似てる
どの辺がかぶってんだか、いまいちわかんないけど。
と、ぼんやり思う。
イカさん先生の土偶魔王は、あんまり上手じゃない小学生が作った粘土細工みたいだ。
図工の時間に先生に「そろそろちゃんとやりなさい!」と叱られてから慌てて作った、ぐんにゃりと 曲がっている形の何の動物なのかもわからないやつ、みたいな。
そうそう。
土台がね。
しっかりしてないと、うまく立たないんだよね。
粘土とかって。
自分の不器用さを思い出して、妙に納得する私。
ダンシング土偶?と思ったイメージが元々だから、曲がってるのはなんとなく納得するんだけれども。
どうしよう。
ただでさえあんな性格なのに。
ビジュアルですら、こんなことになって。
なんか……哀れ。
ワタクシ魔王に至っては、全然ビジュアルも似ていない。
似ていないのに、なんか目を背けなきゃいけないような。
既視感というか。
なんか、こう……ね。
わかる。
こっちも、魔力を感じ取らなくたって、なんとなくわかっちゃうね。
こっちがワタクシ魔王だって。
不思議だねえ。
土偶魔王のほうが、サボテン(多分)なんだから植物のはずなんだけどね。
ていうかワタクシ魔王は、結局あれ、何なの?
石なの?
化石なの?
それとも、なんかこうアロエみたいな植物なの?
アロエヨーグルトの中のアロエより柔らかかったけど。
指、めっちゃブスッと入ったけど。
結局あいつは一体何なんだ?
あいつとか言っちゃったよ。
ま、本人いないから、いいか。
次に会った時にバレるかな。
会わない方がいいな。
面倒くさそうだな。
ただでさえ、なんていうか、やばい人を本気で怒らせてストーカー化させたりしそうな感じがする。
どうなるんだろう?
あの魔王は、水に埋まんないの?
やろうと思ったら水の魔力だったら何とでもなるとは思うんだけど。
でも魔王も、色々特殊だけど生き物だから。
イカさん先生は、ワタクシ魔王には直接関わることがないせいか、面白がっているようだ。
土偶魔王は引っ越してきたら、いくらでも話が出来るもんね。
花をそんなに求めるっていう感情が、そもそもよくわからないんだって。
『りくならではだよね』っていう。
へぇ、そうなんだ。
海の中の海藻っていうのは、季節ごとに生え変わるような感じだから。
あくまで季節ものとして楽しむ感じなんだって。
常態化したいっていうのが、あんまりわからないそうだ。
でも考えてみたら、この海域だったら、それこそ光が集まる珊瑚もあるしね。
それをだいたい、寄せ集めようとしてるしね。
貝王様は。
寄せ集めて、って言い方が悪いか。
でもあそこは、ちょっとイルミネーション花園のようになっているし。
はっきり見たことないけど。
その方が生存しやすいってことなんでしょう。
まあ、そんなのを見慣れてたら、そう思うのか。
変なこと願うのね?って。
水って面白いよね、とイカさん先生は続ける。
水というのは、水の性質の魔力を持っているものという意味である。
つまり私とか忌深子さんとか土偶魔王とかワタクシ魔王だ。
…………え!
ちょっと待って!
この四人のグループ分けなの?
え!?
ちょっと、やめて!
キャラかぶってるって私らの話?
似てないよ!
似てないからね!
やめてよ。
やばい系ばっかりじゃん!
なんかこう……いやいやいや。
覗いちゃいけない闇が、深そうなんだけど。
完全に無関係のつもりでいた、キャラかぶりの話にダメージを受ける私。
妙に焦っていると、イカさん先生は『どうしたの?』とゆったりした態度だ。
イカさん先生はだいたい大らかなんだけど。
いや、あのですね。
「水ってゆーだけで、似てないかなぁ?と。」
一応、言ってみるが。
『そぉ?』とイカさん先生、頭を傾げる。
そして、いつものポーズ。
端の足をお顔にあてて『似てると思うなぁ』の駄目押し。
マジか。
私、粘着力があるのか。
知らなかったよ~。
純白のイカさん先生の向こうの、空の青さが目に染みる。
黒くヒョイヒョイ見えてるけど。
あれだって、黒く見えるけど、ただの汚黒ではなかったのだ。
私に見えていた世界はなんだったのか。
ショックだったが、それ以上『水だからといって似てない』とかは、もう何も言わなかった。
イカちゃん先生の中では、水の魔力持ちの方が珍しいのだ。
海に生まれる魔力持ちというのは、当然水の魔力が多い。
だからわざわざ『水』と呼ばれるのは、水は水でも海水ではなくて、真水に関する性質を持つ生き物のことを言うのだ。
魔力持ちが、生き物の数に対して少ないとはいえ、魔力持ち同士がそれぞれの存在を感じ合うので、魔力の質の違いというのはわかる。
海の火は当然、一番少ないみたいだけど。
魔力持ちの位置を把握した場合、一番アレ?っと引っ掛かるのが『水』。
火はなんか、わかりづらい、だそう。
イカさん先生と貝王様のような、水の魔力というのはつまり海水。
その水の魔力と、風の性質の魔力を持っている生き物というのは結構多いらしい。
イカさん先生曰く、イカ族の魔力持ちは、だいたい水と風なんだそうだ。
えっへん、としていた。
『飛ぶのに便利だからね』と、付け加える。
イカって、そんなにぴょんぴょん飛ぶ?
トビウオ?
私には微妙な点もあったが、好意的に話は進んだ。




