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寄り道

 

 女の子がお参りしてた過去には続きがあって、毎回祈ったあとに小さな手で水を出して、サボテンにあげてた。


 お賽銭かな?


 こっちの祈りのルールは知らないけど。

 神殿に献金、という話を主さんもしてたから、そう大きな違いもないだろう。


 魔王が花をあげたかったり女の子を気にかけてたのは、コレが主な理由かな?

 子供好き?



 ゾウさんもまだ帰ってこないし、魔王と色々な話をした。


 マナ少ないから、魔力持ちが生まれてこず、動物が大型化して久しい、とか。

 決まった期間でもないけど、たまに雨がふる、とか。

 前に見たこともない木がこの場所に生えて、ぐんぐん大きくなって、倒れてあっという間に土に還った、とか。

 私が初めてこの岩の破れ目を通った時に勘違いしたように、旅人が喜びに満ちた顔で駆け込んできてガッカリした話。


 色々。


 面白かった。


 勝手に弁当持参で来たので(ガーデニングとかしないので、どれくらい時間かかるかわからなかったから)魔王が『いいな〜いいな~』と騒ぐので、食べかけを供えて見たが、何もおきなかったり。

 食品から魔力で栄養分を吸収しようとしてみたんだって。


 砂が入んないうちに食べていい?

 心境的にはかなり待った。



 ゾウさんはあんまり動かないのも良くないから、お散歩に行くように促して、今日ようやく外出させるのに成功したそうだ。

 そうか。

 親バカ、頑張ったね。


 そのゾウさんも夕方には戻ってきた。

 新しい植物にテンション爆上がりだったが、安全性もわかんないし、魔王と2人ががりで止めた。

 本能には抗えないようだったが、スマ子の「私にまかせてください」の言葉で、画面をゾウさんに向けてたら、どんどん静かになった。

 スマ子、何見せたの?


「ゾウさんを守るためです。」


 抑えきれないドヤ感はあるが、助かりはした。

 でもホントに、何見せたんだろう?

 なんかコワイ。



 小さな泉みたいのまで出来ていた。

 雨でできるか?コレ。




 水は必要だからね〜。





 ん〜、謎がとけなさそう。


 そういえば、調停者。

 魔王に聞いたが、何ソレ?だった。


 え?

 白服用語?


 気になるのにー。

 知るためには会いに行かなきゃいけないのか。

 それはちょっとなー。


 でも、今日ちょっぴりお屋敷に寄っちゃったんだよね。

 挨拶もしてない。

 主さんに頼み事してたのに。

 明日言い訳に行かなきゃいけないのかなー?

 今日はもう夕飯時だから。

 主さんは主婦じゃないけど、夕飯ねだりに来たと思われるのもヤダ。


 も~、スマ子。


「ちょっと間違っただけじゃないですか!」


 それで一番、再会したくない相手のトコ行ったの?


「不覚!」


 お前、不覚だらけじゃん?


 女性好みの、音楽とか映像ばっかり流すわけだな。

 子供ってゲームとかに飛び付くのかと思ってたけと、分解したがるんだ?


 んー、明日一応、お屋敷寄ってからいくか。

 オッス、お前の姉ちゃんに花あげにいくけど何か持ってくか?みたいな。

 主さんになんかお邪魔してすみません~、みたいな。

 よし。

 屋敷に行くのが目的ではない。

 そう強調しよう。

 別にこの場所に日参するつもりはなかったんだけど。



 例によってイカさん先生と貝王様に報告して。

 翌日現れた危視子(きみこ)さんにごめんなさいして。

 ぼっちマーケットで生花の切り花みつくろって。


 いざ。



「あー!シュマト!」


「ヤベッ」


 一瞬で視界が明るくなって、また一瞬で暗くなった。


 ヤベッて言ったな、今。


「スマ子」


「緊急避難です。」


 さっきのは(多分)主さんのお屋敷の庭で、昨日の分解の男の子が、落ち葉掃きに使うようなホウキで庭をはいていた。

 今は室内で暗い。

 勝手に入ってしまった。

 でも一番大事なのは。


「ここ、主さんのお屋敷だよね?

 別の建物じゃないよね?」


 そこ、重要。

 大変なことになるよ。

 不法侵入も微妙だけど、それなら謝ればいいし、きまづいだけで済む。


 バタバタバタ、とかけてくる音がして、大きな音をたてて扉が開いた。

 やっぱり白服だ。


 前は報告を聞いて、という感じだったが、多分今は魔力を感知して場所がわかったんだろう。

 私も前より白服の居場所がわかりやすい。

 別に知りたいんじゃなく、お屋敷にくると、何かいる!と違和感を覚えるというか、なんとなくいるのがわかる。

 最も蚊にさされた夏に、部屋に入れば蚊がいるかいないかわかるようになった時みたいだ。

 アレって意識し過ぎでそこにばっかり集中して、聞こえないけど超音波感じるようになったんだろうか?

 謎だけど。

 あの時より年とったから、どのみちもう不可能だろうけど。



 昨日考えた通り話そうと思ったのだが


「すいません、ワザとじゃないんです」


 よっ!というように手をあげて、言い訳になった。

 だって不法侵入だし。

 庭の時も最初はそう思ったハズだったが。


 白服、ため息。


 あー。


「えっ〜と、魔力でここ、わかった?」


「庭園は同時に声がして。

 こっちは感覚で。」


 魔力、と口に出すのに抵抗があるのか、白服は感覚、という言葉を使った。

 感覚だけどさ。

 まぁココも街の中だ。

 私みたいにうっかり口に出してたら、次がないんだろう。

 ごめんよ。


 ってか庭も、ああやって声をあげられてたら危険じゃない?

 あらー、困るねぇ。

 人の社会には、ここしか当てがないんだが。



「こちらです。」

 白服がこの屋敷の人間としての対応に切り替わった。

 こちら、って主さん忙しいだろ?

 そんなに対応してくれなくてもいいんだが。


「いや、あのちょっと寄っただけだから。

 忙しいだろうから主さんに時間つくってもらわなくていいんだけど。」


 何を今更、と言わんばかりの冷た〜い目で、顔で、白服が振り返った。

 ひどい!


「お宅の姉ちゃんに花をあげに行くんだけど、なんか持ってく?」


 白服がピタッと、止まった。

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