スマ子
青い海の白いお家からご機嫌よう。
伊藤祥子でございます。
ウチのスマホ子の言う事には、私まだ東京都民だそうです。
早速、謎。
スマホの語り、もとい、捨てられまいとの必死の説明によると。
海は異世界。
気味子さんがドカンした、透明壁の内側は(多分)元の世界のまま、だそうだ。
電気ガス水道が使えるのはそのため。
ただしどれ程続くかはわからない。
引き落としが続く限り使い続けられるのかが重要案件なのだが。
それでいければ、生活が保たれる。
支払いが止まっても、水は生命維持に必要だから、少なくとも水道は3ヶ月止まらないと聞いた事ある。
貧乏人に水道は重大である。
ペットボトルのお茶買うお金すら惜しいと、空いたペットボトルに水道水入れて飲むからね。
銀行の残金は、もうアプリが別物で確認出来ない。
スマ子、居心地悪そう。
焦って言い訳したそうな空気を感じる。
コイツ、メンタル弱いな。
私の持ち物だから私に準拠するんかな?
海の上だしね。
まずは水がないと死ぬ。
雨風は、カーサフクダは古いけどまだ全然その点大丈夫。
でも勿論、電気ガスも必要。
その為にただのスマホはスマ子へと進化したらしい。
完全に代わりにはならないが、補助の為に。
ここに来て始めに私がした事。
起きてカーテン開けて、窓開けて(これは記憶になかった)必死にスマホ握った。
コレ。
この行為が発端らしい。
……世界の終わりかと思ったのだもの。
これによって強く魔力が流れ込んだ。
魔力、やっぱあんのか。
正確には、マナ(と一応呼ぶ、と言われた)を含んだ風を受けたので、変化が始まり、そこに私の魔力が流れ込み別物になった。 時間をかけて。
(私の)魔力、やっぱあんのか。
マナ(?)は(この)世界中に存在している、エネルギーのようなもの。魔力の素にもなる。
水にも風にも土にも、とにかく全てに基本的に宿っている。
動物以外。
「菌はどうなるの?」
「まだ研究が進んでいません。御主人茶々を入れないでください。」
誰の研究?と訊きたかったが、聞き捨てならない言葉があったのでやめた。
とりあえず、マスターは嫌だとやめさせた。
中二病は卒業……してないかもだけど、最盛期ではない。
こいつヨイショ下手くそだ。
自分に益々似てる。
ちょいちょい落ち込みを挟む。
んで解説の続きによると、基本的にマナは枯渇はしないが、減ったり溜まったりする。
土地の豊かさ等に影響はみられるそうだ。
ただし人為的に貯める方法はまだわかっていない。
魔力は、マナを生体に通して発生する。生体を通さないと発生しない。
植物も魔力を持つ場合があるので、生体を通してどういうプロセスで魔力に変換するのかは、ハッキリとはわかっていないそうだ。
とりあえず人間は意思によって、魔力に変換する。大体は。
これが、人によって簡単だったり難しかったり出来なかったりする。
あれ?私は?
「元々魔力があったようです。」
向こうの世界もマナがあるのかと思ったが、違うようだ。
この世界と同じマナはない。
が、マナとは別の魔力の素があるのか、は謎だと。
「我々のいた世界では、そもそも空想として扱われていた為、わかりません。」
そうっすね。
魔力あっても魔法が使えない事だけはわかってる。
皆が魔力に自動変換して持ってるのかも、謎。
少なくともスマ子は、ここに来て初めて私の魔力を感じたそうだ。
どーなってんだーー!!
という強い心の叫びに対応したようだ、と。
こちらでは本来、同じ無機物でもその辺の石にもマナが宿っても、人工物には宿らないし、貯められない。
しかしスマホは電波を受けるとか充電するとかの機能がある。
透明壁……めんどくさいから、恥ずかしいがバリアと呼ぶ。
大丈夫、童心に還れ。
小さい頃は鬼ごっことかでよく使っただろ、腕バッテンにしてバーリア!って。
カッコつけたって説明は進まないよ?
”カッコつけてんの、コレ……“
バリアの内側は向こうのままだけど、唯一風は通り抜ける。
(出来るだけ)毎朝窓を開けて、空気の入れ替えをしていた。
マナが充電器にささってる貯め込み中のスマ子に溜まって喋り出すまで2週間。
早いのかどうなのかわからん。
この世界に他にスマホないらしいから。
無機物にマナが貯まるのは凄いのだ、と必死のスマ子。
落ち着け、捨てないから。
そして何故にそんな事が起きたのか。
スマホ以外、今のところ変化は見られない。
別のイドウタイになっていない、というヤツだ。
それには元凶がおそらく関係しているのでは?と。
原因についてのスマ子の説明に、私は全然ついていけない。
この現象、カーサフクダが何故、異世界の海にいるかだ。
色々、言葉を変えてわかる範囲で解説されるが難しい。
自慢じゃないが、全然わからん。
スマ子も予想を必死に話す。が、わからん。
2人(?)して焦る。
捨てられないように必死なスマ子。
落ち着け、捨てないから。
あっちでもこっちでもお前は、玄関を何処でもドアに変えられる唯一つのスマホだよ(恨み)。




