相談
部屋に帰ってきたら、貝王様の魔力の気配があった。
あれっ?と思って、魔力珊瑚のところに行くと、淡く光っていた。
「今帰ってきました。」
と、とりあえず声であいさつする。
すると『おかえりなさい』と貝王様。
なんか家で留守番しててもらったみたいだ。
いや〇コムか?
〇コムだ。最強だ。
『帰りました』なんて、ほぼほぼ言ったことない。
せいぜいが仕事中の帰社の話だ。
家なら、ただいま、一択。
なんか照れる。
魔王キミコがやらかしたそうで。
あー、一気に現実。
貝王様さえ、やらかした、とか言っちゃうこの状況。
さすが気味子さん。
「あの、せっかく陸を作ってもらったのに申し訳なく。」
あたしがやったんじゃないけど。
だらだら探検しないでいた、天罰なのか?
貝王様は、陸の生き物は海で生きられないから気にしなくていい、と言ってくれた。
これから、なんとかあの島を繋げる方法を考える、と。
ありがとうございます!
頼りっぱなしではあるものの、イカさん先生とかにひょい、と川を移動させてもらうという方法もあるし。
私がやっぱりイカさん先生にスタンバってもらって、瞬間移動試してもいいし。
……瞬間移動って、超能力ごっこやってるみたいで、言葉だけでも照れるね。
ちょっと前まで、スマ子にやってもらってたから、なんか最近になって意識しだした。
景色がヒュンと変わるのに慣れるのは、不思議。
ソワソワする。
そのうち慣れきって、なんとも思わなくなるのかもしれないけど。
白服も出来るようになったみたいだし、こんな気分かな?
楽しいよね。
ん?
……あいつ、解放期感はそのせいか?
やつは街で、魔力は静かに働くほうがよかろう。
うん。
主さんたち、あの一派に、迷惑をかけているのは私の方なんだが、あいつから魔力持ち狩り関連など飛び火してくるのも困る。
お客様。
あ、ズレタ。
すいません。
あ、そして、主さんが最近、貝王様に重なるのか何故か気付いた。
両方とも私をお客様、と呼んでいる。
主さんは前からそうだったっけ?
覚えてないな。
なんか最初は、通りすがりで済まそうとしてるな、という印象だけだった。
ハッ!今はそれどこじゃない。
貝王様の前で、また脱線してる。
私のためなのに。
「すいません。」
魔力珊瑚に光が淡く波打つ。
あの、人間に似ていますか?
もはや頭の中が垂れ流しなのが、当然として会話が進む。
そうよね、すいません。
垂れ流し、と、もともとそう言われてたもんね。
しかも、私が一生懸命に操作して頭の中を閉じている状態でも、貝王様には大体わかるそうだ。
魔力を探る癖がついているから、と言っていた。
例えば私の体調が悪くないか、よどみがないか、と確認に見ようとしただけでも、勝手に私の頭の中の映像などが、飛び込んでくるんだそうだ。
すいません。
むしろ貝王様やイカさん先生に聞くと『うっすら似てるかな~』くらいの印象を持っただけで、特に細かく思い浮かべなくていなくても、実際私から流れてくる内容は違うらしい。
キャッチする側には、もっと雑多な付属する関連情報が入り込んできて、何がどうこの現状からその情報に派生して行き着いたのか、わからないんだそうだ。
すいません。
私のとんちんかんな脳ミソが。
前にそれでイカさん先生は、スライディング土下座を気にいったんだな。
ホント、いつ頭の中でスライディングしてたんだろう。
気持ちの上では土下座クラスでも、頭を自然に下げちゃうものだよね。
土下座って社会人はそんなにしてるのかな?
実際、仕事のミスで尻拭いしてもらう時って、頭を下げるだけで土下座したことない。
でも頭が上がらない、って、ホントにそうなるんだな、とわかる。
ありがたいし、申し訳ない。
って今はそうじゃないってば。
「前はそうは思わなかったんですが。」
なんとなく話がズレたので、今日の話をする。
せっかく砂漠を越えてきたのに、ゾウさんが嫌がって男衆はゾロゾロ帰った話。
水の満ち引きの話。
お局様の魔王について愚痴られたこと。
話しながら、砂漠の中でも越えた、って言うのかな?とか。
街の出入りはどのくらいの手続きが要るのかな?とか。
つらつら余計なことを考える。
私は頭の中を空っぽに出来ないくせに、大事なことを考えることも出来ないのは、思考が一ヶ所にとどまれないからだろうか。
頭の中どころか物理的に「ここでじっと待ってて」も苦手だな。
これが落ち着きがない、というやつか。
落ち着きがないやつは、思考も落ち着きがないのか。
しかし貝王様は、私が頭の中でズレても『そう言うんですか』とか色々質問してくれる。
気を使ってくれてるのと、本人の知的好奇心が旺盛なこととかがあるんだろう。
ありがとうございます。
私としては、緊張して話しづらい、ということがないので、ありがたいことには変わりがない。
話しているうちに貝王様は『ちょっと思いつきました』と言い出した。
何がです?
まだどうなるかはわかりませんが、そちらの……お話になっていたドグウ魔王に聞いてみてください。
必要とあれば私も話をいたします。
はい。
何々?
海と陸の魔王とで対談するの?
なかなか大がかりじゃないか?
そうして、仮に、ではあるが、話された内容の規模のデカさにまた驚いた。
貝王様はすごいな。
一応、貝王様にことわって、白服にも報告に行く。
土偶魔王のとこ行けと言ったのは、私だから。
白服のところに、いや、部屋決められたんだっけ?
曖昧なまま移動したら、暗い。
それはあってるんだろうから、いいんだけど。
何やら浮遊感、からの落下。
ドン、と音がして落ちた。
少しだけ。
すみません。昨日投稿してなかったです。




