眠り
ジリリリリリリリリリリリリ
アラームが鳴ってる。
止めなきゃ。
「良く寝たなぁ……いつもなら落ちる時に目が覚めるのになぁ、階段とか、よっぽど熟睡出来てたんだろうな、良く起きなかったもんだ」
仕事場の飲食店へ行く前にシャワーを浴びて髭を剃り、指の爪を短く整える。
仕事は週4、フリーターだがその分時間に余裕があり、趣味の釣りを楽しめて俺はこの生活を気に入っていた。
「そんなに身綺麗にして、どこに行くつもり?」
ハッとした。
俺は一人暮らしだ、誰かを家に入れた覚えもない。
「戸惑ってる所悪いんだけど、時間があまり無いんだ、ちょっとだけ、話しを聞いてもらうよ。」
「警察呼ぶぞ?」
「好きにすればいい、勝手に話し始めるからしっかり聞いておけよ?
まず、お前が夢だと思ってる事だがこれは残念ながら夢じゃぁない。
お前は釣り中に落下、死んだかどうかは分からないが間違いなく赤ん坊になって産まれた」
なんで夢の内容を知ってるんだ!
警察を呼ぼうと急いでスマホの画面をタッチしていた手が止まる。
「訳が分からないだろう?
でも今はそれでいい、俺がお前に伝えなければいけないこと、それはたった一つ《強くなれ》だ」
「強く?なんでだ、俺が強くなる事にお前に何のメリットがあるんだ?
自慢じゃないが、俺は格闘技も運動も大してしたことが無い、強い奴を求めるならお門違いだ」
「別に強い奴が欲しい訳じゃない、俺のメリットなんて考える必要はない、それに…好きだろ?獣耳」
たしかに俺は獣耳が好きだ、中学生の時にペットショップで狐のような動物、フェネックに恋をしてしまった経験まである。
売れてどっかに言ってしまったが、今思い出しても切ない。
「お前が新しく産まれた世界は獣耳の可愛い女の子が多いぞ、魅力的だろ?」
魅力的だ、あまりにも魅力的過ぎる。
アニメや小説の中にしかなく、夢に描いていた様な出来事だ。
「向こうは危険が多い、自分の身を、別れたくない大事な人を守るため、そして……」
体の感覚が薄くなる
まるで眠りにつくその時のように
「チッ、もう時間切れか……
良いな!強くなれ!知識を蓄えろ!
俺のような失敗をするな、このままだと大陸間で……」
目が覚める。
ここには居られない。
結局誰なんだコイツは、それだけ聞こうと胸に力を込めるが、喉を通る空気が声として音に成る事無く、抜けていく……
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