表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

102/235

火の子

 


 貝王様があちらに、火で焼くという提案をする。


 貝王様が会話を始めたことで、こちらに人々が振り向いたので、はっきりわかった。


 かなりもう、船の上に人が少なくなっていた。

 上陸した組がまた、海に潜ったから船の上の人々も海に入ったみたいだ。

 とりあえずは蚊から逃れられるからね。


  今船の上に残っている人たちは、役目上、船から降りられないのかもしれない。

 その代わり海に降りた(自ら落ちた)人と上に残った人で、滑車のように何度もロープをつけた桶で海水を汲んで、頭からかぶっていた。

  濡れ続けているくらいならね、とりあえずは。

 蚊が自分にかからないように、逃げてくからね。



 それにしても不気味だ。

 船の周辺にいる人たちは、そうして潜ったり水を船の上に送るために動いていたりするから、まだマシなんだけれども。


 2回刺されるはめになった上陸組の方は、なんか海面から鼻先だけ出すようにしていたり、口先だけ出すようにしていたり。

 完全に窒息しないようにしているんだけれども、目が血走っているくせに、妙に心頭滅却して自分を無の境地にたどり着かせようとしているみたいな。

 蚊に、自分は生き物じゃありません、とアピールしてるみたい。

 土左衛門みたいに浮いていたりする。

 結構気持ち悪い。


 別に心頭滅却すれば、蚊が寄ってこないわけじゃないからね。

 関係ないからね、多分。



 そのくせ、たまにギョロっと目が動いて、虚んc(キョンシー)かゾンビが通りすぎるのを待ってるみたいだ。

 怖い。

 だから目が血走ってるってば。



 火で焼く、ということの方法について詳しく聞こうとする主さんに、埒が明かないのかと思ったのか、貝王様が遮って白服に声をかけた。





 魔力持ち、お前が燃やしなさい。

 その魔力があるはずです。




 と。


 声をかけた白服は、ピンとこないのか、 鼻から上だけ海面から出ている状態で、目をきょろっと動かして終わった。

 息が苦しいからなのかどうなのか、頭が回っているようにあんまり見えない。

 しかもさっきまでと同じように、時折に潜ったり、蚊が来たのか何なのか、海中から水を跳ね上げさせて(多分、蚊除け)ほとんど遊んでるようにしか見えない。


 つーか、とりあえずしゃがんでないで海から出なさいよ。口までくらいは。

 話しかけられてるでしょ、貝王様に。

 何シカトしてんだよ。

 こいつ本当あれだな。主さん以外、どうでもないんだな。

 主さんが世界の王じゃないんだぞ。

 主人の質を問われるから、評判を下げるからそういう態度やめなさい。

 詳しくは知らんけど。そんな不文律。



 主人というものを持っている身で、他の人間の命令を聞くわけにいかないのか(人じゃないけどさ)そういう決まりでもあるのか知らないが、主さんは動揺することなく(多分、見た目じゃわからんけど)何か手で合図を送る。

 そうすると、あっさり白服はザバーっと水音をたてて立ち上がった。

 かなり距離あるのに、視力いいな。


 やっぱりあいつが、普通に立っていて鼻までくるような高さじゃないみたいだ。

 ますます傍目から見たら遊んでるみたいじゃん。

 蚊は深刻だけど。

 いや、私はそこまで深刻じゃなくて、忌々しいだけだけど。

 ……あの透明感の威力はあんまりよくわかってないけど。大丈夫じゃないのかな?  

 海水で洗おうなんて思ったことないから、わかんないけどさ。

 ま、いっか。今は自分の事じゃないし。


 で、立ち上がった白服は、呆れたことに何と言ったかというと。


「え?何ですか?」


 聞いてすらいないの?!


 いやいやいや、違うよね?これ。

 貝王様が話すのは音じゃないもん。

 しかもヤツは魔力持ちだもん。

 絶対聞こえてないってことないよね。

 頭の中に響いてんだからさ。


 オイ~!こっちは真面目にお前等のために議論交わしてたんだぞ!


 なんかやっぱコイツ嫌だわ~。



 しかし主さんは気にする様子もなく、貝王様も魔王なのに、海の中にフリーダムが多いせいか何とも思わないようで、あっさり続けた。





 お前の魔力の火で焼きなさい。




「は?」


 は?はないだろう、お前だよ!お前の話だよ!


 何が納得できないのか、ポカーンとしている。

 最終的に船に少し人が残り、主さんは小舟を出して白服のそばまで行った。

 それで、なんやかんやと話をしている。


 もうこれ以上、こいつらのために骨をおるの何かやだな。

 私、特に何もしてないけど。




 海辺の波打ち際で、みんなで取り囲んでいる中、白服が手から火をポッと出した。

 オー、とやや歓声があがる。

 ずいぶんスムーズに出したのに、なぜか自分に魔力があることを知らなかったみたいに、一人で驚いている。

 なんで白服が一番驚いてんの?お前の話でしょ?


 しかしなぜか知らないが白服は、そこでガクッと膝をおった。

 また海の中に、体が半分ぐらい入っている。

 何、うちひしがれてんだ?こいつ。

 なんか知らないけど早くしろよ。



 促されたり励まされたり。


 ホントに何?


 立ち上がった白服は、何の予備動作もなくあっさりと小さな火を無数に出した。

 映像越しだったせいか、私にも魔力の光がはっきり見えた。

 火は白服の魔力だと思うけれども、人を包む魔力は、もしかしたら貝王様がわからないように補助してたのかな?


 火は本当に小さく、パチパチパチパチして花火を見ているみたいだった。

 閉じてはまた開いて、みたいな感じで、遠目から花火をたくさん連発してるのを見てるみたい。

 まあはっきり言って、ホントの花火ほどキレイじゃないんだけども。


 私に水の性質はちょっとだけあるっていうことは、ああゆうことも出来るのかな?

 火より水の方が重そうだな。

 あんまり想像できないが、小さい噴水いっぱい、みたいな?

 それ何のためにやるんだろう。



 白服は、その1回きりであっさり感覚をつかんだのか、今度は船の方に一気に魔力で火をつけた。

 パン!と音がし、火が多すぎて光に見えた。

 焼いた様子もなく、光が消えると何事もなく船はあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ