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計画

 


 痛~、……いや、痛くないな。


 あれ?でもなんか。


「降りろ!」


 怒気を含んだ声で命令されて、降りようにも暗くてわからない。


 見えなくてこわいので結局、スマ子を探した。

 照らそうとして。


 時間がかかりすぎたのか、舌打ちが聞こえ、明るくなった。



 白服だった。

 白服の部屋か、ここは。

 暗いとそれだけでわからない。


「今度は何だ。」


 そんな深い深い深~い、ため息、つきなさるな。

 疲れてんのか?まだ若いのに。


「砂漠越えはとにかく休息が鉄則だ。」


 あ、ハイ。

 スミマセン。

 お疲れ様です!



 今なんか、『慰謝料とりたい』とか言わなかった?

 気のせい?

 気のせいだよね?

 カコドに慰謝料とかあるの?


 いやいやいや、わざとじゃないよ?

 アンタを潰そうとしたんじゃなく、あなたに話しがあっただけでしてね?

 今まではお宅様を目指して移動しても、潰さなかったんですが。おかしいですねー?


 また、深いため息つかれた。

 ため息って、諦めのイメージがあったんだけど、これは明らかに怒っている。

 怒鳴りつけそうなのを、息を吐いてこらえている。

 これはそもそも、ため息とは言わないのか?

 はぁーっ。だけでも怖いです。

 サチ子、か弱いので。


「で?」


「で?」


「で?じゃないだろ。」


「は?」


「で、何の用だ?!

 さんざん行けと言っておきながら、砂漠を歩かせよりによって一番暑い時間帯にほぼ門前払いを食らわせておいて!しかもその後、休むことすら許さんのだから大した用なんだろうな!?」


 あ、あ~。あー、えーっと。


「その件につきましては……。」


 えー、えー。


「ご苦労様でございました!」


 あ、間違った!

 お疲れ様です、って言おうとしたんだ。

 失敗した。


「おつ」


「どっちでもいい!」


 いい、って言いながら、怒ってるじゃん。

 途中でとめるから、乙になっちゃったよ。

 こっちのほうがイヤじゃない?


 廊下のほうで、少しだけ聞こえていた物音が大きくなる。

 え?

 何?


 すると、ノックも何もなく、扉が開く。

 少しだけ驚く様子で、主さんがドアノブを握っている。


 え?

 主さんが開けちゃうの?

 護衛のコネンさんじゃないんだ。

 でもこの屋敷で、白服の部屋にノックも無しというのは主さんくらいだろう。


 この人の、こんなラフな姿は初めて見る。


 いつもと着ている物とは、そんなに見た目の違いはなさそうなんだけど。

 ゆったりとした、シンプルな服でも、なんか違うのだ。

 普段はスキがない。

 スキって、隙ね。

 服のカットとか縫製とかで、高級感があるのか、どうなのか。

 とにかく客が私であっても、いつもは気を抜かない服装なんだろう。

 今と違って。



「……では、夜這いということで。

 後で報告しろ。」



 主さん、めんどくさいだけでしょ、それ。


 何だよ、夜這いの報告って。

『そんなのじゃないだろうけど、めんどくさいし、報告は後でいい』な、だけでしょ。


 まさかの、言うことまでリラックスモード。



 そもそも夜這い呼ばわりされる覚えはないぞ!

 と、サチ子、心の主張。


 白服のベッドの上だけど。

 しかも、いつの間に正座してるここ、平らじゃないけど。

 位置的に白服の足を踏んづけてるかも、だけど。



 でもさ、寝てる時間だと思わないじゃん!

 わかんないよ、そんなの。

 砂漠の民じゃないもん。


 こんなの、いつ何時(いつ)のときも家ではお風呂にしか存在しないシズカちゃんみたいなモンじゃん!

 逆に『罠だ!』って叫んでやりたいよ。

 ……言わないけど。


 何故なら、気にしたり覗いたりしていた人たちも結局、扉を閉めて、静か。


 残されたのは、ビビる私と、激おこの白服。

 どさくさ紛れに帰ればよかったー!

 無理か。



 しどろもどろに説明する私。

 考えてみれば、今日わざわざ土偶魔王のところに行ってたから、話しておこうと思ったけど、言わなくてよかったんじゃない?

 怒ってるもん。

 放置すればよかった。


「そうか。」


 頑張って話しても、それだけ。

 来なきゃよかった。

 もう知らん。


「んじゃ、おやすみなさい。」


「え!もう帰るんですか?」


 何故か部外者のスマ子が声をあげる。


「外に出たいです!」


 そりゃ、今日、リュックのポケットから出してないからな。


「でも、誰にも相手にされないと思う。」


 スマ子や、チヤホヤしてほしいだけだろ?


「今日はもう(しま)いだぞ。そろそろ通いも帰ってるだろう。」


 と、白服。

 だそうだよ、スマ子。


 ってか、この間のサボタージュ事件から、スマ子はほぼ相手にされない。

 なんか鬼門扱いかも。


「私の時代が……。」


 いつかくるよ。

 どうにもならなくなったら、お前さんに活躍の場を。


「このままでは御主人(マスター)に人身御供にされてしまう!」


 わかってんじゃん。

 土偶魔王といい、こいつといい、自力で動けないやつほどうるさいな。


「……もう寝ていいな、帰れ。」


 はーい、帰りまーす。




 帰って寝た。

 思ったより、すっかりぐっすり寝た。

 そして、翌日。


 へーい、魔王。


 ご飯食べてゆっくりと休んでから、昼前に土偶魔王のところへ。

 っていっても土偶魔王の大岩の外に。






 おーい。





 と、お呼びすると。






 おーい。






 と、返ってくる。

 やまびこ?






 水、どーなってる〜?






 い〜から、おいで〜。






 ホントかよ。

 ちゃんと水、引いてよ?


 そう考えてたらシュン、と移動する。

 魔王がやってくれた。

 岩の中の、ちゃんと水を引いた場所。



 昨日の私側から見た話を、土偶魔王へ伝える。

 最後に白服に怒られたことまで。





 魔王ってカンジ〜。

 凄いね〜。





 アンタも魔王だろ。

 貝王様ほど博識な魔王も少ないと思うけど。


 ま、ところで。

 お局様に困ってるんで、いーんですね?

 ファイルアンサー?

 問いかける。



 うーん、と。


 と、魔王。



 考え中。

 考え中。


 長いな。


 早くして。


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