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50話 賢者バスラと50名3

「そこに赤髪がいるということは、やはりすべてお前の策略だったのだな」


 バスラがロンの隣に立つジルを見ている。


「捕虜としてわざと捕まり、ハルス軍本陣の魔道具が使えないという情報を流す。

 ただ実際は、この瞬間移動の魔道具を使って、お前が魔道具を再び動かす。


 我々はまんまとその誘いにのって、ただですら少ない兵をハルス軍本陣へと送ってしまった。


 当然、襲撃のあることを知っているハルス家本陣は、罠を仕掛けて待ち構える。


 そのせいで随分と苦労させられたようだ。


 我々の予定だと、ほぼ無傷でハルス家を滅ぼすことができるはずだった。

 それだけの力の差があった。


 とろころが、7千の兵が3千500にまで減ってしまった。

 半分を失ってしまった。


 罠にかかり、敵は準備万端だった。

 動き出していた魔道具はどれも優秀で、それにも大きな被害を受けた」


 バスラが手に持つ魔道具を、指で回転させる。

 透明な玉が透かす景色を、しばらく眺める。


「まんまとやられたよ。

 優秀な部下を多数失った。


 でもな。ハルス家の本陣を壊滅させることは問題なくできた。

 総司令官の剣聖ハルスも殺せた。


 もう、こちらの勝利は確定しているのだよ。

 抵抗しているのは、君たち第4大隊だけだ」


「ハウス軍の本陣にはゴデル軍の倍以上の兵士がいた。

 ゴデル軍には雷帝シュルムもいない。

 罠も魔道具もあった。剣聖の父もいた。


 それなのに、この短時間でハルス家は滅んだというのか」


 ロンの声が珍しく大きくなる。

 しかしそれは当然ではあった。


 何しろハルス軍の本陣が破れたということは、この戦争に負けたと同じことであった。


 大将もいなければ、戦力もロンたち第4大隊の500しか、もういないのだ。


 あとはどのように敗北するかのみが選択肢にあるのみだ。

 最後まであがき全滅するか、降伏して命のみは助けてもらうのか。


 第4大隊の全兵士が剣を持つ手を下げてしまった。

 ティラやリンすら手に持つ剣に力が入らなくなっている。


 気持ちの良い晴天の空と現在の状況があまりにミスマッチで、誰もが夢を見ているように感じた。


「ロンよ、降参しろ。

 私がお前を評価しているのは事実だ。

 決して悪いようにはしない。


 お前はまだ若い。

 私と同じ10代だ。


 同じ10代で、これほどまでの魔法技術を持ったものを私は知らない。

 ゴデル国にもいない。


 賢者である私は、当然魔法技術の習得も早かった。

 他のものよりも飛び抜けていた。


 そのため同年代の友人などこれまで持つことなどなかった。

 私の魔法についてこれるものがひとりもいなかったのだ。


 私は年寄りとばかりともに過ごしてきた。


 しかしロンお前となら友となれるかもしれない。

 私とともに同じ時間を歩むことができるかもしれない。


 お前の使う魔法の術式や、魔道具を見て私はそう期待している。


 ロン、お前もそうではないか。

 剣聖の息子として生まれてしまったばかりに、その魔法使いとしての才能を理解されていない。


 ハルス家のなかで、お前は孤独だったはずだ。

 だが、ゴデル国に来て私とともにいれば、その環境も改善されるだろう。

 お前にいるべき場所を私は用意できると思う」


 バスラが右手をロンに向け差し出す。


「ロンよ、私の友とならないか」とバスラは言う。


 ロンにはゴデル軍がどうしてハルス軍の本陣を打ち破ることができたのかわからなかった。

 しかし、賢者の様子を見るかりぎ、嘘はついていなさそうだった。

 おそらく本陣はもう壊滅しているのだろう。


 ロンは父親の顔を思い浮かべた。

 子供の頃から一緒であった、家臣たちを思い浮かべた。


 目をつむる。

 視覚がなくなると、音がよく聞こえてきた。


 すすり泣く声が聞こえてくる。

 どうやら第4大隊の誰かが、すでに涙を抑えられなくなっているらしい。


 ロンは目を開き、再び賢者を見る。


「賢者バスラ、あなたはいくつか誤解をされている」


「なんだ」とバスラがこたえる。


「あなたと僕は友になどなれない。


 あなたは僕のことを評価してくれている。

 あの賢者様に評価されるのは、とても光栄に思う。


 けど、この時点でもう、友にはなれない。

 評価というのは、所詮は上の者が下の者にするものだ。


 つまり、あなたはもう現段階で、僕のことを下に見ている。

 まあ、賢者と下級魔法使いだ。

 そう思うのも仕方ない。


 才能あふれる賢者として暮らしてきてしまったあなたは、もはや他人を平等に見ることなどできない。

 残念だが、あなたに友を作ることは不可能だ。


 幼少期に友を作ることができなかったあなたに、友人が現れることはないだろう。


 賢者として、力あるものとして生きることの、それは代償なのかもしれない。


 あなたはこのまま、孤独でありつづける」


 ロンがおもむろに剣の柄に手を置く。

 そして剣を鞘から抜く。


 バスラに驚きの表情が浮かぶ。

 バスラだけでない。

 第4大隊の兵士も驚く。


 ロンの姿には、明確な殺意があった。

 穏やかな会話に、終わりを告げる。


「それにあなたは僕を見下していますが、それは僕も同じだ。


 僕もあなたを下に見ているんだよ。


 あなたの魔法はまだまだ幼稚だ。

 若さが目立つ。


 僕の領域には、全然とどいていない。

 僕の友にするには力不足だ」


 ロンの持つ剣が燃えあがる。

 バスラがそれを見て、ますます驚愕をおぼえる。


「それにね。

 まだこの戦争も負けたわけではない。


 今ここでゴデル軍大将のあなた、賢者バスラを倒してしまえばいいのだから」


 ロンは言う。

明日も午前7時15分ごろ投稿予定です。

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