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質疑応答

 

「は、はい?」


 返事のつもりが疑問形になった。


 何げに初会話。

 隅の人、話さないから。


 一歩だけ前に出て、隅の人は私に言った。


「すみません、お客様は私のことは何と認識していますか?」


 は?

 人類。

 他に何が?


 一瞬本気でそう答えそうになったが、声に出そうとすると、変なことに気がついた。


 ……それは、人類以外としか基本、会話しないやつから出るセリフだ。

 一歩間違えたら、ぬいぐるみに囲まれた部屋に閉じこもるヤバいヤツみたいな。


 違いますよ。

 普段の会話が巨大イカとか貝の城とか。

 うん、言わなくて良かった。

 ここにいるメンツはもう、両方知ってるだろうけど。



「ご、護衛さんとか?」


 とりあえず、無難に答える。

 隅の人、いつも真面目そうな真顔ばっかりだったのに、ニコニコしている。


「そうですね。そういう役目を担うこともあります。

 他には?」


 他?

 知らんよ。

 私この屋敷のモンじゃないし。

 何聞いてんの?

 何を聞かれてるの?マジで。


 は?という顔をしているんだろう。私は。

 何故か隅の人は、それを楽しそうに見ている。


「認識、というのがわかりづらい言い方でしたね。

 名乗っていなかったかと思いますが、私のことは、頭の中で何と呼んでいましたか?」


 聞かれちゃったーー!


 えー?


 ん?どうぞ、と笑顔で自分を指さす、隅の人。

 押しが強い。

 ゴリゴリ強い。


 キャラ変わってんじゃん、っていうか話すの初めてだから、そんなこと言われる筋合いないだろうが。

 やっぱり話しもしないのに、勝手に決めつけちゃいけないね。

 って、そんな教訓めいたこと考える余裕もないね。

 他に何か、嘘八百考える間もないね。



「名乗らなかったのですから、お気になさらず。」


 笑顔で押しが強い。

 サチコ、勝てぬ。


 そもそも私の人生で押して勝った経験少ないが。


 しかし、それはそれで勇気がいる。

 助けてー、○ーンパーンマーン!


「…………す」


「す?」


「……(すみ)(ひと)。」



 大爆笑。


 大層、遠慮なく大爆笑。


 何故聞いた。


 後ろでも何か、ソワソワする感じがして、見たら、主さんも顔を伏せてプルプル震えていた。


 何がそんなに笑えるのだ?


 そんなに?

 どっかで名前呼び合ってた?

 何で?


 だってそんな、我々ズブズブの関係ではない、みたいな感じだったじゃん?


 廊下の方では、片側だけ開く扉から見えたようで、通り過ぎ際に女性が驚いた表情を見せていた。

 覗き込んだりせずに、そのまま通り過ぎたけど。



「す、すみません。

 では、我が(あるじ)は?」


 涙目で震えながら、隅の人は手のひらを上に、主さんをさす。


 えー、無礼なのかわからんが。


「……(あるじ)さん、です。」


 頑張って言ってみたが、変化は起きなかった。

 つまり、変わらず笑われてるだけだった。


 何だよ?

 もー、何なんだよ。


「で、では最後に、」


 隅の人、震えながら頑張って続ける。

 こうなりゃ、あと一人だね。


「さ、先程の、白い服の若い男性は?」


 声も震わせながら、途切れ途切れ、問われる。

 もうコイツが一番答えやすい。

 さっき自分で聞いたから。


白服(しろふく)です。」


 そのまんまじゃん。


 私は一人憮然としながら、笑いが収まるのを待っていた。

 もう帰っていいですか?




 ようやく説明されたことによると、次手は、次代の代表者、またはその時点での組織代表の二番手。

 白服は、各屋敷などの高級使用人、という感じだった。


 そうか。

 そんなん知らなかったし。


 ってか、それを知ってたとして、白服(人物)を、次手として紹介されてないんだから、どのみち知るわけない。


 別に笑われてるだけで「僕を知らないだってぇー?」なんてキャラじゃないから、いいのだけど。

 でも、笑われて良い気はしない。

 お宅らが引き止めたようなモンなんだぞ。

 要件ちゃっちゃか、話しなさいよ。


 世話になってるから言わないけど。

 貝王様が財宝持たせた時点で、気にしなくて良いかもだけど、私自身が恩を返したんじゃないからな。


 面白くはなかったが、先に白服が心配だったのだ、と二人に謝られた。

 それ言われたら、何も言えない。


 結局、本題までが長かった。

 そして本題は、白服の姉だった。


「ご存知ですか?」


 と聞かれても。

 何と言っても嘘になりそうな。


 知ってると言えば知ってるし、知らんと言えば知らん。

 我ながら曖昧だけど、会ったこともないし。

 魔力の説明したくない。


 なんかヤダ。


「私自身は知りません。聞いただけですから。」


 これでいこう。

 全然知らなかったが、魔王によって白服の姉だと知った。

 だから、自分は聞いただけ。

 よし。


 ついでに墓も知らんが、砂漠が大変だったから、白服と姉が縁がある()()()場所に、花をあげに行こうとしただけ、と。


 花と聞いて、主さんは少し反応した。


 実は主さんに、砂漠に植えられる花がないか聞いて、あったら欲しいと頼んでいたのだ。

 全然気候が違う、と思うから、島にある花を植えようとは、その時点では考えてなかったから。

 もう植えたけど。


 でもあの場所の水も一時的だろうし、すぐに干上がるかもだから、花の話はなかったことにしなくてもいいかと思ってる。


 白服の過去については、本人から聞いて。

 重いから。

 私が勝手に話せないから。

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