反対側
部屋の中の寝室側は、変わりがなかった気がする。
さっき改めて確認したんじゃないのか、って?
そんな奥まで入って確認なんかしないさ。
すぐまた出たんだし。
私の家の、家ってゆーか205の部屋の奥には、部屋はもともとなかった。
角部屋だから。
あの壁はどう繋がってるんだろう?
お向かいさんの形からいうと、押し入れの奥辺り?
とりあえず一旦、バルコニーを覗いてみる。
ある意味外と繋がってるから。
そして意外と見えてるつもりで見えてないから。
そうするとバルコニーの先っぽに、存在しなかった扉があった。
……おかしいな。
なんかどっかと繋がってるぞ?
バルコニーはホントは途切れて駐輪場が見えていたんだけれど。
何か扉があるぞ~。
まあ、勝手に寝室とかと扉で繋がってるよりは、まだいいんだけどさ。
まだいい、どころかそれは絶対ノーセンキューだけど。
ためしにバルコニー出たが、窓枠を掴んで身を乗り出して見ている時と、大して変わらなかったのですぐに中に入った。
足元に100均のスリッパを置いてあったんだが、これがまたボロボロなのだ。
とっても足の裏の感触が悪い。
カーサフクダだけが海に浮いていた頃に、散々強光にさらされてたからね。
まあ風にもさらされたね。
時々雨も降ったね。
もうそういうわけで、ズタボロです。
絶対これ、地上にいるよりも劣化早いよ。
買ったのいつだったか、どれくらいで今まで買い替えてたか、定かじゃないけど。
スリッパの履き心地が悪すぎるので、ちゃんと1回窓を閉めてから玄関に戻って、靴を持ってすぐ戻る。
靴を履いて窓を外からしめる。
鍵はかけれないし、かけられても困る。
自分の部屋を左に見ながら奥まで行き、扉を開けた。
もうノックしなかった。
だってこれで返事あるの嫌じゃん!
もともと誰かいる、って知ってたらいいよ?
でもいないはず、なかった空間にひっそりいました、って怖くない?
背後とられてんだよ?
ベッドの下で誰か寝てたようなもんだよ?
え?
私?
ベッドじゃないよ、床だよ!
そういう事じゃないんだ!
このバルコニー行ってまた何もなくてシャットダウンだったら、どのみち向こうからまた来るの?
めんどくさ。
あれ?
私もう恐怖薄れてる?
飽きてる?
でも『何か思いもかけない冒険が待ってるのかな?ワクワク!』ってキャラじゃないから。
別にいいか。
それがサチ子です。
小学生でモノグサと言われました。
私が全然ショックを受けていないので、母がダンダン怒ってきて「このシシマル!」と叫びました。
多分悪口ですが、シシマルが何なのか誰なのか謎だったので、とりあえず同情しておきました、マル。
開けてみると、そこはまた廊下しかなかった。
204の通路と同じように、むき出しの壁と窓という通路というか、廊下だった。
どうでもいいけどお向かいの扉は部屋じゃないのに204ってまだついてた。 それは確認した。
回想終了。
なんでだよ。
私さっき、バルコニーから来たよね?
だからつまりほぼ外にいたよね?
この扉はかなり壁側にくっついてるけど。
……何故、室内?
廊下自体も別に狭くはない。
なかなか広い。
これ、幅3mぐらいあるんじゃないかな?
さっきのお向かいさん側の壁と、あんまり変わらない、……気がする。
やっぱり同じようなものか。
距離とかがあんまりわかってないんだけどな。
でもやっぱり、すぐに曲がり角になって、そこからが長く長く長〜く続いているようだった。
やはり海側と庭側に交互に窓があり、1階に向かって緩やかに坂になっているというわけではなく、2階のままにしか見えない。
とりあえず進む。
心の中でまさかな〜と思ってはいた。
まさかまさか……。
そしてやはり、行き止まりが来た。
ということはだよ?
コの字型の、平行の線が長〜く伸びている形。
四角く庭を取り囲んでいるわけでも何でもない。
何これ?
敵さんとかが来たらウェルカムじゃん。
入り放題じゃん。
どうすんの?
直進で進んでくるよ?
何なの?この形。
無駄にほんのりベルサイユでも意識してんの?
え?カーサフクダが?
いや、ファーストカーサフクダも?
何様のつもり?
田んぼで泳ぐカエルを捕まえた手で前髪イジってるようなもんだぞ。
世話になってるのに(カーサフクダに)ひどい事考えてると、高いのか低いのか、不吉な音がした。
……まだ扉を開けてないのに、すでにハチさんの羽音がする。
階段を(こっちにもあるのかどうかまだ確認してないが)飛んで登ってきたのだろうか。
……前のめり気味な大歓迎?
蜂って、そういえば肉食のヤツもいるね……。
あのデカさ、何を食べるのかな〜?
なー……。
逃げよう。
逃げるが勝ち。
先人は良い事を言った。
そのまま、ありのままのストレートな意味しか知らん。
だが、それでいい。
柄にもなく、ひいひい息きらせて走った。
走りながら、この窓もしかして開いてないだろうな!と今更になってから不安に思った。
だが止まっちゃいけない。
そもそもあんな大きさで、蜂なのかわからないけれど。
っていうかあの蜂がいたの、205の階段のすぐ下の方だったんだけど。
むしろ今、そこに走って戻ってるんだけど。




