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布問題

 

「あの女は囚われているのですか?」


 え?囚われ人ってこんな怠惰なものなの?

 と、自分でしょうもないツッコミを入れる。

 いやこれ私の事だよ。

 何を自分で自堕落宣言してるんだ。


 白服、お前もしかして、異世界で怯える私が精神的に依存するように、貝王様たちに仕向けられてると思ってる?


 依存は……まるっきり依存してるけど。


 狼少女みたいのを想像してるのかな。

 カーサフクダは築年数はあるが、もちろん雨風凌げるし、追い焚き機能付きの風呂やエアコンがある。

 ターザンみたいな生活はしていない。

 多分、想像と全然違うと思う。


 精神状況は自分的にはそこそこ安定してるつもりだ。

 そこが片寄ってたら、確かに他人から見た意見の方が正しい場合もあるだろうけど。


 むしろ今は、どこからが面倒かける正当な権利か、転移補償ヤクザか悩みどころな最近。


 しかしあいつも魔力持ちだ。

 私がものすごく依存している、とか、頭の中が垂れ流しなのを見ていて知ってるんだろうか?

 どのくらい見えているんだろうか?


 全~部、私の思考を見てしまっているような感じなんだろうか?

 もう、そっからしてわかんないな。



 私が冷静なのかどうかもわからん。


 向こうだと、やっぱりストレスというのは、金以外は人間関係のストレスだから。

 働かなくていい。

 人がいなくていい。

 っていうのはやっぱり、解放された気分があるんだ。

 かなり。


 まあね、私は割と今さえ良ければそれでいい、みたいな思考だからね。

 結構そっちに流されちゃうから、心配されるのもわからなくもない。

 農家のおじいちゃん、ばあちゃん(故人)に見られたら、すごい怒られそうだ。

 ごめんなさい。

 今はよくたってね。先を確かに考えなかった。

 考えるの苦手、考えるの怖い、とも言う。


 こっちの世界だとやっぱり、魔王とは相入れないと思ってるんだろうか。

 でも主さんは、魔王はマナの調整役、みたいなことを言ってたしな。


 多分私が異世界人なのも知ってるよね。

 白服は主さんが大好きだもんね。

 ていうかもうこの状況下って、多分この船員の皆さん、少なくとも白服が魔力持ちなのも知ってるし、なんかこう……私が異世界人なのも知ってそうだよね?!

 あれ?そういう会話してたっけ?

 どうだったっけ?

 もう何もかも秘密がないじゃん。

 そこで結構違ってくると思うんだけど。


 まあなんて言うか、心配されてるのはわかった。

 確かにね、私が考えなしだったのを認める。




 まぁ社会がなきゃ無理、というのも確かだ。

 今ある服も布団もバスタオルも毛布も、劣化してただのボロ布になって使えなくなっていく。

 たった今、毅観子(きみこ)さんが汚髪でつついて穴をあけた美しい布のように。


 逃げたいのをこらえて端を持ってたなびかせていた船員さんは涙目だ。

  イカさん先生は一応、足先でポンと忌見子(きみこ)さんの頭を叩いた。

 メッという感じだ。

 だろうな。

 あれをむしろ保証した方がいいんじゃね?


 本当に物がなくなって切羽詰まったことがないから、どのくらいまで物が持つのかわからない。

 だってあんまり穴が開いたりしただけで、すぐ捨ててたんだもの。

 これで本当に使うのが難しいぐらいになったらどうするんだろう。


 その時、どうするのか。

 病気になったら……?





 お客様、あの人間たちと一緒に行きますか?




「嫌です」


 あ、本音が。


 考え中、貝王様が聞いてきたが、スルッと返事してしまった。

 本音だな。


 だってまだ人恋しくならないよ。

 これで人の中に行ったら、凄くストレスじゃない?


 まいっか。

 貝王様がちょうどうまく言ってくれたしね。

 陸に行った時は頼りにしている、って。

 多分そのために財宝を渡したんだろうし。


 なんかこれ、私も供出すべきだよね。

 何千円かで買った、真珠のネックレスならある。

 本物の真珠かどうかすらわかんないけど。

 本物でも偽物でも、何千円かするから、わかんないんだよね。

 割とテリテリで綺麗よ。


 どうしよう。

 偽物だったら貝王様を騙したことになるけど。でも貝王様にはなんか渡したい。


 今そんな状況下じゃないか。

 後であのネックレス、多分向こうの真珠です、本物か偽物か分かりません、って正直に言って貝王様に渡そう。


 まあ体調不良については、なんとかなるだろう。

 なんかあのスーパーにそういえば、横によく見たらドラッグストアみたいなのが、ちっちゃくついてたような気がするし。

 ついてなかったかもしれないけど。

 いいや。なんとかなる。

 今まだ街中に行くの、無理。

 精神的に崩れて体調崩したら、この議題、元も子もないからね。

 はい、そういうわけで、またも先送り。


 私が嫌です、と即答してしまったので、貝王様が向こうに話してくれた。

 まだこちらの世界のことについて詳しくないので、騙されたか騙されていないかなど考えるのが難しい。

 そのためこちらの島にいる。

 こちらで保護はする、という風に。

 ありがたい。

 うまい言い方ですね。

 人間嫌い、とかね。

 なんかどっかの森の賢者みたいなことを言い出しちゃったら、ちょっとね。

 こっちに同じ言葉はないだろうけど、同じ概念として『やべぇよ、中二だよ』と思われてしまう。

 世界中の本物の中学二年生には迷惑な話だ。


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