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もだもだ

 

 よし、こっち向いたな。


 いい加減、今度こそは喋るだろう。

 これ以上、(こじ)れさせるなよ。


 私はこれ以上は聞かない。

 身内じゃないし。

 あと、重い。


 見た夢はただの夢なんだけど。


 白服個人は、頭の中みえても、特になんとも思わない。

 見える、というほどでもないし。

 なんか『嫌だ』とか『怒る』とか、忌深子(きみこ)さんよりは少しマシ、レベルの単純な感情しか流れてこないせいか。


 はじめは心の中に、がっちり鍵をかけてるのかな?と思ったが、主さんに対する態度とかを見てると、こいつはそんな複雑なやつじゃない。

 そう判断した。


 つまりみえても、たいした影響はない。

 主さんの頭の中が見えたら、私の頭が壊れるかもだけど。


 多分過去のことは、自分でも気づかないくらいガチガチに奥底に沈めてるんだろう。

 頑張れ。


「私はさっき授業に入れてもらえたので、また参加してきますね。字も読めないですし。」


 常識ない、と言われた腹いせじゃないぞ。

 これは当てこすりじゃないぞ。

 聞いてるか?白服。


 私(外野)はいなくなるから、ちゃんと話すんだぞ?

 んで土偶魔王に顔見せて。

 一回行かなくなると、もっと行きにくいわ。



「わかりました。お時間をいただきありがとうございます。」


 主さんがにっこり言う。


「失礼します」と一礼して、立った。


 ……この隙間、ホント狭いな。

 歩きづらくない?


 ……太いのが私だけなの?



 学校に戻ろうとしたら、案内の人もおらず一人だったせいか、迷った。


 そんな、まさか。

 さっき行ったばっかりなのに。

 迷わないように外に、外っていうか庭に出たのに。


 門番ならぬ入り口の見張りみたいな人が、めっちゃこっち見てる。

 ウロウロしてるからね。


 違います、怪しいものではありません。

 いや、怪しいか。

 給食スタイルの時、いた?

 覚えてないな。

 でもジリジリ暑くなるばかりなので、諦めて聞いた。

 聞いたら、驚いた顔をされた。


「先生のところはこの先ですよ?」


 その、先が!どっちかわからねーんでぃ!

 学校とは言わないらしい。


 わかってないことが(ようやく)わかったのか、指差して教えてくれた。

 どうも。


 授業が終わっちゃうじゃないか。

 屋敷を徘徊してた不審者になっちゃうじゃないか。

 自分が学生の間は、授業なんて焦って戻りたいものでもなかったが、アリバイがなくて怪しまれるのも嫌だ。



 たどり着いて、扉の前で影に入ると、息を整える。

 カコドは暑い。

 魔王の方に行こうかな?

 うーん。

 でも授業出る、と言ってしまった。


 リュックをあさり、ペットボトルを見つけて一口飲む。

 よし、行くか。

 少なくとも座れる。


 コンコン、とノックすると「どうぞ」と聞こえたので押して開けて入る。

 ゆっくり押したせいか、扉はあまり音がでなくてよかった。


 先生と目が合うと、授業しながらうなずいてくれたので、勝手に一番後ろの席に座る。

 生徒は聞いてるだけの授業のようだ。

 とりあえず、わからなくても聞いておこう。

 無料だし。


 昔話みたいな話だったが、何故か途中に計算とかが入っていた。

 算数の文章問題にしては話の長さがすごい。

 ついつい奇妙な気持ちで、大真面目に聞いてしまった。


 この授業か終わったら、ご飯タイムになった。

 子どもたちは一斉にご飯。

 親たちはご飯の時間は前は二部制だったらしく、今日は誰々の親はいる、今日はウチはいない、という感じだったらしい。

 へぇー。


 私も一緒に行く。

 今日はもうおやつも貰ったし、ご飯が貰いたいわけじゃない。

 だが、土偶魔王のとこに午後は行こうと思うので、一応、断ってからにしようと思ったのだ。



 ……また、給食スタイルかな?



 場所は前に給食スタイルやったところだ。

 嫌な予感。

 もともと昼食室なのかもしれないけど。


 すると、入り口付近に主さんとコネンさんがいた。

 子どもたちはともかく、大人たちはちょっと恐縮しているようだ。

 子どもたちも一応、少し静かになったけどね。


『何してるんだろう?』という感情が顔に出てたのか、主さんもコネンさんも、ちょっとだけ困ってるような笑い方だ。

 何だ?

 もめ事?

 さっきの、商人もどきがヤバい話かな?



「すみません、お客様、少しよろしいですか?」


「はい。」


 みんなが入ってくる大部屋を出て、少し歩き、別の部屋へ入る。

 途中で廊下で立っていた若い女性に主さんが合図をして、それを見た女性が一礼して去っていった。

 部屋についたとたんに、その女性がほとんど後ろについていたくらいの早さでお茶を持ってきた。

 すごい。

 早い。

 用意周到だ。

 これは重い話かも。


 覚悟出来ないが、ビビりながら座る。


「先ほどの次手の話ですが……。」


 はい。

 別に私に報告してくださらなくても、ようござんすよ。

 白服が次手だからなのか、さっきの続きだからなのか、いつもは扉の前が多いコネンさんも、椅子に座って加わっている。

 手でお茶をさし、笑顔でどうぞ、とすすめてくる。

 ありがとうございます。

 少しのつもりが、お茶を一気飲みしてしまった。

 自分でびっくり。

 喉乾いてたんだな。


「あの後、何も話しませんでした。」


 話さねーのかよ!

 飲み込んだ後でよかった。

 吹き出す自信しかない。

 なんだ、あいつ!


 人が暑い中迷子にまでなってたのに、モダモダしやがって。


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