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怒りの日

 

 揺れる白い模様に、土偶魔王やスマ子が思い浮かび、重なっては移り変わっていく。

 誰かを彷彿とさせますね、の誰かが多い現象。

 私の周り、変なのばっかり。



 面倒な人ってのは面倒なまま、やいのやいの言われるのが嫌になって、爆迷走するのだ。


 私がそうです。


 一方的にものを言われると、言語どころか理の違う生き物の鳴き声に聞こえてくる時がある。


 そんで、しるか、ってそこを飛び出す。


 この『ワタクシ』魔王も、そのタイプだと思う。


 なんか思い通りにならない上に、我慢ばっかりでストレスがたまったようだ。

 私もアナタ、ストレスです。

 気が合うですね。



 ブルブル揺れ続け、周囲の土が音もなく落ちていく。

 土を手で払った時よりもクリアになり、どんどん透明度が上がっていく。

 想像以上に、濁らず透明なようだ。

 もう少しくらいは、白っぽいのかと思っていた。


 悠長に観察していられたのは、そこまでだった。


 どんどん土が落ちていくな。

 ブルブル震えるから、下が掘れてるみたいだな、とか考えていたが。


 この魔王の体、震えながら、浮き上がってきていた。


 え?

 ラピュタ?

 小さいけど。


 ドリル?


 気づけばズンズン上にそそりたってくる。


 一度、地面より上に出ると、一気に浮いた。

 だから、静止してからわかった。


 デカくなっている。


 30センチくらいかな?

 が、

 1メートルくらいかな?

 に変わっていた。


 それに円柱でもなかった。

 それは勝手な予想だったから、驚きはしないんだけど。


 ジュエル型?

 というのか?

 そっちに近い。


 宝石をカットした、指輪についてそうな形。に、似てる。


 デカい、半透明よりは透明よりの宝石、みたいなのが、真ん前に浮いている。

 もうバイブは止まっていた。


 いきなり急浮上するから驚いた。

 ぶつかるじゃないか。


 地上に出ると大きくなるの?


 さっき、土を払ってた時の感触だと、石かな?と思ってた。

 表面はかたそうで。

 爪たててカツカツ音がしそうな感じ。

 やらなかったけど。

 顔だったら困るし。

 ……奇海子(きみこ)さんって、顔がどこかわかりやすい、という点では、他の魔王よりまだマシさがあったんだな。



 自分の体感より掘ってた時間が長いのか、この魔王と会話してた時間がかなり前に感じる。


 そのせいか、本人いや、本魔王に断りもなく、体に触った。

 側面?というのか、すぼまったところ。

 目の前だから。


 待っても何も向こうからは発してこないし。


 しかし。


 ブニャ。


「ぎゃ!」


 人差し指が、中に入った。





 ギャーー!





「ごめんなさい。」


 だって、こんなやわやわ寒天製みたいな柔らかさだと思わなかったんだ。





 おのれ!





 魔王の怒り、ビンビン。


 ああ、これはまずい。


 敬意を払われてないと思い威嚇しようとしたのか、体を大きくしたものの、特にやったことがなかったので、固さが間に合わなかったようだ。


 さすがにごめんなさい。

 でも、ゼリーみたいのが指について、私も気持ち悪い。


「すみません、大丈夫ですか?」


 人間って、倒れてる人にも「大丈夫ですか」って聞いちゃうの、何でだろう?

 明らかに大丈夫じゃないのに。


 魔王の怒りが魔力で伝わってくる。

 怒髪天というより、フツフツと止めどなく沸いてくる、怒り。


 日本語で言うなら今一番強い感情は『責任者読んでこい!』だろう。

 こんな小者相手にしても仕方ない、と考えているようだ。

 これは土偶魔王の読みが当たってたな。

 格下下下下下過ぎて、まともに相手にしない。


 私の行動とか態度に怒っているのに、私に怒りをぶつけはしない。

 魔力をまともにぶつけたら、無事では済まないからだろう。

 しかし魔力以外では、とうすることも出来ないらしい。


 魔王って大変なんだな。

 結果として、罪を憎んで人を憎まず、になってる。

 好きでやってるんじゃないだろうが。

 でも、人間に甘くない?

 私がいうのもナンだけど。


 全ての生き物が魔王にとっては格下だから、たまたまその中に人間が入ってるだけか。


 私が会って知ってる限りの魔王は、動物の姿がいないせいか、動きに不自由してそうだ。

 まさか魔王を食べる動物もいないだろうから、問題ないのかもしれないけど。

 ……一番行動に注意しなくちゃいけない危深子(きみこ)さんが、易々(やすやす)と動けるのは、どんな天の采配か。


 怒ってるよ~。

 そりゃそうか。


 刺されたんだもんな。

 そのつもりはなかったんだけど。



 さっき一度土偶魔王に渡した、貝王様の小貝から、土偶魔王の魔力を感じた。

 ついそちらを意識したら『どーしたの~』という気安さで応答がある。





 すいません~、助けてください~。

 怒らせました、ってゆうか私がやらかしました~。





 了解~。

 これ、そこに置いて戻っといで~。






 言われた通りにする。

 恐る恐る小貝を前に置き、迷って「すみませんでした」と言い置き、土偶魔王のところに逃げ帰る。


 戻った場所は、魔王のすぐ横の崖の中腹の横穴で、前より広くなっていた。


 土偶魔王にすみません、と魔力で伝えると、『いいよー』という感じの返事がきたが、向こうの魔王と対話中の様子。

 邪魔になるから黙っとこう。


 しばらくは申し訳なく、静かにしていたが、そのうちソワソワしだした。

 気になるが、この場所も気になる。


 以前は座って少し余裕があるくらいだったが、今は住めそう。

 私には無理だけど。


 でも、山の中の『この岩屋に鬼が住んでいた』と伝承される岩と岩の隙間とか、平家や戦国武将とかの落人伝説の洞窟よりは、住みやすそうだ。

 岩肌の地面は、わりとしっかり平らだった。

明日は更新ないです。多分。


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