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53話 賢者 vs 下級魔法使い3

 バスラは斬られながらも、浮かべていた炎を、ロンに向けて放つ。

 ロンはそれを後ろにさがって避ける。

 100メートル以上、ロンはさらに後退する。


 ロンにかわされた炎は、虚空をそのまま突き進んでいき、しばらくすると消える。


 バスラの肩におった傷は、そこまで深くはなかった。

 致命傷ではない。

 痛みは走るが腕も動く。


 バスラは左へ数歩移動する。


 ロンの様子を伺う。


 ロンは動かない。

 バスラが移動したのに、ロンはまったく動かなかった。

 首を曲げることもせず、先ほどまでと同じ方向を向いたままでいる。


 ロンにバスラの闇魔法が効いていないわけではないようだった。

 ロンは暗闇に包まれ、何も見えていない。

 バスラの姿は見えていない。


 炎を避ける動作もオーバーだった。

 ワンステップでかわせていたのに、その後さらに100メートル以上後ろにさがった。

 炎が見えていないので、熱を感じなくなる距離まで退いたのだろう。


 この肩の傷も本来であれば致命傷であるべきだった。

 あの近距離で剣を振るわれたのだ。

 それもバスラはほとんど反応できていなかった。


 剣士としての鍛錬も積んでいるロンが、バスラを斬ることは難しいことではない。

 それなのに斬り損ねているのは、見えていないからだ。


 ロンにバスラの姿は見えていない。


 だが、ロンは突然バスラに接近をして、剣を振るった。

 なんらかの方法で、バスラのいる場所は特定されているようだった。


 まるで瞬間移動でもしたかのように、バスラの前に現れてきた。


 瞬間移動? バスラはここで気がつく。

 慌てて、その透明な玉を捨てようとする。


 しかしわずかに遅かった。

 剣を構えたロンが、もう目の前にいる。

 ロンは剣を横に振るった。


 バスラは後ろにのけぞる。

 しかし剣をかわしきることはできない。


 左腕に剣が突き刺さる。

 持っていた本が地面に落ちる。


 黒く染められていたページが、白さを取り戻す。

 それと同時に空間の闇も消え、晴天の空が広がる。

 氷河期の終焉を知らせるかのように、太陽が地面を照らしている。

 ロンは小さい炎を地面に落ちた本に放つ。

 ページの端に着弾し、火が本を燃やしていく。


 バスラは、本を諦め、ロンに向けて炎の柱をふり落す。


 ロンは横に転がりそれを避ける。

 連続してバスラは炎の柱で、ロンを攻めたてる。


 ロンは次々と迫りくる炎の柱を、左右に避ける。

 ロンが回避に専念している間に、バスラはロンから距離をとる。


 バスラは自らの足の裏に小さな炎の爆発を起こし、その勢いを利用しながら、一気に後方に飛び退く。


 バスラは握っていた透明な玉の魔道具を地面に叩きつける。

 玉は粉々に砕け散る。

 破片が陽光を反射してきらめく。


 炎の柱の攻撃がようやく終わり、ロンはまた剣を構えなおす。


「瞬間移動の魔道具か」バスラが忌忌(いまいま)しそうにつぶやく。


 ロンはバスラが持っていた魔道具の対となる玉をポケットから取りだす。

 親指と人差し指でつまんで、視線の高さまでかかげる。


「この瞬間移動の魔道具はかなり希少なものだったようだな。

 あなたの話しぶりから、そのことがわかった。


 そしてあなたのこの魔道具についての知識も乏しいことも同時に伺えた。


 この魔道具は、実は2つで1セットなんだよ。

 2つの玉の間を瞬間移動できる仕様になっている。


 そうとは知らずに、あなたはその魔道具をずっと持っていた。

 僕は瞬間移動を発動させれば、すぐにあなたの元へ移動できたというわけだ。


 あなたの闇魔法は実に強力だった。

 まったく何も見えなかった。

 さすがは賢者だ。

 あれを発動されては、大規模魔法でも使われない限り、ほぼ無敵でしょう。


 けど、先ほどの闇魔法はもう使用できない。

 あの本がなければ、あれほどの規模の魔法を、素早く発動させることは不可能だ」


 賢者バスラがロンをにらんでいる。


「いい気になるな。

 お前はただ闇魔法をしのいだだけでしかない。


 私が魔法を使えている限り、状況は何も変わってはいない」


「バスラさん、まわりをもっとよく見てみるといい。


 たしかにあなたは魔法が使える。

 でもこれはあなた以外は魔法を使えないということだ。


 闇魔法は切れ、視界が開けた。

 魔法を使えない魔法使いを倒すのに、時間なんてほとんどかからないんだよ」


 バスラは50名の兵士に目を向ける。

 50名の兵士は全員、地に伏していた。


 倒れる兵士の前には、リンとティラが立っている。

 ふたりの握る剣が、魔法使いの血に濡れている。

 幾人かの兵士にはジルの弓矢が貫通していた。また幾人かの兵士の首にはレムのナイフが突き刺さっていた。


「第4大隊は強いよ。

 お前が思っているよりもずっとな」ロンが言う。


 バスラは倒れる仲間を見て、目をきつくつむる。

 一度、勢いよく首を振る。

 瞳を開き、またロンをにらむ。


「だがな、それでも勝った気になるのは、早計というものだ。

 所詮はたかだか500人。

 たいした敵ではないわ。


 賢者の力をなめるなよ」


「賢者の力ですか。

 ええ、知っているよ。


 あなたは3属性使えるんでしょ。

 闇属性と炎属性。

 あなたはさらにもうひとつ属性使うことができる。


 でもね。たとえどのような属性を使ってこようと、僕はそれを破れる。


 賢者の力も意外とたいしたことないことを教えて差し上げますよ。

 下級魔法使いの力をお見せします」

明日も午前7時15分ごろ投稿予定です。

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