下調べ
わざわざマップが出てくるし、もしかしたら土偶魔王の所有に書き換えられてんのかしら?
そんな契約みたいなもの、するの?
島自体は、ただ存在するだけの物質だよ?
人間の国境とか県境じゃないけと、地表の線引きじゃないの?
マナだって魔王が誰であろうと関係なく溜まっていくんだし。
魔王がいなくなった土地には、消費しすぎてたまりづらくはなるけれども。
考えてみれば不思議だよね、それも。
回数制?
で、これ何がどうなってんの?
魔力回線、切った方がいいの?
自分では経験したことがないことでわからない。
目には見えていないのに、どんどん頭の中に思い浮かんできたり、自分に迫ってきたり。
ぐわんぐわん、くる。
わけわかんなくなって魔力珊瑚を探しに行った。
行ったというか、場所はわかってるんだけど。
いつもは触らなくても会話できている。
しかし今は、何と言うか魔力に対しての感覚が鋭敏になってしまっている。
というか、おかしい。
自分の魔力すら、グラグラして感じ分けが出来ない。
集中も出来ないので、魔力珊瑚に触って貝王様と会話する。
土偶魔王来たから、今度からそっちに聞こう、とか昨日考えたっけ?
聞けるか!
勝手に土偶魔王を犯人にしてしまう。
ちょっと気持ち悪くなってきた。
貝王様、助けてください。
ちょっとどころじゃなく、気持ち悪い。
どうにかしてほしい、とまではいかないが、魔力の送受信オフを教えてください。
おはようございます。
お客様、大丈夫ですか?
私はよっぽどの態度だったのか、まずそう聞かれた。
これって「はい、大丈夫じゃないです!」って返事したら元気じゃん?ってなるし「いいえ、大丈夫です」って言っちゃったら、解決しないよね。
なんて言ったらいいの?
「気持ち悪いです。」
本音が口から出てしまった。
助けてもらおうと思って、助けを求めたんだけれども。
いや、私は何がしたいんだ?
助けて欲しい。
それだけです。
う、なんか吐き気がしてきた。
少しお待ちください。
魔力珊瑚から、貝王様の魔力が消えてしまった。
あぁー、どっか行っちゃったぁー。
テンションが下がるのと同時に、体も下向きになってくる。
今日、心の浮くこと何もなかったけど。
それでも下がるんだな。
ぐだぐだに床に跪きかけ、魔力珊瑚を道連れにしないよう、手を離す。
安心してとうとう床に膝をつけたら、自分が思うより体が動かせていなくて、勢いがよかったのか体重がかかったのか、ゴンッと音がした。
痛い。
膝に体重かけて打つ、って大丈夫なのか?
しかし痛みが引くと、また気持ち悪さがぶり返してきた。
う、無理。
体の力を抜いたら、ちゃんと重心を移動できてなかったのか、膝がまた痛くなった。
楽な体勢でもなければ、動けもしない。
なんだ、この痛みと気持ち悪さのいたちごっこ。
前より無理が利かなくなった、とはおばちゃん思ってたけど、こっちの世界きて魔力持ってから、急に倒れそうなことが増えたよ。
ってか、ぶっちゃけ小中学生の頃なら、倒れるのに憧れすらしたよ。
でもね、苦しいわ!
ドラマとかで、フラ~と倒れて目覚めたらシャキシャキ話してたりすぐ起き上がったり、ホントにアレある?
あんな軽症(?)で倒れてすぐ復活して、なら嫌がらないが、こんなのは生活に支障をきたすよ!
気持ち悪いわりに、心は荒ぶっている。
二日酔いのひどい時みたい。
目を開いているのさえ刺激になって辛くなってきた。
ところが、魔力の波?というか、主に島の生物情報を載せた魔力は、未だ押し寄せてくる。
これは目を閉じても、どうにもならない。
昔、漢方相談のカウンセリングを無料でしてもらった時、勧められたのをイヤイヤ買ったな。
もうホント、弁当用のお魚しょう油より少なそうな量の、5本で4000円もするやつ。
高かったよ。
冷え性改善の漢方だったけど、高くてもったいないから飲まずに置いてて、二日酔いの時に苦しくて藁にもすがる思いで飲んだんだ。
そしたら、もうね、スーッて。
変な表現だけど、血の気の引くようにスーッて、吐き気が引いた。
血の流れを整えるんじゃなかったのか?とか思ったが、めちゃくちゃ楽にはなった。
肝心の冷え性は、全部飲んでも全然治らなかったから、その後継続して買ったりはしなかったけど。
あーゆー、奇跡のような楽になりかたしたいー。
その時、パキン、とまるで音がしたように、何かが隔てられた。
音は多分していないが。
でも、そのくらいにくっきりと、変化した。
空気が?
なんだろう?
でも確実に、私の体調が。
ザッと水が重力通り落ちてくように。
気持ち悪さが瞬間的にどこかに下がっていった。
あまりに一気に元気になったので、具合が悪かったのは寝ぼけたかと思うほど。
私本人が勘違いだったんじゃないかと困惑するほど、問題が消えた。
あのパキンの時、何かを感じたな。
その後が静かに劇的で、流れてしまった。
ん~、あ、その前に。
何か貝王様の魔力をどっかで感じた気がする。
意識を向ける余裕がなかったが。
何も魔力で迫ってこない清々しい環境で、さっきよりずっと楽に、魔力珊瑚に触れた。
お客様。
とりあえず壁を一枚足しました。
体は大丈夫ですか?
「はい。ありがとうございます。楽になりました。」
やっぱり貝王様だった。
さっき無視した形になって、申し訳ないな。
ドグウ魔王がこの土地を調査していた魔力です。
お客様に魔力を向けたわけではないので、壁を通ってしまって酔わせたようですね。
「そうなんですね。」
あのサボテン、いつか一部でいいから燃やしたいです。




