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給食スタイル

 

 買い出しの男性陣が、山盛りの食料を持ってくる。


 誰も打ち合わせしなかったのか、完全に趣味で選んだようなセレクトだ。


 同じ肉であろう串焼きだけ、山盛りで買ってくる人。


 甘いものだけ山盛りの人。


 パンに色々な具材を挟んで焼いたのや、野菜炒めみたいの、串焼きと数種類買ってきた人。

 その人は単品山盛りを見て、頭を抱えている。


 面白いな、と私は見ていただけだったが、くるくるよく動く女性陣はそのメニューを見て怒りだした。

 野菜がない。

 栄養が偏っている。

 子供や主さんに、そんな何も考えてなさそうなものを食べさせるのか、等など。


 夫婦?

 実に忌憚ない職場ですね。

 夫婦も混じってそうだけど。


 肉串の山盛りのとばっちりで、野菜炒め買ってきた男性も叱られる。

 かわいそう。

 見てるのは楽しい。

 屋台なんて見かけなかった〜。

 面白そう。


 怒りマックスの女性陣だが、コネンさんがそろそろかと様子を見に来たので、台所に飛んでいく。

 きっと、野菜を何が何でもプラスするんだろう。

 手を切らないように頑張ってください。

 サチコ、ここで待ってます。


 男性陣は全員戻り、ただドカッと置いただけで取り分けるのも難しそうなため、女性陣はずっと座れずに動き回っている。


 その最中に、主さんは部屋に入ってきた。

 室内を面白そうに見回している。

 男性陣は大声で好き勝手離していたのをピタリと止めたが、胡座かいてるままだ。

 胡座は目上の人の前でもいいのかな?


 静かになって座ってる男性陣と、無言でほぼ走り回ってる女性陣との対比の凄さよ。

 女性陣は一人も座っていない。主さんが来てしまったことで、一層必死な様子だ。


 男性陣も外で働いて来たんだが、こういうの見ると、男尊女卑みたいでなんかモヤる。

 しかし現実に、男性陣は買ってきたまま置くだけ。

 何が悪いのか、というか、何一つ問題ない、というカンジだ。


 ……みんなで食べるんじゃないのか。

 まさか従業員同士でも、女性に給仕させて動かないの?




「ああ、そうか。何かが違うと思ったが、音楽か。」


 小さく感動したような声で、主さんはスマ子を見た。

 そういえば主さんは、変な声をあげるスマ子しか知らないのか。


「音楽はあったほうがいいですよね。」


 女性陣はまだ座れなさそうだし、私も時間稼ぎ兼スマ子の紹介をしよう。



「なんなら世界遺産の旅に映像を切り替えますか?」

 得意げに好きそうなものをアピールするスマ子。

 主さんは旅慣れてるんじゃないのか?

 いや、商売人には各地の文化レベルは大事か。

 でもスマ子が写してんの、カコドから見れば異世界だしな。


 さてどうしよう、と私が考えてる間に『世界遺産』という言葉に興味をもった主さんは、スマ子に質問攻め。

 私が持って見せてる形から、ほぼ自分でスマ子を持っている。

 大きな手だ。

 きゃーぁ主さんと距離ちかーい、なんちゃって。

 白服が私を刺さないだろうか。

 主さんにバカが触るなー!みたいな。


 アホなこと考えてる間に、周囲の男性陣、の一部が勝手に食べ始めた。

 全員揃ってないどころか、主さんも座ってないのに。

 昔、田舎で人様の結婚式とか葬式なのに、勝手に飲み食い始めてた男衆に重なる。

 世が平成になっても、座ったんだから始めてたいいんだろう、くらいの認識しかないやつ。

 ホテルのスタッフが驚いて止めにきたのに、女性には怒鳴りつけて、男性がきたら黙ったな。

 多分あーゆーの、カスハラの始まりなんだろうな。


 ってそれはともかく、いいのかな?

 主さんはいるが、見えてないのか、細かい指示は現場にそれぞれ任せているのか。

 モヤついてんのは私だけだろうが、どうしよう?



「給食スタイルはどうですか?」


 おぉっと、何も考えずに喋り始めてしまったぜ。


「何ですか?」


 主さんは不思議そうにこちらを見た。

 すると、主さんの手に持たれていたスマ子の映像が、子供達の給食になった。

 ……こんなのどこの画像にあるんだろう?

 スマ子の不思議。ってゆーか、こわい。


 とりあえず、ちょうどいいかなと思ってそれを指さす。


「こんな風に学校に子供たちが集まります。

 私が育った国は、だいたい6歳以上の子が通い始める義務があるんですけれども。

 これは給食といって、みんなで昼ご飯を食べるんです。勉強の合間に。

 一番小さい子で6歳とか7歳の子供たちだから、ここでも再現出来ますよ?」


 不思議そうな顔の主さん。

 レアだ。


「当番制で、全員にちゃんと平等にわけるんです。出来ないと、足りない子から恨まれます。6歳の子が出来るんですから、ここの人たちにも出来ますよ。」


 あの人たちにやってもらいましょう、と食べてる人たちを指さす。


 え?という顔のわんぱくたち。


「それはいいですね!」


 と、笑顔の主さん。

 思うところがあったのかもしれない。


 部屋の奥が上座なのかと聞いたら、だいたいは、ということだった。

 じゃ、と奥に人一人が入れるようにあけて、料理を並べる。

 男性陣は、何だ何だ?という顔で。

 君らがやるんだよ?


 女性陣がかわるがわる出入りするが、とどまるように主さんに言われる。


 みんなで皿を持って並んだ。

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