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厄介者

 


 大騒動っていうのは何か違うか。


 なにやらみんな忙しくしている、と言うか、別に海賊に襲撃されたみたいな様子じゃなさそうなんだけど。


 え?

 どうした?


 使用人さんたちは、必ず1人はここにいるんだけれども、みんなバタバタしているので私は勝手に帰っていいかどうかもわからない。


 まあ私は部外者だからね。

「どうしました?」って聞くわけにもいかない。

 前みたいに、あんまり下の人に「帰っていいですか?」って聞くのも、結構難しいのがもうわかってるからね。


 今回のこの部屋は、明るいんだけれどもちゃんと日陰になっているという状況。

 よく考えられているなあ!とか感心してしまう。

「帰る」って緊急に言い出す用事がないからね。

 熱中症は、この部屋だと大丈夫そうだ。

 帰ります、っていうわけには、ここは行かない。



 このバタバタさえなければ、島の方をどうやって攻略していこうかな、って考える場所にはなるかもしれん。

 しかし人間、やらなきゃいけないことからはだいたい目をそらすものだ。

 この部屋にいるからって、この先の予定がちゃんと立つ、というわけではない。


 でもって外が気になる。



 ねぇねぇ、主さんの彼女でもくるの?


 それにしては大騒ぎし過ぎか。


 どっちかって言うと国王陛下の御来臨!みたいな騒ぎっぷりに見える。

 見えてはいないけど、空気感というか。

 彼女~、よりは深刻そうな。

 熱気というよりはピリッとしてそうな。

 部屋にいる人にも聞いちゃいないけど。


 ただ屋敷中これだけの騒ぎっていうことは、まず屋敷中の掃除をしてんだろう。

 この音は屋敷中の物を動かしてるんだよね?

 そんだけ全部ピカピカにしなきゃいけないっていう、そういうことだよね。


  国王を物置とかに案内しないだろうし一部の部屋しか使わないのに、そういうことってある?


 それか、この騒ぎは家探し。

 あれ?一斉捜索ってヤサガシって言うよね?

 字にしたらイエサガシ?

 違うな、言いたいことと。

 じゃ、ガサ入れ?

 ……何を?


 どっちにしても、王様が来る準備がよくわからん。


 王様とかファンタジーな存在どころか、日本に実在する天皇陛下だって2秒くらいしか実物見たことないもん。



 ていうか、この国の長って国王なの?


 何だっけ?

 一回覚えたのに。

 カコドがある国、忘れた。


 だってカコドしか来ないんだもん。

 カコドより砂漠の方が、回数多いかも。

 いや、カコドの方が多いな。

 ご飯もらいに来てるから。


  全く。

 ご飯というのは、どうしても困りものだよ。

 行動に制限がかかるからね。



 ぼっちマーケット、やっぱりやってくれなきゃ困るんだけどね。

 あれさえあれば、しばらくは恩が積み重なることは免除されると思ってたのになあー。


 困った。


 服とかだって、この先頼ることは多いだろうに。

 頼りっぱなしじゃないか。


 貝王様は……。


 貝王様は、すいません!

 ずーっとずっと、お邪魔になりまーす!



「おい!」


 騒ぎの中、バーンと白服が扉を開けた。


 こら、お前にとっての家みたいなものかもしれないが、ノックぐらいしなさい。


 こいつ、ドンドン遠慮なくなっていく。

 前はもっと、仕事モードとの差を作らないように意識してるようだったのに。



「この騒ぎだからな」


 うん。

 私ゴトキに構ってられないでしょ?

 どうぞどうぞ。


「誰もお前ごときにかまってられないから、もう帰れ。」


 え。


「え、あの……あ、」


「ん?あぁ、何か持たせる」


 チョロッとだけ振り向いて、言い捨てて、白服は去っていった。


 夜ご飯のことまでは、頭にまだなかったんだけど……。


 屋敷中が忙しく騒ぐ音を聞きながら、そっちが気になるだろうに、私を可哀想にそっと見てくる女性のお手伝いさん。

 お手伝いさん、というのか使用人さん、というのか、よくわからん。

 どっちでもいいけど、フラれた人みたいな目で見ないで。

 違うから。

 フラれる以前に惚れてないから。


「あの、帰ります。」


 自分でもビックリするような、弱っちい声が出た。

 ええ、お騒がせしてすみません、とやっぱり可哀想に見られながら、スマ子を手繰り寄せる。

 来るのはお腹がへって必死だったが、自分100%で瞬間移動は、まだ時々不安だ。


 しかし哀れなるモノなのに、さらに返事もないスマホに話しかける姿は見られたくない。



 フッ、サチ子にも人目が気になるなんて繊細さが残ってたのか……。


 (つれ)ぇ。


 こんな時には、つけ麺大盛りネギ増し海苔トッピングに瓶ビール……。

 一つも無い。


 都会の灯が恋しい。


 何かあったかなものが欲しくて、手鏡をその女性にあげた。

 自分で持ってたのもあるし、ぼっちマーケットから持ってきたのもどこかにあったハズ。

 大丈夫、困らない。


 しかしその女性は、礼を言い手鏡を受け取りながら、やはり同情するように私を見る。


 これはカコドルール?

 あなたの悲しみに変わらずに寄り添いますよ、的な暗い表情をするのが礼儀だん?

 いいのよ?

 ウソでも嬉しそうにしてくれて。


 もしや白服に貢ぎに来たと思われてる?


 カコドには鏡を渡すに何か意味でもあるのか?


 全然そこは考え至らなかった。

 ご飯だけが目的だったから。


 誰にも全然引き留められずに、お屋敷を後にした。

 別にいいんだけど。

 かまってもらいに行ったんじゃないし。

 全然そんなんじゃないし。

 ご飯貰いに行っただけだし。


 あ……。

 夜ご飯、貰ってくればよかった……。


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