海です。
この物語はフィクションです。
目が覚めたらそこは大海原でした。
『海の上の白い家とか昔憧れたよね~
(今なら絶対無理だけど。虫とか虫とかむしとか) ? 』
とか思いながら死んだのカナ~?
自分で疑問。
だって普通に寝て起きただけだし。
遮光二級といいつつ中々の暗さを与えてくれたカーテンを開けたら、それは爽快な晴れだった。
空は青く、空以外も真っ青。
雲もなく海と空の青さ全開。
つまり海しかなかった。
隣の駐車場とか斜め後ろの民家とか、交差点のお地蔵さんとか。
道路もバス停も電線も何もない。
海。
それだけ。
その遠い水平線は直線ではないようで、なんか、こう……地球は丸くて青かった。
寝て起きただけなのに疲れているのか、暫し海のきらめきを堪能し、携帯を探す。
もちろん寝る前に枕元で充電した通り、すぐマットレスの上にあった。
何も考えられない。
でも頭の半分では『東京水没』とか物騒な文字がちらつく。
人間って、考えようとしても何も出来ないのに自動で悪い想像は浮かび上がるんだなぁ。さちを。
素晴らしく晴れて明るいせいで、寝る前一番暗くした携帯の画面が真っ黒で見えず、ロックが外せない。
落ち着いて少し暗い影で目が慣れればなんて事ないはず。いつも慌てて家を出て、時間を見る時やってる事だ。焦ると逆にただ時間を浪費する。
わかっているし、急いでいないのにうまくいかない。
結局、またカーテンを閉じた。
……また開ける時、現実を直視出来ないんじゃないかと不安はあったが。
いつの間にか、携帯を両手で持っていた。
深呼吸して再チャレンジ。
あっさり今度は出来た。
とりあえず画面を明るくし
『 この世界の標準にバージョンアップします。
よろしいですか。
はい 』
はい、じゃないよ!認めないよ、私は!
『いいえ』はないのか。おかしいだろ。
しかし画面にはコレしか出ていない。
困ったら戻るボタンばかりタップしていたデジタル音痴の私は、なんとか他の選択肢がないかと焦った。
そして両手で持ってたのも悪かったかもしれない。
どこかの指が当たったのか、勢いでタップして感触に気付かなかっただけなのか。
『バージョンアップします。』
表示は切り替わり、その後すぐに時計を連想されるように右回りの水色の線が弧を描き、2、3週すると画面はブラックアウトした。