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5話 リン【ロン視点】

 朝もやも晴れて、森はすっかりと明るくなる。

 快晴の陽光が道を照らす。


 夜中から長時間歩きつづけたロンは、さすがに疲れた。

 木陰に座り、休憩をとる。


 ポケットから飴玉を取りだし、なめる。


 リンはまだまだ体力に余裕があるらしい。

 木の枝にぶら下がったり、枝を揺らす。

 落ちてくる葉をタイミングよく蹴って、葉をまた上に舞いあがらせ、また落ちてくるタイミングで蹴って、リフティングのように、宙に舞わせつづけている。


 リンのジョブも弟と同じ上級剣士のはずだ。

 しかしその動きは弟より圧倒的に優れていた。


 魔法使いの僕では、どんなに強化魔法をかけても、あんな動きはできない。

 ジョブによる埋められない差を如実に感じる。


 同じ上級剣士である弟に僕は剣術で勝っている。

 しかしリンには絶対に勝つことはできないだろう。

 僕はそう確信してしまう。


 そこにはジョブの違いという、絶対に越えられない壁があった。


 弟は上級剣士であったが、そこそこしか努力をしていなかった。

 上級剣士というジョブにあぐらをかき、鍛錬を怠っていた。


 反対に僕は、誰よりも努力をした。

 剣を振った回数なら、誰よりも多いはずだ。


 だから魔法使いの僕でも、剣が使え、ある程度強くもなった。

 しかしリンの前では、僕の剣術などお遊びでしかないだろう。


 リンには才能があり、そして日々の努力もおこなっていた。

 鍛錬の量は僕とほとんど変わらない。


 努力する天才。


 リンは葉っぱのリフティングをやめ、木の枝を鉄棒のようにくるくる回りだす。

 そして、3回転半宙返りをして、綺麗に両足をそろえて着地する。

 10点満点。


「リン、このまま僕についてこなくてもいいのだぞ。

 リンは僕の父親に好かれていた。

 優遇されていた。

 あからさまな贔屓があった。


 だから弟にちょっと逆らったからといって、そんなに大きな問題にはならないと思う。

 少し謝れば、またもとのようにハルス家で問題なく暮らしていけはずだ」


「いえいえ。毒を食らわば皿まで、です。

 ロン様の味方をしてしまったのです。

 このまま最後までお付合いさせていただきます。


 お皿をこの健康な歯で噛んで、バリバリと砕いて、飲み込んでやりますよ。

 胃は少しチクチクとするかもしれませんが、ぶりぶりっと出して解決です。


 もともと私は大抵の毒に耐性があります。

 鍛錬で毒の効かない体を作りあげてきました。

 だから、毒を食べようが何の問題もないのです」


「えっへん」という自慢顔で、リンは言う。

 リンは金髪で、色白の、10代の女の子だ。

 きっと彼女に恋する男の子は大勢いるだろう。


 ぶりぶりって。。


「もともと毒が効かないのなら、皿を食べる必要はないように思うのだが」僕は言う。


「毒が効くとか、効かないとか、そんなことは関係ないのです。

 大切なのは、毒を食べたあとに、お皿を食べることです。


 しかし、毒を食べたあとになぜ、皿を食べないといけないのでしょうか?

 毒を食べたのですから、とりあえず安静にしているべきです。

 それを、お皿を食べるというさらなる暴挙にでて、一体なんの意味があるのでしょうかね?」


「知らん」僕は言う。僕は軽く首を振る。


「リンはあいかわらずだな。

 久しぶりにこうして話したが、昔のまんまだ。


 外見は綺麗な女性に成長したが、中身は破天荒なままだ」


 リンは口を大きく広げて、にっこりと笑う。


「三つ子の魂百まで、ってやつですね。


 百までということは、100才を超えると性格は変わるのでしょうか?

 悪事のかぎりをつくしていた凶悪犯罪者が、101才の誕生日を迎えると聖人君子のような人物になることがあるのでしょうか?


 100年も生きていれば、その性格も習慣として染みついてしまい、ますます変わるのは難しいと思うのですが、どうなんでしょう。


 私も101才になれば、お淑やかな性格になることができるのでしょうか。

 外見だけではなくて、正真正銘の美少女になることができるのでしょうか」


「101才だと、少女ではなく老婆だけどな」


「美老婆ですね」


「うむ」と、とりあえず僕はうなずいた。


 空の高いところを、鳥が飛んでいる。

 鷲のように見えるけど、鷹かもしれない。

 鷲と鷹の区別は難しい。


「私のことよりも、ご自身の心配は大丈夫なのでしょうか?

 ロン様はこれから向かわれる第4大隊が、現在どのような状況なのかご理解されていらっしゃるのですよね」


「ああ、理解している」


 僕は座っていた木の根から、腰をあげる。

 ズボンの土を払う。


「あの部隊は完全に敵に包囲されています。

 敗戦は確実で、今は全滅の危機に瀕しています。


 これからそのようなところに行かれるのは、単なる自殺行為でしかないように思いますが」


 リンの言葉に、僕はうなずく。

 リンの言っていることはすべて正しかった。


「たしかに死にに行くようなものだ。

 でもね、前にも言ったけど、この戦争はこのままだと負ける。

 どうせこの戦場にいたら、遅かれ早かれ死ぬんだよ。


 僕たちが生き残るには、どこかで何かをしないといけない。


 そして僕は、第4大隊の戦場が、そのどこかの何かになるんじゃないかって考えているんだ」


「この戦況を変えられると」


「可能性はある」と僕は言った。


 上空の鷲だか鷹だかが「チィィぃ」と鳴く。

明日も午前7時15分ごろ投稿予定です。

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