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怒声

 


「このバカ!」


 目覚(めざ)(がしら)の怒声だった。


 結構、本気で怒鳴られている。

 目が覚めたばかりで、はっきり覚醒していなかったから、震えなかっただけかもしれない。


 いや、結構怖い。

 結構しっかり怒鳴られた。

 おかげですっぱり目が覚めた。


 目が覚めたら、白服のドアップだった。

 またか。


 そして完全に怒り顔である。

 すっごく怒っている。

 何で?


 お前のどうやって私の部屋に入った?

 壁をどうした?

 貝王様が、BがLだから通過なのか?

 どうなってんだ?


 ていうか、ここ、どこ?


 白服にビビっていたので、あまり見回さなかったが、気がついたら全然知らない部屋だった。

 ていうか、朝。

 おかしいな、何が起こった?




 なんか白服はグチグチえーんえーん泣いているから、サボテンと持っていただけのような気がするんだが。

 って、その後何が起こったんだっけ?

 えっと……。


「 貴様はあの魔王と変なことに盛り上がって、そのうち大雨をあの一帯に降らせたんだ。」


 え?

 雨?

 それ、私が?

 あのダンシング土偶と盛り上がって?

 雨乞いの舞なんて、そんなんできないよ?

 いや、本当にね。

 ダンスが授業とかの、世代に生まれなくてよかったわ。

 いや~、強制でもなければ近寄らないから、ますます現代と乖離していくのか~。

 女子高生とか、みんな踊り出してtiktokとかにあげるんでしょ?

 ティックトックであってる?あれ。

 動画であげるんでしょ?

 要はSNSとかにね。

 ついてけないわ~。

 おばちゃん、こないだ試したらラジオ体操も息切れたわ~。


 それなのに雨乞いの舞とか(笑)

 無理無理~。



「命の水だ、だとか、よくわからないことを言って。

 水が生み出せるんだったら酒も出せるんじゃないのか!だとか。 何だのかんだの。」


 えー、そんなことしてないよ。

 私が酒乱みたいじゃん。


「 やった。

 完全にそれで踊っていた。

 1人で酒を手から出して、あげくに『それでも世界は回ってるー』と叫んでいた。

 あの魔王と、大層気が合っていたぞ。」


 すんごい、怒られている。

 腕組みして仁王立ちして見下ろされている。


 おかしいな。

 部屋の向こうの、廊下がわからんが、なんか笑い声が聞こえるんだけど。

 誰かこっちに助けに来てくんないかな。

 なんかガチ怒ってるんですけど。

 怖いんですけど。

 白服の体で、部屋の出入口も見えない。

 でも、忍び笑いの声が漏れてくる。



 私そんなことやってないと思うんだけどな。

 しかし、頭の中に映像が流れてくる。


 ニューイヤーカウントダウンのニューヨークのタイムズスクエア前くらいに盛り上がっている。

 ビンや缶から酒やジュースが飛び出る代わりに、私の手から水が出て時々光る。

 小規模のチョロチョロ噴水みたいのが。

 南京玉簾より小さい弧しか描けてないが。

 両手を上げて動いてたかと思えば、地元の盆踊りっぽいものに繋がっている。



 …………。


 白服の方がさ、魔力持ち歴長いんだからさ、私の記憶を作ろうとして映像流してるんじゃない?

 これ、私の魔力が反応して流れてきてるんじゃ、ないんじゃない?


 白服が言うには、私はあのダンシング土偶と気が合って、2人でどんちゃん大騒ぎをしていたんだそうだ。

 酒も食い物もないのに?

 水の魔力のせいか、私は酒を出したという。

 どうやって?

 酒なんか出せるのか?

 そんなんやったこともないし、考えたこともないよ。



 でもそんなことやったら、私大儲けできるんじゃないか?

 そうでもないかな?

 昔の水の安全じゃないところは、水の代わりに酒飲んでたりするって言うからね。

 酒の特別高いものだったら儲けもあるだろうが、飲んだこともないから無理があるだろうな。

 ところでさ、本当に酒が私から出せるって、何?

 手からならまだマシだけど、体から出てくるなら飲みたくないよ、そんなの。

 それに何酒?

 日本酒とかあんまり飲んだことないから、わかんないんだよね。

 でも日本人だからね。

 米でできてるからね、私の体は。


 で、何酒?って聞ける様子じゃねー。

 めっちゃ怒ってるわ。

 こいつ本当に怒ってるわ。


 なんだよ。


 ていうか、ここどこ?

 主さんの屋敷か、やっぱり。


 私、食べるものないと酒飲めないから、やっぱり誤解じゃないかなー?

 食べ物なかったでしょ?

 あ、だから酔って覚えてないのか?



「あんな一気に魔力使ったら死ぬとは考えなかったのか!」


 そんなん言ったってさー。

 アレと気が合ったと言われても。

 浮かれられるポイントが何一つとしてないじゃん。

 ホントに~?


 怒られ過ぎて現実逃避も出来ぬ。

 怖いな~。


 今まで呆れた顔とかされてもバカとか、はっきり言われなかったのに。

 一応、心配されてんのかー?



「その辺でおさめろ」


 にこやかに主さん登場。

 廊下のクスクス笑いも聞こえなくなった。


 白服は、口をへの字にして下がる。


 そうだそうだ、魔力とか大声で言うんじゃないよ。

 お前が野良の魔力持ちなのは、この屋敷では公然の秘密かもしれないけど、私は違うんだからな。

 ってか外まで聞こえない?


 あと、私これ、起き上がるべき?

 何着てるっけ?


「そのままでどうぞ。

 体調の優れないなか、すみません。」


 体調は特に違和感もないが、とりあえずそういうことで。


「すいません、失礼します。」

 怒鳴られてビビって動けなかったから、むしろ伸びーとしたいが。


 白服は部屋に入ってきた女性に連れられていき、部屋の入り口そばに、また別の女性2人が立っている。


(T-T)

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