再挑戦
屋敷から帰ろうとしたら、砂漠に来てしまった。
何で?
あんまり意識しなくても、ちゃんと帰れるようになってたのに。
精神的に弱まってて失敗したのかな?
私だいたい、ご飯食べれば復活するんだけど。
白服にフラれたから?
バカ言っちゃぁいけないよ。
あんなポイポイポーイとおい帰されたのなんて、何にも傷ついちゃいないからね。
私はぼっちが好きなだけだ。
全然悲しくなんてない。
そもそもフラれたという言葉が誤解だ。
ヒドい言い換えだ。
誰も言ってないけど。
でもそーゆー空気だった!
言葉にするとそうとしか言いようがないが、勘違いで済まないその場の出来事というのはあるんだ!
「はっきりとはわからないけど多分ね」
とか、後で当事者じゃない人に言われるやつだ。
誤解ですからね、お世話になったお姉さん!
見渡す限り、ただの砂漠でダン!と足を踏み鳴らした。
人前だとこんなアクションとれないが、やってみた。
別にスッキリしなかった。
これ、やると怒りがおさまるのかな。
しかし、やったことで変化は起きた。
あれ?なんか寒い?
いや寒くなった?
ちょっと周りを見て、下を見て。
すると、真っ暗な穴の上に立っていた。
えっ!?
穴?いやバカな。
サチ子さんはおバカなこかもしれんが、そんなバカな。
え?
……落ちない?
ビビると落ちるシステム?
古いアニメとかマンガの表現みたいに、時間差でピューと落ちるの?
慣性でこれ保ってるの?
穴じゃないよね?
だったら立ってないもの。
マンホールよりは広そうな、丸い真っ黒。
開いてるマンホールの上に立ったことないが多分。大きさはそんなんだ。
大丈夫、だいじょ。
ズボッ。
「んぎゃ!」
足がハマった。
はじめカカトのあたりが抜けたみたいになって体制崩しかけたら、なお深く沈んだ。
右足はカカトが深いまま足首まで埋まり、左足はつま先のほうがややねじって埋まり動くと足が痛い。
こんな体重のかかり方、絶対こわい。
ここは沼なのか、泥なのか。
ノープランだが、このままよりは海に落ちてでも島に帰ろうかとすると、声がした。
またお前かぁ!
近く勢いがあって魔力が歪んで響く。
魔力の声だ。
何か知ってる!残念ながら。
「ワタクシ魔王!」
出た!
おかしな呼び方をするな!
今は足が痛くてアンタどころじゃないんだ、と思ったが、私は地面の上にちゃんと立っていた。
あれ?
いつの間に?
ちょうど暗い穴の真横で見落としてたら、穴からワタクシ魔王の本体が浮き上がってきた。
それ、……落ちる穴じゃなくて上がる穴なの?
私が塞いでしまったカタチ?
わざとじゃないよ?
全く、いつもいつもイツモイツモ!
私に恨みが積もってるらしい。
話を逸らそう。
「えーっと、お久しぶりです。美しい花園いかがです?」
ここ、岩場がなくてわからなかったけど、あの辺だったのか。
島にいれば、なんとなーく、ホントになんとなーく自分は島の中でも端っこにいる感覚はあるんだが、砂漠は全くわからない。
砂漠が違っても同じでも、全然、わからない。
ワタクシ魔王は答えない。
でも、私の魔力が勝手に反応したのか、積極的に教えるほどでもなくても知られてもよかったのか、すぐにひろえた。
枯 れ た 。
枯れたんだ。
どうなっても不思議じゃなかったけどね。
魔植物郡。
こころなしか、ショボンとしているワタクシ魔王。
泡沫の夢だったね。
それだけなら、ソーデスカーで済んだのだが、ツッコミたいこともあった。
ワタクシ魔王は傷心のまま、少し広くなった陣地の中を、残った水を持って移動しているらしい。
いや、さまよえる湖かよ。
沼か。
いや池?
ま、いいんだけど。
魔王ってけっこうフリーダム。
一応、追い出したと思ってるのか、土偶魔王によろしく伝えてくれ、と力無く言われる。
あ、ハイ。
お大事に、じゃなくてお元気で。
今度こそ帰ろうとしたら、どうも少しだけワタクシ魔王が手伝ってくれた。
別にここは元の岩場じゃないらしい。
そんなに遠くもないらしいけど。
でも砂漠比で言われてもね〜。
この砂漠はどうも広大みたいだから。
ま、とりあえず。
島に帰るのに、少しだけ力添えもらったので、無事に島に帰れた。
うん。
見回してみても、島だな。
新しい島だから、全然馴染みがないが。
ていうか島のどの辺なのか、全然わかんないけど。
さっきまで見てたのが砂漠だから、多分うちの島だろうな〜、という感じ。
どこにいるのかは全然わかんないけど、土偶魔王の魔力を感じるから島なのは間違いないんだろう。
近くに海もある。
それはなんとなくわかる。
そう思って気をつければ、波と風の音が聞こえるし。
それに海の魔力の気配がする。
慣れ親しんだ貝王様の魔力を含む海の感じ。
ここで奇見子さんを感じないのが私である。
いや、探ってったらわかるのかもしれないけど。
っていうか、海の中からだけでもイカさん先生の気配の方が強い感じがするんだよね。
忌海子さん、本当アンタ魔王なのに。
いや、魔王とか仰々しく呼んだったってフリーダムの権化であることを、たった今見たばっかりだもんな。
期待しちゃイケナイ。
……期待、したことあったかな?
……なんか似てんな、あの二人。
魔王の中で女性を2人しか知らないから、そう思うだけ?
いや、突っ込んじゃいけない。
私は考えないぞ。
それに言っておくけどイカさん先生、私は毅深子さんに似てないからね。




