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準備

 

 特段、邪魔をしたかったわけじゃないが、結局昼食は、主さんのお屋敷で食べた。

 というのも結構話しているところで、一生懸命探しに来た女の人があった。

 こないだお茶を出してくれた方だ。暑いのと冷たいの。なんかこう、歴史の偉人の子供の頃の逸話みたいな感じの。あれはありがたかったな。

 人の気遣いができるってこういう人なんだろう。

 実際、対応してくれて、動いてくれたしね。

 逆にサボらず働いてた人たちは、みんながいなくなって、何が起こってんだかわかってる人、いたんだろうか。



 まあそれはいいとして。

 慣れない業務をやって、気づいたらもう既に夜。

 ほとんど暮れかかっている。

 夕飯の準備を今からするのに、そもそも材料が足りない。


 主さんはあらかじめ、朝始める前に、大量に人がいなくなったのだから、自分の食事などはもうとにかく簡素でいい。

 自分の食事は気にかけるな、という風に言ってあったらしい。

 使用人さんたちと同じもので全く構わない。

 そうするように、ということだった。


 ただそう言われても気になるのが、下につく使用人の性というもの。

 主さんは逆に、従業員さんと違って休憩時間が取れないんだろう。

 それだったら、きちんと休みもしないのだから食べてほしい、という考えがあるようだ。


 まあ指示されたって、自分たちと同じ食事を出せないしね。精神的に。

 実際には、時間がなくてほとんど変わらないのを出した、ということみたいなんだけども。



 ほうほう。

 魔力持ちが近くにいるせいか、白服の魔力がこの屋敷に割合染み込んでいるせいか、この屋敷で起こったことをなんとな〜く説明されながらのせいか、思い浮かんでくる。


 へー便利だね。

 これ海だったら別に、マナがいっぱい満ちてるから不思議に思わないんだけど。

 貝王様とイカさん先生と忌視子(きみこ)さんの魔力満タンの場所だし。



 なるほどね。

 大変そうだ〜と思って私は主さんに、本当に自分に気を使わないでいいので教えて欲しい、と言ってあるものを見せた。


 真珠の指輪だ。

 これは貝王様もイカさん先生も危海子(きみこ)さんもつけられないだろうから。

 あと、私だけ指輪ではあるけど、ちょっとこれでおそろい、と思って。

 真珠の首飾りはお品切れです。

 例によって何千円かで買ったものなので、本物の真珠かどうかはわからない。

 本物っていうのはもちろん『天然真珠だと思っている、これを養殖真珠なんかじゃなーい』という意味ではなく、プラスチックなのか本当に成分として真珠なのかすら私にはわからない、ということである。

 コットンパールとかあるよね。

 あれはなんか、風合いが違う気がするけど。

 そっちは嫌だ。それはなんか違う。


 ただね、元々の世界にも模造品が多かったからわからない、と正直に言って渡した。

 サギ、良くない。

 これが金になるんだったら、実はそもそも海の上から街中に出てきたのは、肉の塊が食いたいからだ、と言ったのだ。

 なんかこう、屋台とかで一口分でいいから焼いた肉の塊とか売っちゃいないんだろうか?と聞いてみた。


 主さんは、異世界にも模造品を作って売りさばく、なんていう文化がある話を聞いて面白がっていた。

 なんか知らないけど、今日は一段と貝王様と被るな。

 なんだ?

 何か違いがあるんだろう。

 まあいいか。



 そういうわけで私も、贋作文化に別に詳しくはないので、色々なものがあるのだ、と言った。

 その色々を説明出来ないんだけど。


 樹脂って言ってもね、本当に樹の油なんだろうか。

 あれ木の油って、本当にあんなになるの?

 天然ゴムの方がなんかまだわかるんだけど。

 まあ真珠の模造品に天然ゴム使ってるかわかんないけどね。

 真珠の模造品で一般的って言うと、貝を削り出したやつらしいんだけども。

 綺麗だったら別に貝の表記のままでもいいと思うんだけどね。

 値段でそこはかとなく、ばれるのかな?

 まあそれをピンハネされるのが結局、模造品って言うんだよね。

 それは腹立つよね。


 いろんな話をしてたが、さすがに真珠であると値段がかなり高額になるので、肉のその辺で買えるような串1本の値段には、お釣りが多すぎるから別に構わないということになった。

 つまり奢られるのです。

 ゴメンね、主さん。


 大変じゃなかったら、ということで主さんはさすがに残ったが、屋敷の男手で外に買い出しに行った。

 女性たちは皿を並べるなどの夕食の準備らしい。

 買ってきた物を、みんなで同じ席で食べる。


 さすがにそれぐらいは、私にも手伝えた。

 でも何て言うか、色々と自分よりちっちゃい子供に指図された。

 あの、もう帰りたいんですけどって言ったら「自分では判断できないから」と対応をしてくれたあの子だ。

 お茶を出してきたのは母親らしい。

 いやー親子さん共々にご迷惑をおかけしています。


「それは違います」と、傷つかないけれども素早く注意してくれる子供。

 この子できる!

 できないサチコとの対比がすごい。


  邪魔になってポケットに入れていたスマ子は、

「この子、有能ですね。

 ご主人(マスター)より、ずっと知能が高いんじゃないですか?3倍ぐらい」

 とか、いちいちうるさいから壁に置いといた。

 が、時々喋り出してビビる人がいても、あんまりスマ子を相手にしない。


 忙しくてそれどころじゃないらしい。


 あんまりキリキリと忙しく余裕がないのは嫌だけどね。

 ゆったりしすぎても、確かにちょっとサボりがちになるのかもしれない。


 実際今いる人たちは、スマ子が相手にされなくて映像と音楽を流しても、見回したりはしても動きは止まらない。

 精鋭、ってカンジ。


 今後ともお世話になれそうだ。


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