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本題

 

「それより」


 それより?!

 ヲイ!


 驚き目をむいた。

 私には、安全と安寧を乱す重要事項なのに。

 あとなんか、気になることもあったのに。

 しかし白服は「それより」というだけあって(?)平気で続けた。


「屋敷に来ても当分もてなす者はいないぞ」


 はい、きーらわれんぼー!

 要るのはスマ子だけ、お前はいらん、と!

 確かに、食ってばっかだな!




「それでは伝わらんだろう。」


 穏やかに(あるじ)さんの登場。

 いつも結局、出向かせてすみません。


 正確には声を先にして、主さんは扉に姿を現した。


「こんにちは。

 ご迷惑おかけして申し訳ありません。」


 と。


 いやいや、こちらのセリフです。

 ほんとすいません。


「いえ、お邪魔しています。」


 にこやかに挨拶する主さんに、私は少し頭を下げる。


 少し遅れて、隅の人がやってきた。

 あら、一緒に来たんじゃなかったんだ。


 今日のお屋敷は人が少ないような?


「実は、なかなか多くを解雇いたしまして。」


 かいこ……蚕?解雇?!

 え?解雇?!


「え?!」


 声をあげたのはスマ子だった。

 手に持ってるから普通に声が聞こえるんだけど。

 いや、こいつ、リュックの中からも喋ってたな。

 まあいいか。

 ここの人みんな知ってるしね。

 スマ子としては、自分をチヤホヤ?してくれる唯一の存在だもんな。

 解雇になったら多分、もう会わない。


「え、大事(おおごと)ですね?聞かない方がいいですか?」


 こういうことをバカ正直に聞いてしまう私は、いけないと思う。

 社会を渡って行くのが下手くそだ。 本当にね。


 でも、相手から言い出したことをスルーするのもどうなんだろう?

 何が正解?

 誰かー。バカでも覚えられる解決のセリフを教えて。

 覚えられるやつね。そのためには長さも重要よ。

 じゃないと、そうそう出くわさない場面だから。

 聞いても忘れた、が多い人生です。



「実はお客様が当家にお貸しくださっていた、その魔法具なのですが、「子供たちが勉強しない」と母親たちが怒り始めまして。

 屋敷の運営どころではなくなってしまったのです。」


 え?


「すいません、あのお屋敷の子供達っていうのは、働いてたんじゃないんですか?

 勉強しに来てたんですか?」


 どういうことです?

 何、ここ。 学校?

 主さんのお屋敷兼学校?

 あの子供たちは従業員ってか、使用人さんの子供でお手伝い、とかじゃないの?

「自分はこの区域の係じゃない」と言ってた子は、ちゃんと対応してくれたんだけど?

 そういうのを勉強するっていうこと?

 ワテの思ってる勉強と違う。


「少々の労働をして、親の近くで勉強するという形でしょうか?

 何せ食事時間や休憩時間というものが設けられますから。

 親が完全に目を離さない、という意識が強いのだと思います。

 そうして、親子で雇われることの方が多いのですよ。

 子供の方も、もちろん簡単な労働もしてもらいますが、その代わりに読み書きや他国の言語などを覚える場合もありますし、職人になる子もいます。」


 職人……。

 屋敷の中で、職人。

 それはすごいな。


「そういったことなのですが、魔法具を取り合って喧嘩をする子供たちも出始め、勉強を放り投げてこちらの区域にやってくる子たちもいまして。

 母親たちが怒って仕事の手を止めてしまいました。

  このままでは今は注意で済んでも、早晩屋敷が運営していけませんから。

 そのことでお客様には申し訳ありません。

 当家の来客の案内を取り仕切っていた者も、その時に解雇した者の一人なのです。

 そして今、人手が足りなくなっておりますので、これまでを知らぬ者が普段は通さない場所に来客を通してしまいまして。

 お客様も庭に現れることは想定済みだったのですが、お姿を見られたかもしれません。」


 あ、はい。

 なんかこう、それはね。すいません。

 この屋敷の、来客を通す部屋が明るい窓際だ、っていうことはわかってたのに。

 だいたい庭に現れたら、全客間から見えるよね。

 すいません、私がアホだったね。


 でも、家の中に入ると、本物の不法侵入みたいだから、なんかこう精神的にさ。

 靴を履かないわけにもいかないからさ。


 ほら、後の祭りですな。


「いえ、こちらこそすみません。」

 としか言いようがない。


 本当にね。

 それはこう、こちらが考えなしだったので。


「こちらがお願いをしなかったのですから。」

 と主さんは言ってくれた。

 ありがたい。

 すいませんね、自分で気にするはずのことをね。


 もう来るなって言われるかな?


 そう思ったら、主さんの方が先に言ってくれた。


「ですので、お客様がもし可能であるならば、現れる場所は室内の一部屋ということに決めてしまいましょう。

 壁があったら、その壁の中の人間しか見えませんから。」


 それはそうじゃ。


「彼には居場所が分かりますからね。」


 と、白服を見る主さん。

 何だっけ?

 その間なんか呼んでたよね?

 サジ……ジテ、次手!

 いいの?

 そんな扱いで。

 なんかすいませんね。


 ところで魔力の使い方、私より主さんのほうが詳しそうだな。

 ま、いっか。

 助かる。


 そんで、ところでところで。


「お忙しいところすみませんが、サボテン魔王が白服に会いたがって情緒不安定に泣くんですけど、借りてけます?

 時間の保証は出来ませんが。」


 本題に入ったら、却下された。

 今日、そのために来たのに。

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