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聖地

 

 よくわからない、行列で盛りに盛らないとやばいんだ、みたいな話をコネンさんから聞いていたら、そのうち人の壁がザッと割れた。


 主さんと白服が現れる。


 あ、どうも。


「こんにちは。」


 特に話もないから、とりあえず挨拶して時間稼ぎする。


「こんにちは。おはようございます。

  お客様も、こちらへはよく?」


 と、主さんはにこやかに言ってくれる。


「よく来るというほどじゃないんですが。」

 と、私はとりあえず答える。


 いや、結構しょっちゅう来てるな、最近は。

 だからそれは白服のせいであって、よく来る人間だと思われても困る。

 この先、そんなに来る気がないから。


 コネンさんは、私が「おはよう」って言った時にはえ?って顔をしていたのに、主さんが「こんにちは」も「おはよう」も言ったせいか、そこには全く反応しなかった。

 なんでやねん。


 主さんも、今わざわざ「おはよう」と「こんにちは」並べて言ったのは、私がさっき「おはよう」と言ったのを、もしかして聞いていたんだろうか?


 どうやって聞こえていたんだろう?

 聞いてたのかは知らんが。

 それとも、わざわざそんな事も、つぶさに報告されるのかな?

 

 白服が、近くにいれば私の場所に気付くだろう。

 わざわざ会話まで、遠目じゃあるまいに、チェックしていたんだろうか?

 そういう遠耳?みたいなのが、出来るの?

 やろうと思えば、あるんだろうけど。

 魔力で集中するだけだから。


 私はやろうと思わないけどな。

 なんとなく頭の中に映像が先に浮かんでしまう。

 私がただ単に、視力に頼りすぎなのかもしれない。

 だいたいの魔力持ちは、いろんな生き物がいるんだろうけれど、魔力で思い浮かべるっていうのは魔力持ちに共通しているのかも。視力のない動物は少なそう。

 植物でも魔力持ちは、いることはいるらしいが。


 何か、ただね?

 人間の口が動いたら、ドラマとか見た、今の会話が唇読めるとわかるのかな?とか、思っちゃうんだ。

 自分で勝手に色々作りそうな気がするんだ、そうすると。

 自分の魔力で、無意識に自分で思い込んだ映像を。

 音と映像がはじめから一緒ならいいけど、何も聞こえない時。

 音だけ後から追加、より、頭の中でそうとは気付かないで映像の音を作っちゃうほうが早そうだから。


  ただでさえ、魔力で見て思い込んじゃうと、真実なのか何なのかが、わかんないのに。

 誰かの視点から見てる映像とかなら、その人が関心があること、物に焦点が当てられて、客観的ではないと思うんだ。

 二時間ミステリーで、途中で人が殺されるシーンで絶対に犯人の顔が出てこない、みたいな。

 誰かの都合のいい、じゃないけど、正確な事実でもないと思う。


 白服がそばにいる時だったら、いつも「はいはい、なるほど。魔力会話じゃないけど、白服の視点だとこう見えてんの」とか、すぐに共有できるとかわかってるんだったらいいんだけども。


 屋敷の中で起こったこととかが、一体どういう視点で、誰の視点で見えてるのかわからない。

  かなり。


 だって、天井から見えてる防犯カメラの映像みたいに見える時もあるし。

 ちなみに、どこの部屋かわかんなかったけど、お屋敷の隅に防犯カメラみたいなのを見かけたことはない。


 他にも誰の視点なんだ?みたいな感じで、結構近くに見える時もある。

 本当に、毎回どれが、あれが、一体何の視点で見えてんのかがわかんないので、何も判断のしようがないんだ。


 それなのに、さらに音もプラス、とか無理。



 そんなどうすればいいのかわからない事より、自分の魔力が自分で無意識にそう思ってることに反応して、音と映像作りそうでしょう?

 そっちのほうが楽そうだもん。

 魔力なくたって、思い込みで過去の思い出とか変化しそうだもん。


 だから、わかんないんだよね。


 白服はもしかして、遠耳とか出来るのかな?

 私もいつも、映像だけ出てるんじゃなく、ちゃんと音声入りの時もある。

 でも自分で音のオフとかオンが出来ない。


 うーん。

 人の中で暮らしてるほうが、習得早いのかな?

 でも、イカさん先生とか貝王様の安心感も捨てがたい。

 魔力持ちです、って自分からわざわざ言わないけどね。

 お屋敷の人には、徒然にバレた、みたいな、そんな感覚だ。私の中では。



 主さんが魔王とか、あんまりはっきり言うのは差し障りがあるのか、この場所のことを聖地と呼んでいる。


 何やら、素晴らしいのだ、という理由付けみたいなのをしているような感じだ。

 昨日今日知ったのに、なんか由緒ある場所であると、無理やり宣伝してそうな感じだ。


 これ、私が騒いだから私に報告してくれてるのかな?


 営業っていうか、宣伝の第一歩みたいな感じ?

 よくわかんないんだけど。


 聖地にしたかったんじゃないんだけどね。


 ちなみに私の聖地は、かつては〇ッグサイトでした。

 抽選になったから、行かなくなったんだけどさ。

 巡礼する聖地というものもありまして、それはその時々の愛によります。



 ふーん、へー、ほーっ、と。

 ちゃんと聞いてるつもりだったが、興味がないことがわかったのか、わりとすぐ終わりになった。


 宣伝方法についての確認?

 私にはわかんないです。

 お任せいたします。



 そうこうしている間に、白服が近寄ってきた。

 なんだ?何怒ってんの?


 よくわかんないけど、ここで立ち話してて暑かったからさ、ここではやめない?

 わざわざ怒られるのに、屋敷に行かないけどね。

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