庭
これは……うーん、うん。
えーと、あれだね。
これは……防御力、高そうだね?
うん、外敵に煩わされそうではないね?
こう、難攻不落、みたいな。
そう、全然攻め落とせなさそうな……って、
ちがぁーーーう!
中世の要塞か!
ここは山城か?!
違うっつーの!
何してんだーー!
私が自ら落下しそうという危険度においては、ノーサンキュ~なレベルだよ!
え?
何?この島、私のことがキライなの?
スマ子?
スマ子と融合したの?
断崖絶壁は嫌がらせじゃないの?
思いやり?
関係ない?
島は生き物じゃないから?
チェンジ、プリーズ?!
なんでよりによって、この形状で終了したの?!聞いてよ!私に。
唯一の島民だったでしょ!
いやいやいや、落ち着け。
人間、落ち着きが大事だよ。
サカエお婆ちゃんが言ってた。
私の婆さんじゃないけど。
何、島の感情を問うているんだ?私。
落ち着け。
アイびりーぶ。
(不幸中の)幸い、出窓なんだから、ここに乗らなきゃいいじゃないの。
大概の場合、窓の向こうに体重の重心いかないでしょ?多分。
そんなすぐに落下しないよ(希望)。
イカさん先生は、この窓(と、隣の窓)に来てくれてたんだけどな。
遠くなっちゃうな。
忌海子さんは……別にいいや。
うん、底の見えない山の上よりはマシ。
マシ、というレベルまでしか上がらないが。
あれは山というより尖った岩の上だったもんね。
あの時は1日で済んだけど。
こんな尖るくらい脆い岩質なのかとビビって、トイレいくのもビクついてたもの。
重心移動して、刺激になって欠けたらカーサフクダごと、まっ逆さまに落ちていくんじゃないかと。
そんなディ〇ニーの悪役みたいな死に方嫌だ。
絶対、無理。
現時点では、ここも微妙に似てるけど。
でもまあ、外敵に備えるのは大事よね。
船がこの海域に入れないのに、意味あんのかと思わなくもないが。
ニンゲンコワイという私のコミュニケーション機能不全と、ズボラが混じって作用してしまったのだろうか?
もしそうだったら、海側から見たら拒否っぷり、凄そうだな。
人間拒否を環境で現しました、ってか?
坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、サチ子です。
私の意思でこうなっちゃったんじゃないけどね。
まぁ、まずは確認してみよう。
大丈夫だとわかれば、安心して暮らせるからね。
いや、気をつけなきゃいけないけどね。
ウッカリちゃっかりだから。
さんざんビビっておいて、忘れた頃(多分6日後あたり)落ちそうになってワーキャーしそう。
とりあえず窓を開けてみようか。
新たなる1日の風だ。
新生、名無し島の風やいかに。
風……すごい。
ビュボボボォ、と激しい音までしてるんだけど。
あれ?と思ったらイカさん先生が、崖の下の海からちょこんと顔を出していた。
ひょひょいっと、端の足を振っている。
……イカさん先生ですら、このサイズで見れるんだ。
海の上に上がってこられるハズだけど、イカさん先生は下にいる。
お肌がカピカピになっちゃうからだろう。
わかる。
ちょっと下向いてるだけなのに、めちゃくちゃ目が乾く。
怖いな。
本当に高いな。
よく、水の上に落ちても安全、とか言うけども、あまり高いところから落ちると、水もコンクリートの硬さになるとか聞いたことがある。
これ、どう?
コンクリートになる?
私、ウッカリ落ちると水面に叩きつけられて死んじゃう系?
どうなの、これ。
とりあえずイカさん先生に、手を振り返す。
ってか、振り返すってもイカさん先生がふってるのは足だけどもね。
……もういいや。
なんだか晴れの日に、サチ子の気力はすでに下がってきているぞ。
こっちから声が届かないから、魔力会話にしてもいいかもしれないんだけど。
1回頭を下げて、窓を閉めた。
魔力会話が苦手なわけじゃないけど、なんかもう、今そこまで気を払っている余裕がない。
窓を閉めて、さて。
こっちが崖なら、向こうはどうなってんだろう?
それで全て変わっている。
ワテの島の便利度が。
とりあえず、寝室を出て反対側の、つまり隣の部屋に行く。
遮光カーテンを開けて見てみる。
窓の外は緑だ。
緑、なんだけども。
あれ?緑?
どういうこと?
緑はいいんだけどファーストカーサフクダは?
何と言うか、庭が広がっている。
もともとこの下はアスファルトだったんだ。まぁちょっと、ボコボコなってたけどね。
住人たちの通路みたいになっていて、奥には駐輪場があったのだ。
そのさらに奥にブロック壁。
お隣とはそこで敷地が分かれている。
まあこの島になったから、ファーストカーサフクダだけになったけど。
ブロック壁もないし駐輪場もなくなった。
あと昔は、なんかの木が何本か生えていた。
カーサフクダとファーストカーサフクダの間に。
今思い出したんだけど。
それもなくてファーストカーサフクダだけ、島が出来た時、現れたんだよな。
下はその時はアスファルトのままだったけど。
残ってたアスファルトもなくなっちゃってる。
ていうか、ファーストカーサフクダがない。
別にファーストカーサフクダを盾にしようと思ってたわけじゃないんだけど。
でももし島に上陸されたとしても、あれがあったからまだ安心感があったんだよね。
まあね、正直に言うとね。
「あー!誰かいる!」って1人で騒いだりしたよ?
自分が向こうの窓に写っただけ、とかさ。
実は1人でお化けなんていない歌を必死に歌ったりとかね。
光が反射しただけだったのにね。
まあビビったりしてはいた。
あれがあると窓から見る景色が良くないのもホントだけどね。
だって窓の外には、ファーストカーサフクダしか見えないから。
でもなくなると、不安なもんだね。




