取得
釈然としないものを感じる。
しかしながら、どうせ自力では解決方法は思い付かない。
というか、すでに万策つきた。
許可証取得のやり方が書いていなかったので、戻るボタンをタップして検索し直した。
『お庭番通行許可証』
しかし出てきたのは、何だか関係なさそうな難しそうな話ばかり。
さっきみたいな、わかりやすく解説してくれるブログみたいなのがない。
何喋ってんだか全然わかんないよ。
不思議なことに、検索したらちゃんと日本語で出てくるんだけどね。
どういうことだろう?
前に言語選んだのが未だに設定されてるのかな?
さっきの『ハチさん 階段 降り方 』と検索し直した。
で、多分この辺かな?これだったかな?という記事をもう1回読む。
庭園通行許可証!
なるほど!
お庭番のイメージが強すぎたからね。
検索の方法が違ってた。
正しく使えていない、というやつだねコレ。
はいはい。
って、また閉じてやり直し。
……はいはい。
先は長いが焦るな、焦れば負けだ(?)。
『庭園通行許可証』
頭の中で、いや口から出てたかもしれないけど。
リフレインしながら、間違いないようにと思ったら通行を間違って交通許可証になってしまった。
何故だ。
そして『あ〜間違った。そして次いっちゃったな〜』となるのは何故だろう。
すぐに行動に移しているのに、間に合わないばかりか間違った流れがスローで見えている。
何故だ。
私の、脳から指先までがそんなに伝達が鈍いのか。
しかしそれでも、パーッと 記事一覧が出てくる。
「存在しません」
とか
「やり直してください」
じゃないんだな。
交通許可って、それが庭ならそんなの私有地扱いじゃないじゃん。
……へー、ふんふん。なるほど。
そんな人様の庭を交通していい、っていうのがあるんだ?
あー、そういう事情は仕方ないね。
あら、そういうパターンもあるの?
とか。
見ながら、ついつい脱線。
なんか紛らわしいけどな。
似てる言葉で、違う状態とか許可証とか。
んで。
私の今回の本題にもう1回やり直そう。
私こうやって脱線してるから疲れやすいのかな?
と、ちょっと思った。
『庭園……』
えーっと。
……庭園、限定だったよね?
庭園で合ってるよね?
御庭番なのに庭園だったよね?
合ってるよね?
少しは私、自分を信じていいよね?
ついさっきまで唱えていたハズなのに。
いやいやいや、アイびりいぶ。
庭園だったよね。
……次、何許可証だったっけ?
自分家の庭に降りたいだけだったんだけど。
なんとか許可証……。
もう!
こんなんだったら、検索し直すのがめんどくさいから自分の頼りない脳みで勝手に進めるヨ゙!
こんがらがるばかり。
あれ?何回タップして戻ればよかったんだっけ?
さっき何だったっけ?
何がダメだったんだっけ?
仕方なくコンクリの階段に座って、手帳を出して斜線を引いていく。
『自庭園許可証』、斜線。
『庭園交通許可証』、斜線。
斜線つーか横線。
ま、いっか。
『庭園許可証』
ポチポチ。
出た~!
検索のトップに、賞状みたいな画像が出た。
正確には画像付き説明文みたいのがトップだった。
よし。
そのまま御老公様の印籠のように突き出したい気持ちを抑えて、説明文を読む。
えーっと、こうやって、ここ直して。
ハイ!
出来た!
行くぜ!
虫除けスプレーを探しに部屋へ戻りたい気持ちを抑え、悠然と階段を降りていく。
3段くらい。
ボォォー。
という、高いのか低いのかよくわからない音がして、戻る。
……この建物の端まで行ってから降りたほうが良くない?
『この許可証が目に入らぬかー』と全方位に掲げて歩くのは大変よ?
外を歩く距離は縮めたほうがイイネ?
二階に戻り、通路を歩いて、コの字というか門の字というか、建物の端まで移動する。
幸い突き当りの扉を開けてもハチさんはいなかった。
いよいよ深呼吸して、許可証を確認。
体の前に、すぐハチさんに見えるように画面を出してゆっくり階段を降りる。
この格好って、ホラー映画で廃屋を歩く時にやるやつだよね。
それか事件簿系で、犯人とおいかけっこしてて走るからゆっくりかくれんぼ込み(何故か必ず鍵のかかっていない廃墟か倉庫がある)になった時に懐中電灯でやるやつ。
……私は1人で何をしているんだ?
いや!
弱気になってはいけない。
私はフンイキに飲まれている!
私以外誰もいないから自分でホラー映画とか言い出しただけだけど。
いや言っては(多分)いないけど。
頭の中のツッコミとは裏腹に、私は緊張しているのかもしれない。
足の裏が緊張で引きつって痛い。
のどから上だけでハァハァいってるだけのように、息が吸えている気がしない。
何故か、鼻息をはくのは長く、肩から上はガチガチだ。
しかし、そんな状態でも(多分)足は規則正しく階段を降りていく。
踊り場まで行き着かないうちに、羽音が聞こえ始めた。
来た!
踊り場を過ぎて、二歩、三歩。
四段降りても姿は出てこない。
遭遇したくない。
でも早く楽になりたい。
惑うサチ子の心と年半分猛暑の東京の空。
ここは東京じゃないけど。
結局、階段を降りきった。
ハチさんは待ち構えていた。
というか浮いて待っていた。
いや、浮いてって言葉おかしい気するな。
その場で飛んで?
うん?もういいや。
とにかく、私の顔の高さで(多分)待っていた。
よし!
心の中でジャジャーン!と効果音をつけて、腕を伸ばしきって携帯を掲げる。
ジャジャーン、の割にはビビリ混じりのせいか、何の高揚感もなかった。
そして、1秒、2秒、3秒たっても、ハチさんの反応もなかった。
……何か、言ったほうが良かった?




