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悩み

 

 せめて手すりがあれば、掴まりながら降りたのに。


 状況がわからないから登ったが、今度から下から行こう。

 一部が畑になってるだけみたいだから。


 あの一部球場みたいのも謎だが、こっちもこっちで謎だ。

 何で畑?

 畑って、ちょっと良い思い出ないわ~。


 ん?


 この段々畑、もしや105と同種?


 そういえば棚田も私は段々畑って言っちゃってたけど、こーゆーのって水田のイメージだ。

 身近にないし、あまり日常で口にしない言葉だからあまり意識してなかったけど。


 でも、ここにあるのはホントに畑。

 ダンダン畑。

 なんか、わからない野菜。

 ってゆーか、青々と菜っ葉とか。

 菜か知らないけど、葉が繁ってる。



 ……。


 土偶魔王ーー!


 アンタか?

 アンタの仕業か?!



 抗争?

 抗争なの?

 魔力の補完が要るの?

 その準備?

 これ兵糧?


 やめてー!

 安全のために来てもらったのにー!



 早とちりであって欲しい。

 心から。



 しかし、私の心の声を否定するように、またやや遠く近くで爆音が鳴る。

 遠いのか近いのか。

 とりあえず、水柱は見えるし音は大きいが、水しぶきは来ないし爆風も来ない、という辺り。

 爆風ってなんだよ。


 なんか、戦争の映像とかに似てる音がする。

 戦争映画とかは見ないけど、だいたいドキュメント系は、二十世紀前半だと戦争の時代にかかるから。 

 別にドキュメント系も好きなわけじゃないけど。

 でも、完全に学校の勉強じゃなければ、学ぶ系のバラエティーは好きだ。

 そうすると明らかな戦争物は避けてても、なんとなくそういう映像が出てくる。

 なんかそんな感じの、ッドーン!みたいな音がする。


 この音の中、私は行くのか?



 いまや謎の未開の島、じゃなくデンジャラスな島だ。




 白服に手土産って必要?


 でも、なんかしょっちゅうヤツと飯食ってんな。

 なんか、仲良いみたいだな。

 ヤダな。


 でも、他に愚痴る相手がいるか?

 いないな。


 つまり私は、暇をもて余して誰かにかまって欲しいちゃんに今なってるんだな。

 認めたくない。



 せめて手土産は、やっぱり持って行こう。


 現代日本の企業努力の粋を極めた味に感涙し、私に感謝するがいい。

 私はタカリ屋ではない。

 たかり家?

 ま、いっか。

 とにかくご飯をたかりに行っているのではない。

 ちょっと(ツラ)かしてもらおうか。




 私は死地をかいくぐり、ぼっちマーケットにたどり着いた。


 正確には怖い音がする、見慣れているはずなのに妙に起伏があって歩き辛くなったいつもの順路でぼっちマーケットに、ようよう到着した。

 そして買い物(これも正確には持ってきただけ)を済ませた。


 優雅にクラシックが聞こえる向こうに微かに不穏な音。


 それでも固いけど真ッ平らな地面、じゃなくて床に、そのうち緊張が緩んだのか、来た雑木林がいつもと違うことに、ようやく思い至った。

 怖くて緊張していて、変だとは思ってたがそもそも見た目でわかりにくいからか、歩いてるうちは気付かなかった。

 足の裏が緊張しすぎて痛い。

 よくこれで歩いてたな。



 現代日本のこの無機質な、平らな足元のなんとありがたいことか。


 足首ひねりそうでもないし、見た目でわからないのに、海に向かって傾斜がかなりついてたり。

 砂の波打ち際歩いたら、波に洗われ続けて平らかかと思ってそっちに濡れる覚悟で行くと、どこの砂丘かというほど、山あり谷あり。


 何で?


 今までは、ぼへーっと歩いてると着いたのに。


 ここは寒いけど、出たくない。


 でも、ここからカーサフクダまでは、少し距離がある。

 ここからお屋敷に直接飛ぶのは、失敗するリスクがある。

 少しとはいえ、移動の距離が伸びるんだから。

 でも、また歩くのは、多分すごく疲れる。


 え~。

 ヤダな。

 外からまだ、遠い音がしてるし。

 んー、困った。

 どーしよー。

 ここでご飯にしちゃう?


 ぼっちマーケットの中は、常に出来立ての熱々の状態で置いてあったりする。

 冷たいらしい惣菜は、ちゃんと冷え切った冷たいやつなんだけど。

 不思議だね。


 私がいない時に時間が経過しているのか、非常に謎なぐらい。


 ところが1回手にとってしまうと、このマーケットの中に置いてあったとしても、時間が経過する。

 持ち帰った物ももちろん時間が経過する。

 熱々を持ち帰ってもカーサフクダに着いたらちょっと冷めていたり、とかね。

 冷たいドリンクを持って行ったって、そのうち(ぬる)くなっていったりね。


 サッカー台っていうの?

 あの荷物を袋積めする台のところに、わざとカゴに入れて置いといたことがあるんだ。

 そしたらそれは時間が経過していた。

 不思議だ。

 勝手に減ったりはしないんだけどね。

 ちなみにそれは、何日も放置してスーパー内にカビルンルンが蔓延したら困るので、一日半で撤去した。

 だって、ゴミ捨て場ないんだもん。

 何日も実験出来ない。

 食べて処分。

 ぼっちマーケットで一番減るのは食べ物だけど、その次はゴミ袋だ。

 捨てられないから二重三重にしている。



 話しを戻そう。

 今、一度焼き鳥を持ってレジを通過してしまったので、これはこのまま冷めていくだけ。

 もちろん何日も放置したら悪くなる。

 せっかくの熱々なのに冷めてしまう。


 どうしよう。

 本当は一回カーサフクダに戻ってから、皿に入れて持っていくつもりだったんだ。

 屋敷にこのまま持って行ってもいいように。

 なんて言うか、こっちの世界で目立たないようにしたい。

 一応、茶色い紙の袋に入ってるやつにしてはいるんだけど。

 このまま持っていけるし、その方が温度保ちそうだし。

 透明のパックに入ってるよりはいいと思うんだ。

 向こうから見ても不自然じゃなさそう。

 カコドの中で「これは何?」って食いつかれるようなものだと困る。

 あの屋敷の中だとスルースキルが高そうだけども。


 どうしよう?

 んー、どうしよう?



「何してるんだ?」


 突然、声をかけられて驚いた。

 白服がいた。

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