緊張
みんな、皿を持って並びながら、不思議そう。
海外じゃ日本みたいに並ばない、と聞いたことあるが、「え?何?何?」と前後で話す割には、ちゃんとほぼ一列になっている。
カコドでも横入りとか、恨まれるのかもしれない。
「必ず全員に平等にわけること。そうでないと足りなかった者から恨まれるぞ。全てわけきるように。」
主さんは改めて、『給食係』に言う。
次いで、並ぶ人たちにも、人より多く食べると足りない者から恨まれもする。
もっとよこせ、であろうと何だろうと、わける者に物申してはいけない、と。
あらら〜。
余ったらジャンケンはナシになってしまった。
でも最初にちゃんとわけてくれないとね。
足りないのに大量に余らせて、ジャンケンなんて運で食べられなくてずっとお腹空かせてる羽目になるから。
ジャンケンも「まだあるな」とかで、二回戦になると、ちょっと空気も冷めるよね。
そこから食べたら、みんな片付け始めるし。
食べ物の恨みは怖いよ〜。
そもそも、平等にわけきるように、もなにも、明らかに足りない。
あの野菜炒めみたいなのを買ってきた人は一人だけだし。
果物かな?
なんか野菜か果物みたいなのを山盛りで買ってきた人もいて、座った人の頭より高く積まれている。
あれは切ったり皮むいたりせずに食べられるのか?
食べ方わからないから、種が口に入っても出すつもりだけど、リンゴみたいに微弱だけど毒があります、じゃ困る。
リンゴの種くらいで死にはしないし、多分体調も崩さないけど。
でもそれだけ、意外なほど毒が身近にあるんだ。
スイセンだって毒あるけど植えてるしね。
スイセンだったら、まあ地上部の葉っぱの方を ニラと間違ったりするっていう事例があったけど。
球根を間違って食べたって話も聞いたことあるから。
すごいよな。家族みんな倒れる威力らしい。
まあそれを言うんだったら、スイセンの葉っぱを食べたのは、セリを食べようとして間違ったって聞くな。
セリ食べたいんだったらそれ以前に、ドクゼリ がそっくりだから間違って食べたっていうのもあるしな。
つまりスイセンっポイもの、毒いっぱい。
スズランだって全草毒なのに食卓に飾ったりするしね。
スズラン人気だよね。
今は昔ほどじゃないのかな?
スズラン以外もいろんな種類があるからな。年々花って増えてく気がする。
昔はドイツスズランが園芸店とかホームセンターで見かけるようになった時はわー!と思ってたんだけど、もうほとんどドイツスズラン以外見かけなくなったな。
話がずれた。
違うよ、スズランの話がしたいんじゃないんだ。
園芸の話をしたいんじゃないんだよ。
もともと詳しくないし。
そうじゃない そうじゃない。
今はそんな毒妄想はいい。
カコドの人たちの食べ方を見て、わかんなかったらすぐ聞けばいい話だから。
いいんだけども、その他の問題だ。
明らかに少ない。
お菓子だけ山盛りで、とか、あの果物ばっかり私だけ3個きても困るし。
あの野菜炒めみたいなのが、死ぬほどしょっぱくて、パンとかが必要なのかもしれないし。
どうするんだろう?
みんなでそれぞれ買ってきているので、一部の食べた人たちだけでは分ける係が足りない。女性たちは皿を持たされたものの、すぐに気づいてそこにわける側にまわろうとしたが、主さんが止めた。
そしてやはり、さっき買ってきたばかりの男性陣を指名する。
女性陣が不満そうだ。
それはそうだ男たちに、あれがわけられるとは思えない。
取り皿の必要性とか、そこにお前置いといたらみんなで取り分けられないだろう!みたいなのも全く気にかけなかったんだから。
どんな昼食になるか知れたもんじゃないもん。
気持ちはわかる。
自分たちでやった方が、うまくいくってね。
私も正直ビビリ半分している。
なんかこう、闇鍋ってみんなで集まってやる時、こんな気分だろうか?
やったことないんだけど。
主さんもなかなか肝が座ってるよね。
自分も食べるんだよ、これ。
料理自体は問題ないにしたってさ。
その主さんは一番後ろに並んでいる。
列をみんな譲ろうとするんだが「いいよ、構わない」と言って、並ばせて「さあ始めよう!」という態度だ。
主さんが最後だったら、主さんのために残すために、みんなちょびちょびしかもらえないだろう。
だがしかし、全てわけきるようにと、さっきわざわざ言われた。
もうどうしたらいいんだかよくわからない。
そんな顔である。
一番前の人が、皿に盛られた。
緊張の一瞬、という感じだ。
が、皿を差し出されて盛る方も、非常に緊張しているようで、でもほとんど顔が不思議がっているようで、何をどうしたらいいかわかっていない、という感じだ。
トングみたいなのがあるみたいで、いやハシかな?
よく見えないんだけども。
なんだかそれで、ちょびっとだけ盛った。
その量を、全料理一周するまでもらえたって、お腹いっぱいにならないだろうな。
女性陣は不満そうにしながら並んでいる。
口を出しても主さんに止められたので、手を出したくてたまらないだろう。
それはそうだろう。
私もそっちの方が美味しいご飯をちゃんと食べれる気がする。
そう思った頃、コネンさんと白服がやってきた。
なんだこれ?って顔である。
よくわからない顔で、主さんに言われた通り並んだ。
が、主さんが自分の前に二人を並ばせ直し、自分が最後尾に着く。
え?という顔をしている。
二人も。
みんなも。
こっちを振り返っている。
主さんは気にしない。
「さあ、早くしないと食べられなくなるぞ」
ちなみに私は主さんと一緒にいたので、最後尾である。
主さんよりは前だ。
つまりは最後から2番目ね。
客と主が一番最後についている。
みんなどうするんだろう?
多分、主さんの中には聞いてから思い浮かんでいる形があるんだろうが、「こうですか?ああですか?」と私に質問して、だいたい近くにいさせた。
あまり辛いのも私実は食べれないんだよね。
食べるのが苦手なくせに、辛いの食べたくなるんだけどね。
不思議だね。
よくわからない顔で、みんなくるりと回っていく。
初めのうちは、恐る恐るわけていた人たちも、きりがないと思ったのか、盛るスピードが早くなる。そうだろうね。




