赤面
リンゴ病、と小さい頃は言われた。
すぐに赤面するからだ。
それが恥ずかしくて、なおさら反応してしまう。
自分ではどうしようもない。
昔、本当に、自分はそういう病気なのだと思い、気に病んでいた。
長ずるにつれて図太くはなっていったが、すぐに赤くなることだけは変わらなかった。
自身がオバサンに近寄ってきた(そのものかもしれないが)時、これはただの冷えのぼせでは?
と気づく。
冷えのぼせとは、冷え性の重症版。
体が冷えすぎて、生命を守るために脳に熱を集中させている状態だ。
つまり、体を温めると、体が温まる前にのぼせる。
無関係な人は、赤面とどう関係するんだ?と思うだろう。
冷えのぼせは、動いて暑くなればつまり、頭に血が上るので、顔が赤くなるんだ。
「顔、真っ赤だよ?
そんなに暑い?」
と聞かれる。
頭はクラクラだが、体は寒い。
思いやりでクーラーを強くされると、体調崩す。
少女マンガも少女小説(今もあるのかな?)も読む専門で、そういう世界観を体験したことはない。
つまり私の場合、顔が赤くなるイコール良くないこと、だ。
今の状態もそう。
顔から火が出そう、というやつだ。
一歩も動いていなくても、手で頬に触れなくても、焼けるように顔が熱い。
ダウンに火の粉がとんで穴あけても構いやしない、と焚き火に近寄ってるくらい熱い。
顔の表面が熱すぎてヒリヒリするくらい、熱い。
私にも羞恥心ってあったんだな。
ところで洗面器に水入れて顔つけたらお湯になるんじゃないかな、これ。熱い。
あー、穴があったら入りたい。
酔っ払いが担ぎ込まれて、すぐまたコレだよ。
あー、も〜。
完全に他人事なつもりでいたよ。
どーりで並んで寝かされてるわけね。
人間二人も寝てたら、動かすので精一杯だよね。
あー、恥ずかしい。
あー、きまづい。
魔力持ちであろうがなかろうが、私が考えが垂れ流しだろうがそうじゃなかろうが、誰だって真っ赤になってる私を見て、恥じていることがわかるだろう。
そのうち、フォローなのか何なのか
「すみません、分かりづらかったですね。」
と、主さんは天意抄?だかの説明を始めた。
昔の魔法書らしい。
それを著した作者は、魔力というものは空中から取り込むもの(マナのことを言っていると思われる。その説明だとマナという概念がその当時あったのか、ないのかもよくわからん。古代からあったはずだが)と注釈をつける。
天の意である、天が与えた魔力、魔法というものを観測したもの、という意味で、天意抄と名付けられてるんだそうだ。
著者が本のタイトルをつけたんじゃなく、後世の人々がそうよんでるんだって。
序章なのか、最初の注釈から。
無題の間っていうのは、自分で項目ができないものを集めたものなんだそうだ。
さようですか。
魔力持ちの不調などについて、自分たちでわからないことも多いし、医者に見せることもできないから、と。
そうですか。
そういえば、前にもそういう説明をされたね。
医者は患者を見たら、それが魔力持ちかどうかわかるのか?前もそう考えたね。
何つーかこう、体表的には何にも現れない気がするんだけども。
恥ずかしくて、ほとんど上の空で聞いてるんだけどね。
天意である、魔力魔法それを測したもの。
千差万別のそれぞれに注目したなら、確かに役に立ったりしそうだね。
でも、今はどうでもいいです。
逃げたい。
白服が起きなかったら、どうしよう?
限界だったので、主さんに断って、白服の部屋に戻る。
場所、わからんので、やっぱり案内を誰かにお願いして。
その時、ニコニコされてるのが、さっきのクスクス笑いに重なって、どのみち救われない。
人生で、そう何度かしかない、本気で顔から火が出そう、だ。
白服、爆睡。
誰もいなくなってから、コイツのせいだ、と頬を人差し指でぎーぎー押してみたけど、起きなかった。
白服の肌はツヤツヤのスベスベだった。
何でだよ!
若いとはいえ、乾燥地帯だろ!
地学的に、カコドが乾燥地帯というのか知らんが。
くっそ〜!
でも元気に起きてくれないと。
とっとと、逃げ帰ることもできない。
そしてこの屋敷に、恨みは残されてしまうだろう。
起きてくれないと衰弱するだろうし。
食ってから寝ろよ。
それどころじゃなかったんだろうけど。
どうしようかと思ったけども、それこそ例えば、と手の甲に手で触れてみても、魔力が吸収される様子もないし。
スマ子に何か聞こうかなと思ったんだけれども、多分お屋敷の中にあるんだろうが(また人気者になっているのか、何なのか。それとも主さんが隠してくれているのか)さっきの人に聞けばよかったが、もういなくなってしまった。
しくじったな。
いろいろやる事の順番がおかしいよ。
あの場から逃げたかったからね。
しょうがないので魔力珊瑚を手に取る。
これ、貯めはするんだろうけど、どうなってんだろう?
白服の魔力が溜まってるんだろうから、大丈夫だと思うんだけどな。
でもな〜。
すっごい吸引力だからな。
白服の、普段触ってるので体調に異変がないってことはそこまで吸い取ってないんじゃないかな?
あんまり吸い取らないように、何かしらリミッターをかけてから貝王様もイカさん先生も、渡してんじゃないだろうか。
そうじゃないと危ないよね。
海だったら自然にとんでもなく魔力が貯まるんだろうけどさ。
カーサフクダの周辺なんて、貝王様も危視子さんもイカさん先生も出現するからね。
魔力たっぷりだもんね。
それと同じってわけにはいかないはずだ。
この屋敷の中にあったら、魔力を吸い取る源は白服ただ一人だから。
普段から吸い取られてて、いきなり使ったことない魔力の使い方したからってことじゃないよね?
そしたらこれ、あるだけで危険だよな。
いや、最近調子こいて火を使ってたからじゃない?
それまでと魔力、使わなかったのに。
わかんないけどさ。
まだ、動かさないで、寝かしといた方がいいのかな?
でも、寝続けて衰弱してもう体力がなくなったから無理でした」とか言われても困るんだよな。
よしやっぱり起こそう。
イカさん先生経由ということは何とかなるはずだ。
「貝王様、イカさん先生。
すいません、これ通じますか?」
お暇伺いは教えてもらったんだけれども、陸からなので通じるかわからないから、魔力珊瑚を握りしめてやる。




