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この世界はキモさと怖さが比例している

 

 つい謝って、白服を責めそびれた。


 いや、後で言う。

 いまは怖くて声も出せない。


「ヘルプ、ミー!」

「スマ子!大声出すナ!」

ご主人(マスター)静かにしてください!」

「お前がな!」


 ついつい大声の応酬になってしまったが、気付くとシャカシャカというかカタカタ、というか変な音がしていた。


 何?

 他にも虫いるの?


 不吉な予感しかしない。

 良い音でもないし。


 セミの鳴き声が林の中で四方八方からするように、空から反響しあって輪唱のように聞こえてくる。

 自分たちの身長より高いものは近くにないのに。

 それも、だんだん強く。


 信じたくないが、認めたくないが見回すと、辺りの景色が黒っぽくなったように感じる。


 虫たちが一斉に這い出てきている。

 目が近くなって黒く見えているようだ。


「ほらな」


 ほらな、じゃない!


 白服の声は低い。

 警戒しているのか、うるさいのか。

 音は、どんどん大きくなる。

 数が多すぎて自然と音が出るのか、皆ー大きいエサあるよーの呼びかけか。


 スマホがカタカタ震えているが、特に何か状況を打破できる連絡がきてのバイブではなく、スマ子の『ヤバイヤバい自分だけでも逃げないと!』というビビリだけが手から伝わってくる。


 もしやと思うが私と同じように垂れ流しなのか発信しているのか、白服も何やら呆れたような目で、私の手元を、スマホを見ているようだ。

 スマホの役目は電波を受信する、発信するだからね。

 他の機能があんまり、ようわからんが。


 ワンチャン、本当に襲われそうになったら、

「ほ〜ら、世にも珍しいマナと魔力の塊だよ」

 ってスマ子を投げたら、このアリたち代わりにそっちに行かないかな?

 魔力持ち以外には意味がない行為かな?

 どうなんだろう。

 マナを感じ取ったりするのかしら?


 こういう作戦ってなんかあったよね。

 ギリシャ神話だったっけ?日本神話だったっけ?



 現実逃避している間にも、音を立てて一番近かった岩みたいのからアリ(のような生き物)がやってくる。

 近づいてくると、残念ながらわかる。

 こいつら顎を鳴らしてる。

 その音だ。

 何これ?

 よだれ垂らしてるような感じ?


「は〜大きいエサだな、たまらないぜ!」

「今夜はごちそうだね、とうちゃん」

 みたいな感じ?

 堪忍して。


 スマホの方が多分きっと美味しいよ。

 知らないけど。

 きっとガジガジすると思うけど。

 噛み応えあるんじゃないかな?

 私が図書館の住人じゃいられなくなるから困るけどさ。

 姉ちゃんの携帯に移動してからが良かったな。


 スマ子に、その思考を読み取られないかと思ったが、揺れが激しくってそれどころではないようだ。

 お前、そんなに強く揺れたら私の手から落ちない?

 まあいいんだけどさ。


 ここでさすがに

「現地人だからきっと白服の方が美味しいよ!」

 とか言うほど、人でなしには私はなれない。

 でもきっと、現地人だから向こうの方が美味しいと思う。


 白服の、こないだの魔力の威力を見ている限りは、全部見える限り襲われても燃やし尽くせ そうじゃない?と思わなくもないんだけれども。

 そうして、この辺の魔王がもしいた場合に、喧嘩売ったことにならないかしら。

 こんな環境じゃあ、この辺りで食われる方が当たり前になんだよね?多分。

 別にいいのか。

 ある意味、盛者必衰の理をあらはす、よね。

 食物連鎖当たり前?


 それとも今までこんな事なかった!かな?


 この時代じゃ、そうでもないのかしら。

 この時代……ちょっといつの時代なんだろう。

 向こうの世界じゃないからな。

 人間はだいたいどこでも行くんだけど。

 科学が進歩しないうちは無理か?

 でも古代から交易はあるし。


 近寄ってくるアリにそれどころじゃない。


 オイぃ、白服火出せ!

 攻撃じゃなくて、向こうが火に近寄んないだけならアリだろ?アリだけに!


 やはりビビリまくって声も出ないまま白服を見ると、私よりずっと近寄ってきているアリを見ている。

 冷静にも程があるだろ、お前の体は鋼鉄製か?!


 その時、ポッと白服正面のアリに火が灯り、一瞬でボッ!と音を立てて全身に燃え広がり消えた。

 残ったのは焦げた胴体だけで、すぐに崩れ落ちる。


 え?


 ……。


「今、燃やした?」


「いや?」


 何、シレっと嘘ついてんだ。

 お前の魔力だったじゃないか。


「いや燃やしたよね?自然発火じゃないよね?」


「こいつらはよく燃えるんだ」


 前科モンか!


「自分で攻撃すんな言っといて!」


「攻撃はしていない。近寄ると燃えるようになってるだけだ」


 嘘つけ!


 頭の中に、ゆうゆう街を歩く白服が浮かぶ。

 屋敷の中もたくさんの人がいるし、街も、荷を乗せたたくさんの動物がいる。

 そんな常時設定出来るわけない。


 お前〜、言っとけよ!

 ってか一番はじめにアリについて言っとけよ!


 怒る間にも、私の前のアリは距離を詰めてくる。

 顎鳴らすんじゃありません、ワたしオイシくナイあっちのミズハアマイぞ


 万事休す、というその時。


 もの凄い轟音が轟いた。


 何のどういう音かよくわからないが、汽笛を間近で聞いてしまったような、近くに雷でも落ちたのかと思うような、大きな音。

 ついでに言うと、真横で聞いた忌海子(きみこ)さんのシャウトのような大きさ。


 アリたちのような数で響く感じではなく、体が飛び上がった。


 それは私だけではなく、アリたちは音がおさまると、一斉に回れ右で巣に戻る。


 何?

 女王蟻の号令でもかかった?


 離れていくので、少し余裕ができて見回すと、遠いほぼ地平線のそばに何かがいた。

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