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白いゾウ

 

 ゾウ?


 ゾウって灰色じゃないんだ。


 砂漠にゾウいるの?

 私、視力おかしくなってない?大丈夫?



 実際には見たことがないので、どんな感じなのかわからない。

 そういえば、田舎者なせいか東北なせいか、学校の遠足でさえ動物園に行ったことないな。

 私は今、東北の民を敵に回したのか?

 違う、そんなつもりはない。

 動物園とか実は少ないだけだ。


 っていうか、そもそもゾウか?


 自然とうなだれて地面ばかり見ていたが、気配を感じて、また視線をあげる。


 気配どころじゃなく、ゾウはかなり近くまでいた。

 ていうか気配どころじゃなく、ノシーンノシーンと、歩く度に揺れている砂の地面。


 砂なのに?

 揺れるの?

 どうなってるの?

 え、何ゾウって草食動物じゃないの?

 実は、見えないけど牙が出てるの?

 それゾウじゃなくて、マンモスになるんじゃないの?


 私は食べても美味しくないよ。

 アリにも言ったけど。

 いや、言ってないっけ?

 あなたはアリじゃないけども。

 ん?

 何だっけ、どうしたの?

 トトロなの?

 えっとトトロはえーと……。


 混乱していたが、ゾウは私の近くまでくると、鼻を私の方に向けた。

 ほとんど、顔の先2メートルぐらいに。


 そしたらシューっと水を吹きかけた。

 ような気がする。


 でも水じゃない。

 濡れてないし。

 でも冷や~、ってしたんだよな。

 でも濡れてない。


 クーラーの風みたいな感じじゃなさそうだったし。


 あれ?どういうこと。


 そして自分を見回して気がついた。

 体が軽い。

 頭がすっきりしている。

 水かけられて?

 どういうこと?



 とりあえず、頭の上からかけていたパーカーを取って立ち上がった。

 念のため、ゆっくり立ち上がったのだが、フラフラもしない。

 よし。


 日に当たるのも困るんだけどね。

  なんかこう、ムシムシして、また熱中症になっても困るからね。

 砂漠の風がすごい強いけど。

 砂粒はビシビシ当たって、痛いけど。

 わざと蒸して暑い環境にするよりはマシかな?くらいにはなった。


 元気になりすぎな気がする。

 あまりにも一気に。


 どういうことだろう?

 初、カコドの時は、あれは熱をとるっていう星の人がいたからだけど。


 えーと、助けに来てくれた感じ?

 

 大きい動物は一応怖いが、あまり忌避感がなくなった。

 さっきはビビったが、ゾウという比較的丸みを強調するフォルムなせいか、むしろ不思議な安心感が。


 多分、イカさん先生の影響。



 ゾウって目を合わせちゃダメなんだよね?

 はっきり、目が持っているんだが?


 真っ正面から、きっぱり見つめ合ってるが?


 あらら~。

 やっぱり向こうの世界とは違うのね。

 っていうかそもそもゾウでいいのか?


 近くで見ると、砂のように見えた色はかなり白っぽかった。

 風で砂粒がバシバシ当たり続けてるということは、白いのかもしれない。


 白いゾウって伝説だけじゃなかったんだな。

 存在するんだな。


 それもこっちの世界だと珍しくないのかな?

 白鳥みたいに白いほうが一般的だったりして。

 白鳥は進化してそうなったんだっけ?

 白鳥化?白化?


 ま、いいや。

 数分で環境によってゾウだけど色が変わります、とかじゃなければ驚かないだろう。

 気味(きみ)(悪)()さんみたいに、徹底したキモいコンセプトでもなければ、言及するほど興味ないし。


 そんなことより、砂風のサンドバックになりながら見つめ合うこの空間をどうしよう。



 実は魔力持ちで、魔力で話しかけられてた?

 いや、感じなかった。


 スマ子は変則的として、私にはカコドの面々のほうがイレギュラーな存在。

 普段の会話は、イカさん先生と貝王様。

 友達のつもりなのに、全っ然会話しようとしない鬼深子(きみこ)さん。

 だから、バリエーションは少ないが、魔力会話は慣れている。


 おい白服よ、あんたがチョウテイシャさんと名付けた方がお困りだぞ、接待しなさい。待っておられるじゃないか。

 仕方ないので白服に向いた。


 白服は目が合うと、1つため息をつき、ゾウに向いた。

 ……どんだけ私の頭の中は垂れ流し、いや発信してるんだ?

 これでも意識してるんだけどな~。ちと困るな。


 しかし、白服が歩み寄るとゾウは、嫌なのか2、3歩、ズリズリと後づさる。

 ノシンノシン、だけど。

 あれ?白い仲間だよ?サイズ違うけど。

 ちゃんと白服は、いつもの白い服だ。

 でもゾウはイヤイヤするように、鼻を左右にふっている。


「嫌われてますね」

 スマ子、そういう見ればわかるのいいから、ほんと。

 お前の知識でなんか役に立つのないの?


 ゾウの、巨体のわりに小さく感じる黒い目に、迷惑げな色がある。

 見つめ合ってた時は、つぶらな瞳、とか思ってたが。


 うーん?

 男嫌いの女の子?

 ゾウとして大きいのか小さいのかすら、わからん。

 縦の長さで2メートル以上多分あるけど。

 動物の体長って、どこを言うんだろう?


ご主人(マスター)が近づいて話してあげたほうがいいんじゃないですか?」


 そうなの?

 ゾウに近づいていいのかな?

 白服はあっさり行ったけど。

 いや、ヤツは主さん以外どうでもよさげな空気を纏っている。


 私が近づくと、下がった分戻ってくるゾウさん。

 忌微子(きみこ)さんより、よっぽど友好的である。


 何だろう?

 何かを感じるが、魔力持ちではやっぱりない。


 触れるくらい近くなると、ゾウさんはひょっと鼻をあげる。


 いいのかな?とやや躊躇しながら鼻の丸みを撫でてみた。

 ざらざら~と一瞬感じるがその奥にしっとりとした感触。


 するとその時、変化が起きた。




 おみずくだしゃい




 しゃべったーー!

 魔力持ちじゃないのに、魔力で喋った。

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