後悔
「もう、一時避難したらどうだ。」
と、白服に言われた。
毎度毎日、呼び出されるのが面倒らしい。
そうよね。
仕事よね。
ごめん。
でも、住むのはヤダ。
ありがたいけど。
カーサフクダ自体は安全なのだ。
なんか、完全に一宿一飯の恩義は嫌。
せっかく貝王様が間に入ってくれて、上下関係ないのに。
下宿したら、主さんが完全に上になってしまう。
現段階で、完全に世話になりっぱなしだけど。
カコドの金銭がないので、下宿出来るかも謎だけど。
でも、なんかヤダ。
全くもって最近は、カーサフクダが海の中にいたり、地平線が果てしなく続いていたり。
はたまたある日目が覚めたら、湖の中にいたり。
遠くに湖を取り囲む山々を見る。
何だ?
ここは、琵琶湖か?洞爺湖か?
カーサフクダを頂きに急峻な崖になっていた時には驚いたよ。
底が見えない…… 。
いや、危ないです。
「気をつけてください。」
って、貝王様やイカさん先生に事前に言われたって落ちるよ。
危ないよ。
ちなみに、私からは全く見えなかったのだが、湖の中にいた時には毅深子さんが陸を掘ろうとして、何やら体当たりしたりしていたそうだ。
ずーっと地震があったんじゃなかったんだな。
知らなかった。
長~く揺れるから怖かった。
日本列島でも誕生するのかと思ったよ。
この島、ところで地震とか来るのかしら。
そうなら、避難計画が必要?
まあ忌海子さんが体当たりをやり続けるんだったら、一緒だな。
……まさか陸が嫌いだからって、津波とか起こさないよね?
驚いてたら、ホントに日々、身がもたない。
何度訊いても貝王様が『様子を見た方がいい』と仰るので、心をころして何も感じないフリをするしかない。
貝王様とイカさん先生は、『陸って面白いね~』と、楽しそうだけど。
……陸、平和な時もあったよ?
あの頃の方が良かった。
より安全に、とか考えたのを、少々悔いている。
魔王不在の土地と、魔王が結び付くって、こんなにはた迷惑な事象になるんだ。
別に土偶魔王と気視子さんの不仲によって、こんなに天変地異が起きてるわけではないらしい。
土偶魔王の意志でもない、と貝王様が。
むしろ、困惑している様子だそうだ。
もう何日も、私も会っていない。
何日経ったか、ちょっと正確ではないが、多分2週間くらい。
スマ子が、ストからの更新中(多分そんな感じ、とコレも貝王様)で日も時間もわからないので、何日かして慌てて手帳にメモした。
海では言うに及ばず、カコドでも数字が出てくる会話がないので、私も日付の感覚が薄くなる。
曜日なんてもってのほか。
日曜日ってなんだっけ?って、本気で思ったことある。
とにかくそんな、なかなかの長さの期間をカコドで食事の世話になっているので、けっこうストレス。
借りが積み重なっている。
カーサフクダの中にいる私ですらそんな状況なのだから、安全であっても魔力に触れ過ぎて、ゾウさんはスーパー子象さんになっていることだろう。
魔力持ちになっちゃった、どころじゃない。
もう戻れないね。
今まででさえ、変わったゾウさんだったのに。
『調停者』さんと一部の人間に言われている、かどうかは知らないけれども、なんかもうそれっぽくなってしまった。
新生絶海の孤島の調停者、みたいな中間管理者みたいになっちゃうのかもしれない。
土偶魔王の子、みたいな感じだもんな。
土偶魔王も、この島に来たのを後悔してきたような気がするんだけど。
うん。
会ってないから、なんとなく流れてくる風がもの悲しく感じるだけだろうか。
それとも土偶魔王の魔力がそう訴えているのだろうか。
まあ、確かにな。
私もそう考えてる。ごめん。
安全かどうかがわからないから歩き回りはしなかったけど、今までで充分にあの島で問題がなかったのに。
あー、住みづらくなっちゃったらどうしよう?
歩き回るところさえなくなったら、どうしよう。
っていうか、ぼっちマーケットがなくなるのか、どうなのかが、心配でたまらない。
それで全く私の生活が変わってしまう。
今の電気ガス水道はいつまで使えてるのかも 謎だけどね。
もう向こうの元の世界とは断ち切られてるはずなのに。
その機能を残したまま、なんとなく魔力で維持してるだけなんだろうか。
やっぱり。
突っ込んだりして、そこが使えなくなったら本当どうしてくれるの?
不安でイライラする。
就活中みたいな感じだろうか?
この私が。
胃が痛くてあんまりご飯が食べられないなんて。
多分、人より食べてるけどな。
毎日毎日、うちの島は千変万化。
そろそろいい加減にしてほしい。




