いじめ疑惑?
白服が止まり続けて何も解決しないし、主さんもちょっと驚いたような表情を見せた後だったせいか、誰かが白服を連れて行った。
白服のそばの角から、ヒュッと腕を引っ張って連れて行ったみたいなので、誰かもわからなかった。
私は主さん一人になったので、主さんに案内された。
廊下が少し狭かったので、少し広くなったところに誰か待っていた。
ちょっとだけ心配顔だ。
すいませんね、護衛さんつけないで歩かないんでしょ?
ごめんなさいね。
ご自分の屋敷だけど。
ここ絶対、普段は客が入んないような区画だよね?
なんであんなところに入ったんだろうね?
私を連れてった張本人が黙っててすいませんね。
私も、どうやってあそこに入ったかわかんないからね。
すいません、としか言いようがないんだよね。
ちなみに、白服のことはをいじめた覚えがないんですけど、すいません。
ただの言い訳のつもりで来たんだけどね。
でも、なんかちょっと、気を効かせたくらいのつもりだったんだけどね。
花のついでの話ね。
逆効果だったね。
いじめに来たんじゃないよ。
それはスマ子だから。
お屋敷側からしたら、一緒だろうけど。
なんか誘拐してたみたいな感じになったけどね。
一昨日も。
違うからね?
あいつ、別に呼んでなかったからね、私は。
結果として、白服がいたから、何であそこに行ったのかが判明したわけだけども。
それにしても。
アイツ、心の傷になってたのか。
私のことも、そういえば貝王様に死ぬ死ぬ言ってたな。
何でだよ、殺すな思ってたけど。
自分のせいでお姉さん死んだと思ってんのかな?
覚えてたのか微妙そうなのもあるし。
なんか勘違いもありそうだが。
でもな。
こっちは実際に会ったことないから、ツッコミづらいんだよな。
魔力でわかったことだけを鵜呑みにするわけにはいかない。
いや、別に特に疑う気はないんだけど、SNSやテレビで知った気になるのと、自分で経験したことは別、みたいな感じだ。
なんか、そういう境目がわかるなくなるのも早そうだな、と自分で感じる。
でもそれは、別のことだ。
その認識を忘れちゃいけない。
彼女の願いは弟の幸せ。
それは、白服にしか叶えられない。
案内されて主さんについて入った部屋は、前に入った応接室ではなかった。
あそこがいいっていうわけじゃないけど。
何っにも、入るまで気づかなかったな。
もうちょっと用心した方がいい?
この部屋はなんていうか、物があって本が溢れている、ハレとケでいうと、ケみたいな感じ。
「申し訳ありません。
お客様を入れるような部屋ではないのですが」
と言われた。
いやいや。
ちゃんと、なんかこうソファーとローテーブルという応接セットみたいなのがある。
これって普通に、自分の生活でも使うのかしら?
主さんの私室みたいな感じ。
ほとんど書斎に見えるけど、書斎に応接セットってあるんだろうか?
これなんだろう?
もしかして、いじめの取り調べ?
やっぱりいじめ扱い?
誘拐してあげくにお前、うちの子をいじめやがって、みたいな感じ?
あら、困った。
どうしよう。
スマ子にタッチしたいが、さすがに人類として逃げられない。
それは無理だ。
ていうか、なんかどんどん予定がずれていく。
ちょびっと寄って、しゃっしゃっと向こうに行こうと思ってたのに。
こちらの困惑をよそに、主さんは私の背後に声をかけた。
「下がっていい。」
「いえ、できません。」
隅の人の声って、あんまり聞いたことないからな。
なんか思ったより、ゴツっとした声というか、でもちょっといい声です。
低すぎない。
だから何だ?と思って後ろを見ていると、
「女性と2人きりにするわけにはいかないでしょう?
こちらを開けておきます。」
と、扉を開けてその中央で仁王立ち。
どうした?
何、この緊迫感。
私には何が問題なんだか、さっぱりわからない。
主さんは止まってじっと隅の人を見ている。
何、この見つめ合う空間。
私、別に退出してもいいんですよ?
いじめに来たわけじゃないですから。
別にね。
白服が「何も持ってくものないよ~」って言うんだったら、それでいいから。
向こうに行くから。
あのパリピ魔王が恋しくなる日が来るなんて。
恋しくはない。
つーか、早く逃げたい。
主さんが負けたのか、ソファーに座った。
えー、隅の人、頑張れよ。
とりあえず私も向かいに座る。
ちゃんと「どうぞ」と言われたのに、往生際悪く、まだ立ってたので。
「さて、当家の次手のことですが、」
と、主さんが話し出した。
じて?
今、なんか聞き間違えた?
私がポッカーンとしているのに気づいたのか、主さんが言い直す。
「当家の次手です。」
直されても、わからなかった。
えーっと、白服の話?
「白服ですか?」
聞き返したら、主さんが驚いて目を大きくした。
「当家に白服は何人かおりますが……」
ジテ?
お屋敷を歩いてる時、そんな風に呼び止められてたっけ?
後方から吹き出す音がした。
体ごと向いていいのかわからず、何とか首を向けて見ると、片方だけ閉めた扉にもたれて、隅の人が笑っていた。
笑顔、全開。
片方閉めてんじゃん?とか、あと開いてる片方に立つのは通せんぼか?とか。
色々と疑問はあるが、なぜ爆笑?
笑い震えながら、片手を上げる隅の人。
許す、と主さんが言う。
ありがとうございます、と隅の人がこちらを向いた。
発言は挙手制?
学校?
国会もそうか。
あれは形式だけか。
「すみません、お客様」
と、隅の人は私に声をかけた。




