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水辺

 


「いやいやいや、ちょっと待ってくださいよ!

 変わりすぎじゃないですか?」


 と、私はついつい言った。


 だってさ、水の上だもん。

 私は靴がずぶ濡れになった、っていうか、くるぶしくらいまで浸かった。

 ギリギリ靴の中に水が入るかどうか、っていう高さだったけど、どっちにしろビッチャリ今濡れた。


 そのせいか(?)そのくらいの深さだからまだ足がついているんだけども。

 先の方はどのぐらいの深さなんだか、よくわからない。


 これで、前と同じように砂しかないんだったら、底が見えてるから歩きやすいんだろうけれども。


 今は、持ってきて植えてしまった植物、島の花とかが水の下に沈んでいる。

 待って待って?

 地面すら陥没してない?


 どいうこと?


 水中花になってるけど?

 萎れないの?

 枯れないの?


 どうなってんの?

 魔王のお膝元だからミラクルが起こるの?


 いやいやいや。

 一部、湿地帯になってたけど、これもうもはや水辺じゃん。

 完全に砂漠じゃないじゃん。

 おかしいじゃん。


 どうなってんの?

 雨だけでこんなこと起こるの?






 えー!ひどくないー?!


 自分が

「オラ、飲め!飲んで忘れろ!新しい女を作れ!俺の酒が飲めねぇってか」

 って、飲ませたんじゃーん?


 そりゃー僕の?

 あの吹けば飛ぶような繊細なボディとは趣が異なるけどー!





「いや、この地形とかの……え?

 何?

 何それ?!」


 私そんな謎の酒乱オジサンみたいなことを?!

 女って何で?

 何の話?!


 何か、白服と主さんの話に似通っているな?

 ホントに私が?

 話の中身パワーアップしてるし。

 主さんは、白服から聞いたんだろうけど。


 私が寝てる隙に、二人で話作ったんじゃない?

 そうじゃない?

 そう、信じたい。



「あれは、ビールっ腹?

 日本酒ッ腹?」


 スッゴくどうでもいい疑問をスマ子がわざわざ音声に出す。

 気になる?それ。


 でも『いや、全身膨れてるから腹というのはおかしい』という、これまたどうでもいいツッコミが頭の中で生まれ、停止してた脳が起動した。



 ちゃんと見ると、魔王のすぐ足元まで水がきていて、地面が陥没はしてないことがわかる。

 ……外の砂漠にまでしっかり道があるんだから、何故水が流れ出して蒸発しないのか、むしろ不思議だが。


 雨で生い茂った植物に塞き止められてるのかな?


 砂漠の大岩の中には、水がウルルン。

 何だか変な状況。

 魔王、膨れちゃってるし。





 こっちおいでよー!





 行けないよ、水じゃん。

 成人してるけど聖人じゃないから、水の上、歩けません。





 大丈夫、大丈夫。

 出来るはずだよー!

 手伝うからさー!




 と言われる。

 えー、でもさー。

 もうびしょ濡れなので、そっちが気になるし、結構無理がある。

 難しい。

 やだ怖い。

 

 そう思うが、スマ子は貝王様にそうやってもらった、つまり海の上に立った経験があるから、体の魔力がその感覚自体を覚えてるはずだ、という。

 何だそれ?

 そんなの難しいよ。

 貝王様に色々やってもらったけど、自分で出来ないじゃん。

 教えてもらったって出来ないじゃん。


 そう思ったが、いいからやれと言われた。


 多分、このぐらいの水の上に立つんだけだったらそんなに難しいはずがない。

 逆にビビってる方が失敗する、と言われた。


 そもそも、落下したって危なくない水の上なんて、そうはあるもんじゃないから、と。


 確かにな。

 これ真水であって海水じゃないもんな。


 今持ち上がったとしても、数センチだよな。

 くるぶしまで濡れてるんだから、失敗したら確かに落ちるんだろうが、骨折ったりはしないはず。

 変なコケ方しなければ。

 コケるって言うほどじゃないかな?

 いや、たった3cmだって、私落下したらコケるかもしれない。

 運動神経不自由をなめちゃいけない。


「じゃあ海の上で試しますか?」

 結構怖いことを言われた。


 嫌です。

 結構、嫌です。

 本当に嫌です(カナヅチ)


 わかりました。

 頑張ります。


 よくわからないけれども。


 魔王からまだ遠いな。

 魔王のところに行くために、水の上に立つという変な練習をする。


 もうこれ、諦めて水中でもいいから歩いてた方が早くね?という感じだけれども。

 生まれたての子鹿を見守るような変な空気が出来たので仕方なく頑張る。


 こっち見ないで。

 注目されるの苦手なんだよ。

 逆に集中できないんですけど。


 私、人生で集中した事って、ちなみにあんのかな?

 自信はない。

 こらえしょうもない。


 いちいちスマ子に「下手ですね」とか茶々を入れられながら頑張った結果、確かに水の上は立てた。

 立てたんだけど、緊張しててどんな感覚なんだか。

「このまま維持してください」って言われてもどうしていいんだかわからない。


 すっごい緊張する。


 北国に生まれたのに、スケートが苦手で毎回とてつもなく疲れてるみたいな感じ。

 地面に歩いて立っていることが、どれだけ楽かという。


 一回コケて、全身びしょ濡れになった方が怖くないんじゃないかな?

 でも、植物がある。


 必死に下向いてて、もう首が痛いのとか緊張して体がゴリゴリなのとか、そういうのも相持って、花がこちらを向いているのが、人食い花が罠か何かが口開けて待ってるように見えて怖い。

 もう、それですら、怖くなってしまった。


 なんかさ、ここに元々植物は確かに雨降った後あったけどさ、その前から枯れ草みたいのだったらあったけどさ、あれは私が持ってきた花だよね?


 あんな、でっかい花あったっけ?

 もうちょっと、山野草に近そうな感じだったんだけど。

 スーパーにもちっちゃい鉢植えあったけどね。

 なんか、もうちょっと、小ぶりな花だった気がするんだけど。


 なんだあれ?


 なんか色々進化しすぎじゃね?

 魔王のお膝元だから?


 もしかしてサボテン魔王って、砂漠の中で水を保有するだけあって、水の性質が強いのかしら?


 魔王にも性質ってあるの?


 ここ、風と砂ばっかりだけど。

 マナは風と砂に寄るんじゃないの?


 まあんなにブックブックになってるしね。

 いや、あれはサボテンだから?

 もうどうなってんの?

 魔王ってわけわかんねぇど。


 魔王のお膝元だから?

 この時点わけわかんわ。


 何で私は人類側にあんなここによく来ます、みたいな言い方をしちまったの?

 もうなんか今日、本日をやり直したいんですけど。

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