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訪問

 

 頭の中に浮かんできたことを魔王に説明してもらう。


 もの知らずの魔力持ちが近くにいると、先輩魔力持ちはだいたい解説役になる。


 先輩と言うにはものすごい差があるけどね。


 白服なんか、何も教えないからね。

 教えるどころか。

 あいつ魔力使って生きてこなかったせいなのか(多分。聞いてはいない)なんか最近になって、いきなり開放期もどきみたいに、屋敷の中で火使いまくってたもんな。

 別に探ろうとしなくても、屋敷の中でぼーっとしたり特に何も考えないで歩いてると、頭の中に浮かんでくる。


 はじめは屋敷の人みんな魔力持ちだって知ってんのかな?と思った。

 でも、その白服が火を出した時、近くの男の人が驚いていた。

 火に驚いたのか、魔力持ちが身近にいたことに驚いたのか。

 本当、何してんだよ。


 主さんも、次手と呼ぶくらいだから、もう開き直ってんのかな?






 ……あの子、危ないの?






「どうですかね?」


 今のところ危険はないと思う。


 特に心配というほどじゃないんだけど、何してんだあいつ~と思い浮かべてたせいか、魔王に気づかれて言われてしまった。


 人間の中じゃ、とにかく魔力持ちは目立つんじゃないか、みたいな話だったし。

 どうなんだろう?


 主さんが、わざわざ次手と呼んでるのに魔力持ちを差し出すとは思わないんだけど。

 ってゆーか、多分わざと次手と呼び始めたのか?くらいには考えてもいるけど。


 ただ、あの人の人柄については私は何も保証しかねる。

 わからん。

 損得なく動けもするが、何のメリットもなく動きはしないと思う。

 それじゃデメリットしかない。

 無理矢理にでも、何かしらのプラスにもっていくんだろう。


 もし、頭の中がみえても、あの人の考えがちゃんとわかる気もしない。

 あの笑顔と頭の中が一致しなくても、笑顔のほうに騙されそう。

 あれ?こんなに笑える、ってことは、リスクは考えてはいるけど小さいんじゃない?この人は困らないんじゃない?とか、自分をもっていってしまいそう。


 不利?

 なにそれ、美味しいの?


 とか言わないだろうけど、人にはピンチでもあの人には躍動のチャンスなんじゃなかろうか?

 逆境も絶体絶命も覆い隠すスキルの高さである。


 まぁ、もともと商売について、私はあんま知らないからわかるとは思えないけどね。

 考え方なんて。


「ただ、大事にされてるみたいですよ?」


 それは本当だと思うので、言っておく。

 本人もカコドから動きたくなさそうだしね。



 水が少し引いて現れた岩場。

 どっかの古民家の庭の飛び石よりは、やや歩きづらい、みたいなの。

 それを、よいしょよいしょと進みながら話している。


 滑って落ちるの怖い。


 やっぱり水の底で、花が口開いてるように見える。

 花が開いてるだけなんだけど。

 どうなってんだ?あれ。


 せっせと進む。

 本当にちゃんとした庭石みたいに、平らになっているわけじゃないからね。

 滑りそう。


 ただこれ以上、現状できちんと報告できることなんかないからね。

 会話のほうは考えようもない。


 私、魔王のスパイみたいになってんの?

 いや、知らんけど。


 まあとりあえず、中途半端に変なもの見せられたから。

 いや、私が勝手に見ちゃっただけなんだけども。


 なんかもう、わだかまりみたいなのあったら、なくしてほしい。

 私が気まずい。

 私がどっかで喋っちゃいそう。

 喋っちゃったんだけど。



 岩壁の方まで着いた。


 よく見たら植物の合間に、岩がくり抜かれたり、ボコッと出ていたりと階段みたいなのができている。


 あら、よかった。


 きちんとした階段、というほど歩きやすそうじゃない。

 多分この、ボコッとしたところに手をかけながら進むんだろう。

 試しにやってみたら、なかなか力が要った。

 この辺がうるうるしているせいかもしれない。

 要は湿気で滑るんだ。


 ちょっと?私、ボルダリングとか無理よ?


 しかもこれ、落ちても下は水だから魔王は助けてくれるかもしれないけど、途中で岩壁にぶつかったり、あのボコッとしたところに、落ちた時に頭を打ったら終わりである。


 結構、危ねえな。

 これなんとかならん?


 そう思うけど、私はすでに登り始めてしまったので、今動かされるのも怖い。





 どうしよう?なんかするー?





 と、魔王が言うが、どうするって言うんだ?

 どうしたらいいんだ?


 混乱しながら進んでいく。

 何かやってる途中に、物を考えることってできない。

 同時進行ができない人間なんです。


 結局、疲れ果てて休憩したりしながら、魔王の高さまで登っていった。





 お疲れ~。





 本当、疲れたよ。

 めっちゃ疲れたよ。

 疲れただけなんだけど。


 魔王は自分の近くあたりに、椅子みたいに岩をくり抜いてくれていた。


 これならさすがに、落ちそうにないので安心である。

 あー、よかった。

 座ってようやく休む。

 ちょっと中腹まで来ると、底と違って風が吹いてくる。


 あー!気持ちいい。


 湿度が高い場所なので、乾いた風が気持ちいい。

 暑いのも困るんだけど。

 いい感じに、チラチラと周りの植物が木漏れ日をもたらす。


 これは気持ちいいが、疲れるんだよな。

 体重か?

 体重が悪いのか?



 息が整ってきて、リュックからペットボトルを出して飲む。


 ようやく、落ち着いた。


 そしたら、ものすごく、腹がへった。


 魔王は静かにじっと待ってたんだけど。


「すいません、お腹へったから帰ります。」





 えぇーー!?






 魔王は必死に引き留めようとするが、飢えは時間でどうもならない。


 ごめんなさーい。

 私はゴローさんのような忍耐力はないの。


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