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相性

 

 ぶっちゃけこのまま帰ろうかと思ったんだが。

 それもちょっとあんまりだし。

 まあ、この魔王の相手するのは疲れそうだけどね。


 すぐに白服にバトンタッチできないだろうしね。

 多分白服は、昨日寝てたので今日仕事だろう。

 さすがにサボんないだろう。

 魔王がピンチで〜す、とかって別に影響なさそうだもんね。

 カコドの町に。



 そういうわけで仕方なく相手をすることにした。

 いきなり引き寄せられても怖いので、落ち着け〜落ち着け〜、と念を、念ていうか魔力だけど送ってみる。


 でもそれも、向こうは、ギャン泣きしているような状態なので、聞いてくれない。

 っていうかなんかもう、30回ぐらいやった。

 壊れたレコードみたいだった。

  レコードっていうの程でもなくても、なんか アナウンスみたいに延々言い続けるからね。


 私が落ち着け。


 イラッとしちゃいかんぞ、みたいな感じだ。


 もう何をやってんだか、よくわかんない。

 でもイラっとすんだ。

 だって、ずーっと、それを言い続けてたんだよ?


 魔力でこっちから伝えようとしたって、届きました、っていうのがあるわけじゃないからね。

 白ヤギさんだの黒ヤギさんだのの手紙と、同じようにね。

 返事くんないとわかんないのよ。


 だもんでね。

 聞こえてんだが聞こえてないんだが、なんかよくわかんないけどさ。

 もう、届けようとしてる私の魔力が多分、向こうの魔力に押し流されて帰ってきてんじゃないかと思う。

 でも私の声が、声っていうか魔力だけど、発射したものが自分自身に跳ね返ってくるっていう感覚がないから、わかんないのだ。

 自分の体内に魔力として、ただ戻ってきてるだけなんだろうか。

 どうなってんだかわかんないけど、とりあえず落ち着いてくんないと、どうにもならない。




 私が逃げないと思って、落ち着いてきたのか。

 まあその他の要因があるのかないのか知らないが、魔王が落ち着いてきた頃、どうもゆるゆる 後退していたものが止まったようだ。


 やっぱり魔王が押してたんじゃないか。

 何が、行かないでぇ〜、だ。


 それはともかくとしてピタリと止まったので、とりあえず、めちゃめちゃ遠くなってしまったが(特別近くもなかったものがどんどん遠くなっていったんだが)

 おーい、落ち着きましたかー?

  と、少〜し小さく聞いてみる。


 そしたらちゃんと聞こえてるかどうかわかるだろうからね。





 ごめんなさーい。





 届いたたようだ。

 どのみち、同じように謝ってた。


 でもまあ、そうだよね

 あんたが落ち着け。

 一人で騒いで、一人で色々巻き起こしてる。



 自分のとこに来て欲しいんだったら、少し落ち着いて待っていなさい。

 そうじゃないとまるで「お〜い、私をあなたのもとに引き寄せて〜」っていうのを言わせるために状況作ったり待ってたりすると、みんな逃げてくからね。

 ヤベ~アイツやべー、しか言われないからね。

 混ぜてー、って正直に言いなさい。


 ……いや、そもそも魔力持ちどころか人が来ないか。

 ごめん。

 今のは、ごめんなさい。

 忘れて。


 ってゆーかさ。

 チビチビの白服が砂漠でさ迷うのを見守っていた、鉄の忍耐力どこいったの?

 私としては、魔王であることよりも、そこを驚異的だと思って一番敬意を持った部分だったのに。

 子育て終了で自分に正直に生きます、的な?

 そいう感じ?

 知らないけどさ。

 まだゾウさんがいるよー、頑張れ頑張れ。


 でも来る度こんなに手間かかるなら、頻度ホントに下げたい。

 ちょっとココ、水々(みずみず)しすぎる。

 土の上の大地歩きたい、で島もらったのに、散歩よりこっち来る意味がわからない。


 そういう態度が、忙しい時気をつけていても客に伝わるように、魔王も何やらビクビクしている。

 落ち着けってば。

 自分は大砲うっといて、相手の小鼠が針刺したら訴えた、みたいのやめて。

 アンタのほうが強いから。

 弱いからっていうのは不利なんだから。

 弱さを盾にするのもどうかと思うが、私は小五の時、3対1だったのに相手が泣いたからって私だけを叱りつけた副顧問のあの女の顔、マジで忘れたことない。

 その後の中学や高校の担任の顔はおぼろげでも。

 ホントに絶対許さない。





 ひぇー、ごめんなさい〜!

 お宝あげるから許してー!





 私は山賊じゃない。

 落ち着け。


 ってお宝なんてあるの?

 人食い花?

 真水?

 奇をてらって炭酸水か?


 あ、温泉?

 なら、いいな。

 この魔王の前で風呂入りたくないけど。



 そう考えたのが立ち上がりかけていた時だったのだが、すーっと足元が勝手に移動していった。

 多分魔法だと思う。

  でもちょっとぐらついた。

 きちんと立つ前だったから、危ない危ない。

 文句言うほどの勢いでもなかったし、ちょっと 立て直しただけで済んだけど。



 今文句言ったら、また大騒ぎしそうだな。


  そう思ったが、魔王のところまで行かず、この空間の中央に行って止まった。


 まあ、中央つっても、もう水の中なんだけどね。

 いや水の上か。


 全域が水になってるわけじゃないんだけど、だいたいそんな感じだ。

  岩の中に、突然の湿地帯、みたいな。


 その泉の中からポコポコ、と聞こえた気がした。

  見ると草花が沈んで咲いている水の中から、何か湧き出てきた。

 と思ったら、物理的に何かが浮いてくるようだった。


 何?

 おはじき?

 ビー玉?


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