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 はじめはポコポコ浮いてくる物が、小さいものかなと思って見ていた。

 だが、どんどん浮いてくると、そうものんびり見ていられなくなった。


 自分の足元に浮いてくる、なんていうか、すっごい重そうな貴金属、みたいなの。

 何かの道具かもしれないが、よくわからない金属とかの固まり、とか。要は金属っポイしかわからんもの。

 他にもなんか、湾曲した小刀みたいなの、とか。


 小刀って言っても、刀よりも短いだろうな、っていうだけで結構長い。

 何これ?

 30cmくらいあるんじゃないの?

 これ、ガンって下から湧いて出たとしても、足にぶつかったら痛そう。


 何これ?

 何でこんなものがあるの?

 海の中だったら、船が落としたとか沈没したとか、わかるけどさ。

 何?

 旅人が落としてったの?


 重そうなものが、なぜかプカプカと浮いている。

 それが「差し上げます〜」という魔王の声と一緒に、私の方にすーっと集まってきた。

 集まって、きたけど……。


 いやいやいや。

 これさ、突然魔法が切れて足の上にガンって落ちたら、やばいと思うんだな。

 もう歩けないと思うんだな。物理的に。


 ていうか、そもそも。

 いらないですけど。


 なんで私に、これいると思ったの?


 ていうか「差し上げます」ってやめて。

 なんかさ〜、まるで私がカツアゲしてるみたいじゃん。

 脅してすらないから。

 こんなお宝なんて、想像すらしてなかったから。


 コレ何よ。


 何かも知らない、物理的に重そうな物。

 しかもいろんな念的にも重そうな物。

 不思議でしょうがないんだけど。


 ある意味「とっておきのダンゴムシ」とか「一番よく出来たピカピカ球の泥団子」レベルだよ。

『あなたには宝でも私にはゴミ』というやつだ。

 これをゴミとは思わないけど(宝石とか付いてて綺麗だ)、いらないことには変わりない。


 私、魔力で持ち上げるやつ出来ないから。

 持ち上げて、さらに維持し続けるのは、もっと無理。

 まだほとんど練習してないけど。


 それに持たなくても、浮かせられなくても、スマ子に一緒に移動してもらえば済むかもしれない。

 だがしかし。

 ただ持ってるだけなら、部屋が物で溢れてるのに、なおさらいらない。


 じゃあ金に変換する、となるが。

 売りさばいて金にするにも結局、主さんの世話になるだけなんだよ。

 また恩が増える。

 恩ってゆーか、貸しが増える。

 昨日の白服のことがあったばかりなのに。 


 やめて。


「いや、いらないです。」





 ガーン





 出た。

 ガーン。

 前もやったな。

 持ちネタ?


「そもそもお宝持ってると思ってたわけじゃないですし。

 欲しくて来たんでもないし。

 特別の悪意があったと思ってるわけでもないですし。


 私の地元の……地元っていうか、うちの庇護してる魔王様たちにも「そんな難しいことじゃないから緊張して倒れただけだろう」って言われましたよ。

 別にそんな恨んでいないから、一人で騒ぐのやめてください。


 ていうか、宝物を渡したから友達になるとか友達じゃないから。

 そういう輩とは全っ然、縁切った方がいいから。

 そういうのは悪縁って言うんです。」



 全く。

 何で私がこんな杜子春みたいな説法しなきゃいけないんだ。

 とりあえず落ち着け。


 あと、本心からこれはいらない。


「ていうか本気でコレ、足元に落ちてきたら私の足が潰れるんで、しまってもらえませんか」


 本当これ、落としたら恨むよ。

 私なかったことにしたっていいからね、さっきの発言を。


 なんか泣きそうな気配の魔王。


 たくさんの泡みたいのがシュワシュワついて、お宝の数々は岩壁の方へ向かって流れていき、草陰に隠れた。



 悪かったって。

 あなたには宝物なんだろうけど。


 何あれ、生まれる前にこの場所に捧げられた貢物?


 あれ?

 捧げた物だから、捧げ物?

 貢物は、神様に供えた物には使わない言葉?

 属国から宗主国に持ってかれるのが貢物?

 その他は『キャバ嬢に貢ぐ』という文脈でしか聞かないな。

 そんなバブル時代のアッシー君とか貢君(みつぐくん)とかの俗っぽいのにしか使わない言葉?

 献上品と貢物の違いは何?

 立場が上の人に貢ぐと献上品?


 あれ?

 貢ぐって難しいな。


 ま、いっか。

 人に貢ぐ余裕のない私には関係ない。


 ついでに『えー?自分が貰ったんでもないのに拾いかき集めて持ってたのー?』とか、考えちゃいけない。


 うんうん。

 知らんぷり。

 私は何も気づかなかった。


「わー、やべー。イイネ欲しさに捏造するSNS土偶だ〜。」


 やめなさい、スマ子。

 魔王はインスタもエーックス!もやってないでしょ?

 見てもフォローしないけど。

 いや、ごめん。

 SNSやってないんだ。





 違うもん〜。





 泣いてるからやめなさい、スマ子。

 まだ人間に夢を見てんのよ。

 これから現実を知るんだから。

 ぼっちという現実は数百年は経験してるけど。


 ほとんど球体になっている、膨らんだサボテンボディ。

 その上部が、落ちてきそうにやや傾いでいる。


 話づらいから近寄ろうと思ったのだが、こわくて近寄りたくないな。

 何あれ。

 うつむいて泣いてんの?

 顔あったの?


 土偶呼ばわりしといて、それはないか。失敬。

 実際の目でもないけど、目の位置にトゲとかあれば、もっと土偶っぽかったかな。

 でも古代の人に置き去りにされた土偶が付喪神(つくもがみ)になったみたいで、もっと哀れかな?


 無難に、貝王様とかイカさん先生の話をチラッとしたのだが、魔王は泣いてる気配ばかりだった。

 せっかく、お二人に許可とってきたが、効果なし。

 自分と存在が近い友達のほうが、安心するかと思ったのだが。


 もー。どんだけ人間好きなのよ。


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