表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

200/235

怨念

 


「えっーと、ですね。」


 かくかくしかじか。 カクカクしかじか。


 もう何から話したらいいやら。


 貝王様が土偶魔王をとっとと呼び寄せたのは、多分、島の管理までしていられないから。

 私はそう思っている。 


 ところが来て早々、騒いでいたら呆れもするだろう。


 いや、別に、呆られた、とか怒ったっていう波動を感じるんじゃないんだけど。


 なんかすいませんね。

 騒いでばっかりで。






 わかりました。





 と、貝王様。

 すいません、なんか取り止めのない話で。


 これって、いちいち砂漠に戻して食事させた方がいいんでしょうか?


 もう食べさせない方がいいんです?

 海の中だとそうやって、魔力持ちに変化しちゃったってことあるんでしょうか?


 聞いてみる。

 そんなに、たくさんある事例なのかはわからないけれど。



 こういうのも、体質によるものだそうだ。


 魔力持ちも体質によるものがあるしね。

 体質、けっこう大きいな。


 そうやって(つまり魔力のあるものを食べて非魔力持ちが)魔力持ちに変化できる場合もあるんだそう。

 そーゆー体質、みたいな?

 オッケーな個体もいれば、ダメな個体もいる。


 お魚さんの中には、自分たちの子供たちを魔力持ちに育てようとして、せっせと魔力があるらしい餌を食べさせようとする、ということもあったんだそうだ。

 でも体に合わなくて、死んじゃったりするからやっぱり推奨していない、と。

 というか基本、止める


 魔力持ちじゃないと、魔力あるかないか判定できないから、あんまり怪しげなのを食べさせるのはいけない、というのもその中に含まれている。


 ゾウさんに合わないのか、どうなのかすら、わかんないんですけども。

 でも、あの土偶魔王が現地調査にビンビンに魔力を発している時にも、全然平気だったしね。

 体質的には、(多分)ゾウさんは大丈夫だと思う。


 でも、環境が変わったばっかりだからな。

 どうなんだろう。


 まあそれは、様子を見てみるしかないそうだ。

 どうしてもダメなら、別に薬というわけではないけれど、魔力を排除するという魔力の昆布があるんだって。

 今は時期じゃないらしいけど。

 しかもこの海域で生えてないらしいけど。

 すごいな、コワイ系ファンタジー。





 お客様、これから向かいますか?

 彼がもう行ったようです。





 彼が、と他人行儀な呼び方にも聞こえるが、イカさん先生である。

 当たり前のように誰なのかを省略して、彼。

 シャーロック・ホームズがアイリーン・アドラーを『あの女』とだけしか呼ばないのと同じようなもんだろうか?

 ただ一人、呼ぶ名称というやつだ。


 いやいや。

 私はね、別にそのね、腐ってはいないんですよ。

 そっちじゃないんです。

 そっちじゃないけど、でもオタクなんだけど、でもまぁそこまで言うんだったら!

 いやいや、でもね。 うん。

 勝手に別にそっちに決めてるわけじゃないけどね。

 BがLは専門外なんだけども。でも!





 大丈夫ですか。





 ……ええ。すいませんね、脱線して。


 癒しと潤いと喜びが欲しいんです。

 疲れると新しい扉開いちゃうね。


 心なしか、貝王様のきき方も事務的だ。

 いや『正気に帰りやがれコンチクショー』という意味か。

 なんか京都人みたいだな。




 貝王様が土偶魔王のところまで送ってくれた。

 ほどほどに近く、ありがたい。

 でも、まだ行くと断言はしてなかった。

 返事してなかった。


 そのつもりだったから、いいんだけど。


 うん。

 私、お世話になってる人たちに失礼してる?

 人じゃないけど。

 いやー、つい。

 頭の中で考えちゃうことは、どうにもならないからね。

 


 嫌われたらどうしよう?


 困ったもんだね。


 毅深子(きみこ)さんと生きていくの?

 それはな、デンジャラスすぎて無理だわ。


 とりあえずゾウさんのことは、ちゃんとしようと思う。

 なんとなく、まだ幼そうな気がするから。

 なんて巨大なちびさんだ。

 可愛いけど。


 土偶魔王のところにいて数年経ってるみたいだけど、それってゾウとしてどのぐらいの年齢なんだろう。



「大変です!妄想している場合じゃありません。」


 スマ子に突然、そう言われる。


 妄想って、確かに妄想かもしれないけど、妄想っていうほど妄想っぽくもないだろう。

 私は何を言ってるんだ?


 いや、そうじゃなくて。

 なんか騒がしいな。


 何やら土偶魔王の魔力も感じる。

 どうした?


 さっきは平和に見えていた、外の晴れた明るい光景。ゾウも踊り狂っていなかった。


 だから安心して、そちらに歩いて行こうとしたんだが。


 何やら激しい音がする。

 どうした、一体?


 その時まで私は平和だった。





 ちょっと落ち着いて!海の方!





 土偶魔王が必死に叫んでいる。

 魔王が叫ぶってなんぞね、と思った。


 何やらウネウネと乱れた、黒い帯のような物がゾウさんに巻き付いている。



 …………。


 ぎょええぇえ!

 危海子(きみこ)さぁぁーん!?



 何やら海の中に引きずり込もうとしているが如く取り付いてるだけではなく、汚黒髪でゾウさんをひっぱたいているようだ。


 なんというか、相手がゾウさんなだけに鞭打ってるように見える。


 音もそんな感じだ。


 ちょっと怖い。


 本気で怖い。


 何やってんの、奇視子(きみこ)さん。


 本体の方は、血走った、しかし赤くはない青白い目だけが見えているから、なお怖い。


 何と言うか、汚黒髪の隙間から見えてるから一層怖い。

 いつもよりずっと、妖怪っぽい怨念がこもってそうで。


 女が本物の鬼女に変化するCG映像の大会で優勝できそう。






 ちょっと!見てないでとめてよ!





 土偶魔王に叱られる。

 そりゃそうだ。


鬼見子(きみこ)さんハウス!」



 ピシィ、ピシィ!

 ぎゃあぎゃあ。


「……すみません、無理でした!」






 それで済まさないでよ!





 また怒られた。


 今日も長そうだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ