休憩
魔法は生えても頭脳は伸びない。
便利だけど、管理出来ないものが異世界でプラスしたサチ子。
現在「こいつ大人なのに俺より字へたー!」と、紹介されております。
このクソガキー!と言いたい。言えない。
おまいら、それ親に怒られないのか?
怒らんのか?
ニコニコの親御さんたちよ。
え?
何?
……先生の時も、まさかと思ったが。
もしやもしや、私が子供たちのために、わざと下手っぴな文字を書いていると?
そう考えてらっしゃる?
『まぁ!あんなこと言わせるために自分を犠牲にして』とか?
してませんけど。
なあに?
その微笑み。
こっち見ないで。
ホント違うから。
言わないけど。
言っても悲しい。
言わなくても心苦しい。
言いようがなくて黙っていたら、何やら「次手は……」とか白服の話を周りでしている。
私に聞かせてんのか、話しかけてんのか、よくわからない話し方だ。
どーゆー話してんだよくわからん。
「人気があるんですね」
と曖昧なことを言った。
なんか、白服を褒めてるような感じに聞こえたから。
そしたら笑顔でうなずかれた。
「そうですね。
こう言ってはなんですが、お客様の他にも…」
とか言われた。
どういうこと?
何やらに話してくれる内容によると、女性が来る、みたいな言い方だ。
え?
ちょっと待って?
ちょっと待っておくれやす!
私、何?白服を目当てに来てると思われてるの?!
いや、あいつに話しに来てはいる。
それは確かにそうなんだけど!
そうだけど違う気がするんだけど?!
ちょっと待って、待って。
だいたいこの屋敷に出入りし始めの頃は、白服に用がなかったんだけど。
土偶魔王のせいで!
私は何?何者って、あいつの追っかけだと思われてんの?
モテるの?あいつ。
あんな、花一匁の時に名前呼んでもらえなさそうなやつが?マジで?
そういえば、顔はいいと言えばいいのか。
そうか。
次手と呼ばれたら、それなりに狙われるのか。
そもそもあんな若いのに、次代ってどういうことよ?いや主さんも若いか。
「御主人様もそうだが、こちらでは上の方がご結婚したがらない。」
先生まで言い始めた。
子供たちは、おやつを食べ終わったようで、おしゃべりは厭きたのか室内でバタバタ暴れている。
なんか、先生が『子供たちの自尊心をくすぐってスゴイ』的なヨイショをしてたのは、白服目当てにきてうざがられて学校に放置された女が、点数稼ぎに子供に媚売ってると思ってのことかな?
どっちでも嫌だなー!
「なぁなぁ、さっきの見せて!」
子供たちが遊ぶのにも飽きて、こっちきた。
やだよ。
見ろ、下手くそー!って晒すんだろ?
やだよ。
「そうですね。良いノートをお持ちでしたね。
よろしければ見せていただけませんか?」
先生が笑顔で言ったが。
「嫌です。」
なんで出さなきゃいけないんだ。
この手帳はもともと日記の代わりにつけてもいたが、もちろん働いてる間は、仕事の予定なども書いていた。
その仕事の内容についても。
だって誰にも見せる気がないんだもの。何でも書いてある。
そうしてくると人の名前なんかも書いてあるから、さらすわけにはいかない。
パスワードとか、メモったのとかもあるしね。
まあこっちの人に、パスワード知られても、なんともないんだろうけどさ。
でも主さんとかだって、スマ子の存在を知ってるし。
いや、お屋敷の結構な人数が、スマ子の存在は知っているのか。
だから見せるわけにはいかない。
色んな意味で。
私はやっぱり日本語で書いているから、カコドの人にどういう字で見えてんのか、見えるのかは知らないんだけど。
それにこの手帳っていうものは、やや私にとっては曰く付きだ。
毎日一番触れていたもの、っていうのに近い。
多分スマホの次ぐらいに触っていたもの。
電子決済なんかが増えてきたから、財布よりも触っていたと思う。
毎日毎日。
ところがこの世界に来て、本何やらが謎の文字、多分 こっちの文字だと思うんだけど、それに変化した時、手帳だったらどうなんだろうって思ったんだ。
だって、あれ数字と私が書き込んだものだけだから。姉ちゃんの書き置きみたいなものはそのまま残っていたから。
一体何が変換されて、何が変換されないのかを全くわかんなかった。
携帯は使えなかったし、テレビも見れなかったしね。DVDなんかも、たくさんあったのに謎の文字になっていて、どれかわかんなかったんだ。
色とか絵とかも変わってるし。
手帳だったらって思ったんだ。
数字が変わっていたって、ある程度は追えるかもしれないし。
マンスリーの形とかでね。
なんとなくわかると思うんだ。
何月から使い始めたから、とか。
日本語しか書いてないからって。
あれは私が書いた手書きの文字だからね。
でも手帳自体が、しばらく見つからなかった。
なんで?
いつものリュックに入ってるはずなのに。
出して書くとしたら、ここなのにって。
場所が決まっているのに、それでも見つからなかった。
まあ、あの時は、何もかもがわけわかんなかったけど。
今もあんまりわかってないけどさ。
かなり落ち着いた。
最近になって、ようやく、手帳が見つかったんだ。 もう本当にね。
突然、当たり前のように、いつも通りですけど?くらいの感じで手元なのあった。
……どーなってるんだってばよー。
仕事の話とかね。
理不尽なこと言われたこととかね~。
あまりにも遠い世界みたいなもんだ。
なんか、向こうの世界に忘れてきたのを届けられた気分。
とにかく。
私は日本語しか書いてなくて日本語しか読めないせいか、こっちの字じゃなくてもこれを人前にさらすなんて、絶対無理。
1回渡しちゃったら「このページ以外見ないでね」って言ったって、意味ないじゃん。 子供相手に。
大人相手だって渡したくないし。
あれ?驚くこと?




