海です、その2。
この物語はフィクションです。
何なのさ。
怒りの余り「畜ッ生!」と古いトレンディドラマのように携帯ぶん投げそうだったので寝室を出た。(トレンディドラマとか年がバレるかな。いや今の若い人はそもそも意味がわからな、い……の、か。え?)
投げてもマットレスの上だけどね。
まぁコントロール出来る自信もないから。
全っ然、情報収集の役に立たないけど、壊れても困るからね。
携帯、真っ黒でウンとも寸とも言わないから。
ホント腹立つ。
寝室といっても正確にはそう利用している部屋だ。
いや、それが寝室だろ?って?
他が引っ越しの段ボールでいっぱいで、布団とかマットレスとか敷けないだけなんだよ。
今は、出てすぐの部屋の大きな吐き出し窓の側に座り込んでる。
部屋の中は段ボールなら何やらめちゃくちゃ散らかってるとして。
窓の外。
ガラスの向こうには、いかにも古い賃貸アパートらしいコンクリのベランダと空。
それしか見えない。
そこはいつも通り。
さっきは窓に近寄ったら外に青々と海が見えた。
大事なことなのでもう一度言います。
「お外が青い青い海でした~キレイ。」
へたりこみました。
現実逃避に手近の本棚から一冊取り出したら『猿でもわかる昇級魔法』とか摩訶不思議なタイトルが見えて、二度見したら、知らない文字っぽいものになっていた。
全書籍が。
全書籍が謎文字になっていた。
やだ~!魔法とかあるの?
やったーー!
とか思えたら良かったが、もう気力がもう続かなかった。
そもそもなんだよ、昇級魔法って。
普通『超初心者向け 1日でマスターできる初級魔法講座』だろ。
そんな本買ったことないけど。
『猿でもわかる』って確かにそう言われると飛び付くけど、猿は本買いに来ないだろ?
ってかあのサイズ、あの色、妖怪の本じゃなかった?
自分で買った本だけど、謎文字&知らない挿し絵に変化されてわからんさぁ。
最近の趣味の大人の塗り絵すら、やはり知らない文字と全然違う絵になってた。
だからナニコレ。
本ってバージョンアップ出来るの?
頼んでないけど。
しかも可愛くないけど。
コレ、この世界の可愛いなの?
絶望です。
極めつけは姉だ。
2人で住むことになってこのアパートに越して来たのだか、目覚めたら私1人。
私の本が、ただの読めない珍書に成り果てたのを確認している途中、書き置きを見つけた。
『引っ越しやめてやっぱ前のアパートで1人で暮らすわぁ~』
そんなキャラじゃないだろ!!
ってかあのアパートはオーナー変わって取り壊すから出たんだろ!どうやって住むんだよ!
ってゆーかそんなキャラじゃないだろ!!
むしろ冗談でも書けない方だろ!
しかし悲しいかな。
携帯でのやり取りばかりになったとはいえ、姉の字くらいはわかる。
絶対、姉が書かなそうだが姉の字だ。
もうお手上げです。
万歳。
ドッキリなら終了してください。
そして、立ち上がる気力0の私に、燦々と晴れの日が降り注ぐ。