朝のパン
ほぼ朝一番で、貝王様に『気をつけてください』と言われた。
怖い。
不穏すぎる。
どいうこと?
パン焼いて食べようと思って居間に来ただけなのに。
パンを焼くってトーストする、の意味だよ。
パン捏ねて焼いたりはしないよ。
え?違う?
何でにトーストしに居間に来るのさ、って?
置いてあるのさ、座ってすぐにトーストが食べられるように。
台所からトースト移動させてたら、湯気でしけるだろ?
それもしけると言うのかは知らんが。
お茶かなんか用意すんだろ?
それからパンを焼くだろ?
座って焼き上がるのを待って、テレビ見ながら食べる、みたいなね。
いや、台所に置け?
いや、だってさ。
トーストしたらすぐさま食べなきゃいけないのよ。
バターとか、あんまりちんたらちんたら塗ってられないの。
時間との勝負なのよ。
皿に湿気が溜まってきちゃダメなの。
すぐさま食べないとトーストとしての存在意義がないからね。
もにゅ、っとなるから。
カリッとして、中がフワッとしないと。
かつて私は焼き立てパンを愛するが故に、ホームベーカリーにまで手を伸ばしてみた。
ただし、かなり安いやつ。
全っ然、美味しくなかった。
メーカーがセットで売ってるパンミックスまでわざわざ買ったのに。
ケチで貧乏の私がわざわざ買ったのに。
私的にはかなりの愛を表したつもりだった。
んで結果美味しくなかったので、やっぱり買って食べる派になった。
ホームベーカリーは餅をつく一択です。
しばらくは餅つきばっかりしてたけども、飽きてきた。
と思ったが、やっぱりね?
海になったりしてね。
ぼっちマーケットで、もち米が手に入るようになると、またモチ率が上がったね。
前にも言ったかもしれないが、私は貧乏がゆえに、例えばドライヤーと電子レンジを同時に使えない。
ブレーカーが上がっちゃうとか言う、いちいち制限があるからね。
全てを熱々できたてで食べられないのだ。
何を優先させるのか。
それが重要だ。
ちなみに餅をついている時は、布団にくるまって待っています。
トースト一枚だって、一大イベントなのよ。
ビンボー人には。
いやいや。
今はモチとかトーストどころじゃないんだ。
何?
どういうことよ?
いつも危険だとわかっている時には、イカさん先生が訪ねてきてくれるのだが、今日は全然来ない。
『気をつけてください』って言われただけ。
え?
どいうこと?
窓を開けて見ても、別に船などは見えない。
海賊が来たわけじゃなさそう。
ちなみに、海も特別荒れているという様子もない。
風はいつも通り強いんだけど。
何だか私の気持ちもざわざわしているせいなのか、うまく周囲の魔力を拾えない。
というよりも、前ほど明確に島の情報を摂取しようとしているわけではないが、土偶魔王の魔力でいっぱいだ。
もう!何なのよ。
情緒不安定か?
しかしそれも、ウロウロ行動し続けてみてわかった。
寝室は海側。
これはもうさっき船を確認するのに見たとして、反対は島の側の方。
そのカーテンを開けた。
以前はカーテン開けっぱなしにしたりしていたんだが。
いや、夏の暑い時は別ね?
あれは遮光カーテンしないと大変なことになるからね。
朝起きたら、熱中症で脱水症状を起こして動けなくなっちゃうかもしれないからね。
気候が真夏ほど暑くなくなった時に、カーテンを閉めるようになっていたんだ。
島ができてからは、多分絶対閉めてた。
台所側、つまり東側の方は、外に見えるのがファーストカーサフクダでいっぱいだったので。
だから、カーテンを閉めるようになったハズ。
誰もいないのはわかってるんだけどね。
誰かに見られてるような感じがするんだよ。
人、いないはずなのに。
見られてても怖いけどね。
まぁとにかく、そのカーテンを開けたのだが。
何故かまた、海しか見えなかった。
おかしいな?
あれ?
私は開けた方角を間違っていない。
違う違う。
転移したばかりの頃と、コレじゃ一緒だ。
アレ?こっち側?
こっち側だよね。
また?
カーサフクダだけで海に浮いてんのかい?
あれ、でもちょっと待って?
島から引き離されてないよね。
多分。
土偶魔王をの魔力を感じるんだから、大丈夫なハズ。
まだ島なハズ。
……島か?コレ。
貝王様に呼びかけて『これ大丈夫なんですか』というようなことを言ったが『改変中の様子だからちょっと様子を見よう』ということだった。
下手にちゃちゃを入れてカーサフクダだけ切り離されたら困る。
島の意味がない。
『気をつけて』は、海に落ちないようにね、ぐらいの意味だったらしい。
そういうわけで…………愚痴りたい。
出来ることが、それしかない。
貝王様に確認したら、カーサフクダの中からカコドに移転するには問題がないらしい。
私に出来るか出来ないかわかんないけど。
スマ子はどうも、更新中らしい。
何で?
あるの?そんなの。
ちゃちゃを入れない方がいいだろう、と言われた。
よくわからないし、その方がいいのかな。
貝王様が手伝ってくれるということだったので、カコドに送ってもらう。
パンはね。
パンはあるんだけどね。
肉や野菜がないんだ!
パンを持って、お屋敷にご飯をたかりに行こう。
大丈夫。
これ(食パン市販品)、食品添加物無しなはずだから。




