の手のひらを広げたくらいの大きさだろうか。


 何だあいつら。


 ハチって立つんだな。

 なんかニ足歩行して壁に半分体を隠したまま、こちらを覗き込んでいる。

 何、あれ。


 しかも2匹いる。


 ハチでいいの?


 ハチって二足歩行するの?

 いや、歩いてないけど。

 立ってるだけなんだけど。


 ハチさん(大)は、近寄りそのハチ(小)二匹をパコンパコンとぶんなぐった。

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