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つまみ食い

 

 フーッ。

 色々準備したら、時間かかったぞ。


 ちょうどお昼時だから、迷惑かな?

 ま、小道具も準備したし。



 今日は急ぎでもないので、スマ子と話したりして準備した。


 スマホを利用するのに、いちいちモラハラみたいなやり取りするのもなかなか嫌な気分なんだ。

 私のメンタルが大丈夫な時に機嫌をとっておきたい。


 スマ子には、特に手で触れている時、そうやって考えてるのも、感情もよまれるんだけどね。

 それはわかってはいるんだけど。

 一応、イヤだけど諦めてはいるんだけど。


 その感情を無視されるから揉める。


 でも、私がスマ子の立場だったら、イヤなものはイヤだ。

「お前はもう用済みだ!」とかポイ捨てされたら絶対許さない。


 元気な時は話し合おう。




 両手がふさがってるので、スマ子によろしく~と頼む。

 あと、屋敷に着く前に言っておくが、白服から魔力抜き取るのやめてね?

 これだけは、駄目。


「私じゃないですよ。あのヤローです。」


 その敵視の時点でめちゃくちゃグレーだよ。

 心境的には真っ黒に見えるよ、スマ子。



 無事、屋敷の移動部屋についた。

 部屋ってゆーか倉庫だけど。

 移動のための、玄関みたいな部屋?


 両手で持ってきたのはクッキーだ。

 正確には、クッキーをのせたお盆だ。

 もっと言うと、クッキーを広げたお盆を乗せた、ダンボールを私が両手で持っている。


 クッキーはもちろん、私が作ったんじゃない。


 さっき食べたクッキーの残りを、ちまちま個包装を開けてお盆に並べたのだ。

 ちなみにチョコチップクッキーである。

 ココア味にナッツぎっしりも好きだけど、チョコチップもやっぱり好きだ。

 チョコチップもココアのやつね。

 つまり絶対美味しい。


 私は真にチョコ好きであるがゆえに、異世界転移とか異世界転生でチョチョイのチョイ、ってチョコを作るやつアンチだ。

 現実に出会いそうにないけど。


 チョコがチョコになるまでの歴史は3日4日じゃねぇんだよ!

 私はチョコ職人じゃないけどな!

 チョコの歴史専門家でもないけどな!


 でもな、平成の日本でミキサーずっっっと回しても、ザリッザリのゴリゴリにしかならないカカオが、あんなにも滑らかな美味になるまでの苦難の歴史を、そんなダイジェストですらない省略の仕方しないでよ!


 人気作でもロリコンとハーレムと逆ハーレムは読まないから、ちゃんと書かれているのもあるのかもしれないけど。

 ついでに「チョコはホワイトチョコなら好き」って言う人、心の中で『ダウト』って思ってる。

 言わないけど。

 余計なお世話だろうけど。


 え?

 転生して無双するのはマヨネーズ?

 マヨなんてそう簡単に出来ないよ。

 魔力があったって出来ないもん。

 試したよ、このあいだ。

 出来心で。

 卵わったとき思いついて。

 塩とリンゴ酢とオリーブオイル入れてハンドミキサーでバーッと。

 シャバシャバだった。

 レシピ検索もしなかったけど。

 ってゆーか魔力の使いどころなかったから、意味なかった。


 そーいえば、精力的に活動している土偶魔王が島の魔王になったら、家電や水道使えなくなったりして。


 あれ?

 それはノー魔王でよかったな。

 何故使えるのかがそもそも謎だから。

 使えなくなるのは困る。

 少しの刺激でも、何が起きるかわからないのに。


 もう。あの人恋しがる魔王も困りもんだな。



「ってゆーか、いい加減これ下ろしませんか?」


 リュックのポケットからスマ子が言う。


 ……そうだね。


 何故私は、この薄暗い部屋で段ボール持ったまま突っ立ってるんだ?



 段ボールに乗っけてきたのは、テーブルがないからだ。

 適当に樽の上でいいかな、とも思ったんだけど、椅子が出現した日、ゴソッと樽が減っていた。

 あんなに増減あるなら、もしかして失くなっててもおかしくないかと。


 薄暗いのに床に置いたら、持ってきた私本人が踏みそう。

 それはアカン。


 慎重に下ろそうと思ったんだ。

 傾けたら一気に床にいっちゃうし。

 でも考え事したら、止まってしまった。

 一度に2つの事は出来ないサチ子。


 フーッ。

 一安心。


 食べ物をたかりに来てると思われたくないからね。

 肉食べたくて街に来たのはバレたけどね。

 自分で喋ったんだっけ?

 まぁいい。


 あんまり待つなら食べよう。

 待たないなら差し出そう。

 この美味しさを讃えてくれ。

 私が作ったんじゃないけど。


 あー、でも。

『なんと!こんなに美味しい物があの島に?』とか奪われてもイヤだな。

 そういえば、だからいつも何も持ってこなかったんだっけ?


 焼き菓子だからギリギリオッケー、って思いついたからだったね、そういえば。

 さっき。

 多分一時間くらい前に。


 ……これはしくじった。

 仕方ない。

 時間をかけて準備したが、こいつは私の腹におさまる運命だったんだ。


 段ボールの横にしゃがんでいた私は、あまり崩れず並んだクッキーを一枚とった。

 屋敷は少しだけざわついていて、白服も、そうすぐには来ないだろう。


 いただきます。


 私は腹がへってるんじゃない。

 安全のためだ。



 ガチャリ。

 ドアが開き、光が差し込んでくる。


 私はクッキーを加えたまま、そちらを向く。


 部屋は薄暗いという程度だったが、それでも逆光になって、開けた人物は少々見えづらい。

 でも、服の輪郭は白い。

 ってゆうより、見えづらくても白服の顔だ。


 ってゆーか魔力持ちだ。

 白服の魔力だ。

 つまり絶対白服だ。


 なんだって今日に限って早いの?

 最近よくお待ちしてましたけど?

 私は口にクッキーくわえたまま、どうすればいいの?

 まだ一噛みすらしてなかったのに。

 口の中の水分を吸収されながら猛烈に咀嚼すればいいの?


 あげようと持ってきたものを口に入れた気まづさもあって、フリーズしてしまった。


「……邪魔か?」


 珍しく気遣われたが、逆にツラい。

 お前さん、優しさの有りどころが謎なんだよ。

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