移動
決行日は、何とびっくり!
明日だそうです。
早くね?
『善は急げ』です。
と、どうもテレビを見て覚えたらしいセリフを、貝王様が言った。
何か、焦っている?
どうなんだ、これは?と思ったが、私の代わりに(?)イカさん先生が貝王様をいじる。
今は魔力珊瑚だけど。
安心したんでしょう~。
陸のことわかんないもんね~。
わざわざ、さっきまで本体のままの窓辺で話していたのに、ちっちゃい姿になって、部屋の中に入ってきた。
魔力珊瑚をつついている。
仲良しさん。
鬼深子さんは、私のターンと言わんばかりに窓近くに繰り出したが、余裕がないのか貝王様に即効で非表示にされた。
……存在するのに、目にうつらない、恐ろしきモノ……。
慣れたつもりでも、いまだに恐怖の館みたいだな。
まだ、このぐらいじゃあ魔力の限界が来ないはず、と思い、自分の調子を確認する。
まだ行けそうだ。
よし。
「土偶魔王のところに、明日引っ越しますって言ってきますか?」
と、貝王様に聞く。
貝王様は、魔力珊瑚のせいか(介してるだけなんだけど)無抵抗でイカの先生につつかれていた。
一方的に見えるが、この2人は、これはこれでわちゃわちゃ楽しそうなのだ。
やっぱり和んでいたのか、貝王様は速攻で、
いえ、踏ん切りがつかないでしょうから、明日もう直接に決行しましょう。
と言われた。
わりかし、強引。
そして、あっという間に性格が知られてるんだなと思う。
私が『めんどくせー』って思ってるせいかな?
そのせいでそういう印象になっちゃったんだろうか?
哀れ。
土偶魔王。
「え?いいんですか?」
そーゆーのは『時間をかけてもどうにもなりません』だそうです。
はい。
そうですね。
サチ子も決断出来ない人間のまま、生きてきました。
あれ~?
いいのかな~?そう思いながら、本日はもう終わり。やることが突然なくなってしまったので、ぼっちマーケットに行っておやつとか持ってきて、ゆっくりとご飯を食べた。
テレビを見ながら。
最近うっかり、テレビを見ながらだと慣れてしまって、魔力珊瑚に気がついたら貝王様が来ていたり。
あ、やばい。
一緒に見ていた!
みたいな、一人で焦ったり。
時々スマ子が、充電中に喋り出したりして、テレビを見ながら独り言を言う癖がついたりしてしまいました。
そんなバカな。
ある意味一人暮らしだからって。
そんなバカな。
私あんまり、人生で独り言を言うとかってなかったから、びっくりした。
一人で笑ってたりすることはよくあるんだけどね。
仕方がないんです。
オタクですから。
妄想はお友達です。
親友です。
分身です。
私の人生です。
妄想で生きてきました。
だから現実の物事を考えるのが苦手なのか?
でも、ものを知らないと、現代設定だけでなく異世界設定だろうが、行き詰まるんだよね。
知識は人(の妄想)を救うわ~。
現実では(知識と呼べそうなもの)持ってないけど。
何かを始めても、1日しかもたないけど。
宝くじ30億当たりたーい、とか思いながら、一回くらいしか買ったことないけど。
真の貧乏人には、宝くじはたかが紙切れなのに高い。
当たれば大事だが、三枚買っただけで、メシ代が飛んでいく。
あれ?
今テレビ見ながら、なんか別のこと考えてたんだけど、なんだったっけ?
まいっか。
明日、ごねられないといいな~。
翌日。
相変わらず、よく晴れました。
朝、9時。
昨日、貝王様と9時と約束していた。
寝室の窓が、何度も忌視子さんをはじいたせいか、彼女も居間にくるようになった。
イカさん先生は、一回テレビ見てから、ほぼ居間の窓にあらわれるようになった。
「おはようございます。
いい天気ですね。」
海では、実はいい天気、って挨拶しないんだって。
私、多分前にも、貝王様とイカさん先生に言ってたな。
合わせてくれてたのか。
へぇ~。
知らないこと、いっぱい。
天気って、海の中にも、なんとなく影響してると思ってた。
してても、海の中の常態が大事だから、関係あっても天気が重要とされないそうだ。
面白い。
「じゃあ、行ってきます。」
昨日、一応話し合ってあった。
土偶魔王を呼ぶのは、なんとなくこの辺、みたいな。
とりあえず移動して『はい、行きましょう』って移動しようとしたら、貝王様がこっちに準備しといて 引っ張るから、という話だ。
土偶魔王が拒否したら、どうにもなんないみたいだけども。
とりあえず、一緒に飛ぼうとしてくれればいいから、ということだったので。
はいはい。
やってみますよ。
そして、その後にワタクシ魔王。
どうするのと思ったら、土偶魔王の方が、先に移転して島の場所を覚えてもらってから、また戻ってワタクシ魔王を土偶魔王の居場所に移転する、ということになった。
順序としては。
うまくいくといいな。
私ではイレギュラーに何も対処出来ない。
昨日やらかしたばっかりだし。
そもそもこれでうまくいったら、大ラッキー。
貝王様曰く『コツは迷わないこと』
迷子の話か、私のほうが踏ん切りつかない話か。
土偶魔王のところへ行く。
うまくいかなかったら、岩場の上に。
出来ればあの隣の横穴に、と思ってたが、うまくいった。
あれ?
早いね。
ゾウさんはお散歩らしい。
土偶魔王がすぐ相手してくれたが、
「はい、行きましょう。」
と、押しきった。
それ以外の方法がわからない。
多分、土偶魔王も準備してたのか、魔力をもらさないように溜め込んでいる様子だ。
大丈夫。
そのつもりでしょ?
え?今?!
絶壁の魔王を物理的に触れないので、連れていく、一緒のイメージを必死にして、島に帰ろうとする。
抵抗しないで。
私、何度も出来そうにない。
少しは慣れたつもりだったが、この魔力の感覚は初めてのことで、想像以上にうまくいかない。
自分では連れていくイメージだが、体の魔力は体から重くて下に落ちていくような、全く動かないような。
少しして、唐突に軽くなった。
そして、同時に薄暗い視界が切り替わった。




