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学校

 

 何だか知らないが、お屋敷を突っ切って、白服についてくるように言われる。


 早いよ。置いてく気か?

 ってか、壁はまだ続いてるけど、お屋敷の外出たよ?いいの?仕事中に。


 黙ってあとに続く。

 白服の足が早いから、話しながらは歩けない。


 屋敷からは全然気づかなかったが、小さな小屋というほどでもない、家があった。


 へぇー。

 庭園からは、見えにくいが繋がっているのか。

 壁の内側だから、屋敷の一部だろう。

 中からは、賑やかな子どもの声が聞こえる。

 これが、主さんの言ってた学校?

 学校っていうよりは学級っていう感じだな。

 それも学校には変わりがないのか。

 へえ、子供達のためにこんなのが併設されてるんだ。


 これ、従業員が先生を雇ってるのかな。

 どういう形なんだろう?

 いや主さんは、簡単な手伝いをして勉強を習う、って言ってたな。

 じゃあ自分で稼いだ分か。


 カコドって税金とかどうなってるんだろう?

 親子で雇って補助金とかなくても、雇い主はやってけるのか?

 従業員には昼飯時間の他に、休憩時間とかあったぞ。

 休憩と昼食部屋が別にあったし。

 日本なんか、休憩時間と云う名の昼飯時だったのに。

 そして、休憩とってなくても給料から引かれるんだよな。

 仕事に拘束されてる隙間時間の、どこが休憩なんだよ。

 そもそもご飯食べなきゃ、午後も仕事出来ないでしょ。休憩もらえなかった時、そのまま働き続いて体調崩すんだよな。

 偏頭痛とか起きるし。

 休憩時間も金払えよ。ホント。体調崩してからだと、何日かかかるんだよ。

 家に帰って食べたいんだよ。でもその移動時間がないんだよ。

 通勤中も金払えよ~。

 好きで満員電車にぎゅうぎゅうに潰されるんじゃないんだよ。

 早く来い?

 その分の金もよこせ。

 時は金なり。

 通勤中に何かあったら労災になるのはいいと思うけど。

 ハッ、またズレた。


 色々ぐるぐる考えていたが、こんなことを考えていられるのは白服が止まったからだ。

 どうした?

 お前が連れてきたんだぞ?

 なぜ止まる。


 もしかして、こいつ子供苦手なのかな。

 考えてみたら、白服に声をかけてくるのは女性ばっかりで、なんか子供が寄ってくるのを見たことがない。

 次手って言ってたから、子供があんまり声をかけづらいのかな。

 指示を仰ぎそうなものだけど。

 その指示はお母さんたちから貰うのか。

 個人個人というよりお母さんたち、子どもたち、という風に別れ、みんなで育ててる、みたいな感じか?


 それにしても。

 へぇ~、白服は子ども苦手かぁ。ニヤニヤ。


「……ここだ。」


 くるーり振り返り、固い顔。

 何が?説明しなさい。


「じゃ」


 え?

 えーー!?

 白服は、走って逃げた。

 ウソ!何してんの?

 私は何しに来たんだよ。



 何なんだかわかんないが、ここまで来たんだから見物していこう。

 コンコン、と一応ノックした。

 ……これ何?

 引き戸?

 それとも普通の、前後に開閉する扉?


 バン、と向こうから開いた。

 開けたのは元気そうな、目をキラキラさせた小さい男の子だった。

 引き戸なのかな~?というような金具は扉についていたが、引っ張るというか引くための溝がなかった。

 何だこれ状態だったので、相手に任せた形だ。


「これ、ツナ。『どうぞ』というところだったんだから、勝手に開けてはいけないよ。」


 いえいえ。

 そう言われても、私は困ります。

 サンキュー、ツナ。

 ツナ……。大丈夫。笑ってないよ。


「こんにちは。えぇと、」


 先生は、二、三十代の男性だった。

 温和そうで、優しそうな感じ。

 誰?って感じなんだろう。

 私も何で来たのか、実は知らない。


「こんにちは。白服の次手さん?に用があったんですが、こちらに連れてこられました。本人は、入り口からUターンしました。」


 コミュ障の私が、何故こんな自分からグイグイいく人みたいに話さなくてはいけないのか。


 しかし、屋敷内の学校に不審者があらわれたら、あのお母さんたちから敵認定されるだろう。

 あの決起集会の時の目を思い出すと、なけなしの社会性が虚勢を張る。


「ああ、そうでしたか。次手に。なるほど。……ゆたーん?」


 あら、そっか。

 アルファベットないから。

 異世界転移って、訳されてても会話難しいな。


「えーと、『(まわ)れ右』して帰りました。」


「舞われミギ?」


 何か違う。


「……えー、すぐそこの入り口まで来て、帰りました。」


「そうですか。」


 そうですか、と言ったものの、私が色々(しゃべ)ったきり放置なので、先生の頭がやや傾げている。

 今、何を言われたんだろう?とか思ってそうだ。

 ごめんなさい。

 喋れば喋った分だけ、ドツボにハマる。


「すいません、見学していっても良いですか?」


 とっとと、授業に戻って貰おう。

 ホント、すいません。


「大丈夫ですよ。どうぞ。」


 ニコニコと言われた。

 良かった。 


 授業参観じゃないけど、こーゆーのは嫌がられるのか、とんと見当がつかない。

 今は参観日とかって特別に設けずに、親は見に行けるらしいし。

 昔(自分の子どもの頃)は、親も先生もオシャレして来てたな。

 懐かしい。

 それで先生の一張羅を確認して、普通の日に『あ、あれ着てる!今日はなんかある!』みたいな。

 私だけでなく、別の子も「あー、今日先生がその服着てるから絶対何かあると思ったのに、全部終わったー!」って言ってたもんな。

 私もあの時、もう六時間目終わるよ?って思ってた。

 先生は驚いてたけど。

 子どもって見てるもんだね。

 あの頃の観察力の内、半分でも残ってればよかったのに。


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