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動き出した怪物

 それは突如として起こった。破壊王が降臨したのだ。


 そして破壊王に日夜忠誠を誓う七人の怪物がいた。その名を憤怒のデーモン、嫉妬のネビウス、狂気のハンス、非情のムー、強欲のランカスター、傲慢のアモン、そしてこれらを統轄する凶悪なメドゥーサだ。


 そのメドゥーサが破壊王の前に進み出て、

「エルニドス様、一同が揃いましてございます」

 玉座に座るエルニドスに最大の礼を尽くし平伏する。


 それに応えるべきエルニドスだが、まるで意にかえさずに彼女を見ようともせず立ち上がると、右手を翳してから再び王座に座した。


 するとメドゥーサは玉座を背に立ち上がると、一段低いステージに戻り、

「皆のもの忠誠を示せ!」

 と一喝すれば、玉座の間に整列した百を超える化け物どもが唸りを上げ、

「エルニドス様に栄光あれ。我らの王に賛美が増し加えられますように。そして我らからの忠義を受け取られますように。我らのエルニドス様! 万歳! 万歳! 万歳!」

 と力の限り叫びだした。


 それに満足したのかエルニドスは座したまま再び右手を軽く挙げ、

「うむ、メドゥーサ、次の議題に移れ」

 と何か問題でもあるかのように命じた。


 命じられたメドゥーサに緊張が走り強張った口調で、

「ただいまこの惑星を調査中でございまするが、持ち帰った情報によりますると虫けら種族がこの星を支配しているようです」

 そう言いきったメドゥーサは褒められると思ったのか上目遣いからエルニドスを見たのだが、その顔には険しい表情が有り有りと浮かんでいた。それで、

「ご満足頂けない報告で心苦しいのでございますれば、この身に命じて下されば、今すぐにでもこの星を征服してご覧に入れまする」

 それに自己満足したかのようなメドゥーサはもう一度平伏し頭を垂れる。


 それに怒りを感じたのかエルニドスは先ほどより低い声で、

「お前の役職はなんだ?」

 顔を上げたメドゥーサは簡単に、

「統轄でございますが?!」

「総統轄だ。統轄の上に総が付くのだぞ。そのお前が出て行ったら誰が統轄するというのだ? 少しは立場を弁えろ。それにだ、この場を作戦会議の場とするな。これほど大勢がいる所で論じ合っても時間の無駄だ!」

 頭にいる蛇の先まで真っ赤になりながらメドゥーサは、

「気の緩みからとんだ軽はずみな事を申し上げ……」

 と言ったところをエルニドスは手を挙げ遮ると、

「もう良い。それより皆に指示を出せ。その方が皆にも良いだろう。その後で各統轄だけで集まるが良い」

 そう言うとエルニドスは席を立ち玉座の後ろから別室に移動していった。


 その後のメドゥーサは、これは何時もの手順なのだろう。順を追って指示を出していき皆を解散させていった。


 静まり返った玉座の間に残ったのは七人の怪物たちだった。


 その一人一人の顔を見入ってからエルニドスはゆっくり、

「この中にこの惑星にも異変があるものがいることを覚えた者はいるか?」

 そう言ってもう一度一人一人の顔色を見渡した。が、彼らは何らの変化も示さなかった。それで失望したように、

「我らがこの惑星に降り立った時のことだ。吾は一瞬、自己を示す波動を放ったのだが、それに呼応したかのように首をすぼめた奴がいた。お前たちにそいつが特定できないのか? それが知りたかったのだが……」


 そう言って暗い表情になったエルニドスを労ってかメドゥーサが、

「我らにお命じ下されば明日にでも……」

 と言いかけた時、またしてもエルニドスは遮り、

「どこの誰かも分からぬのに、ましてや、奴は隠れたのだぞ。海辺の砂丘の中から一粒しかない砂金を探すようなものだ。到底見つけられぬ。それなら向こうから出てきてもらうしかないだろう。ムーよ、そうは思わぬか?」


 名指しされた非情のムーは畏まりながら、

「ゴミ虫は隠れるのだけは得意ですからな。そこで手法として思いつくのは二点、一つは一本釣りのように狙いを定める。もう一つは網で根こそぎ捕まえる。その後、選別すればよろしいでしょう」


 それに噛みついたのはムーを良く思わない強欲のランカスターだ。

「一本釣り? 餌は何だと言うんだね、ムー君よ? それに網? それを言うならローラー作戦と言うのだろう。ローラーで片っ端から踏みつぶせば良いのだから」

 そう言ったランカスターをせせらわらいながら、

「我らが王が求めたことは首をすぼめた奴を特定することなのだよ。お前の手法では踏み潰してしまい何が何だか分からなくなるではないか」

「探し出すほどのものならローラーに踏み潰されはしないだろう。要するにこのローラーとはあしきりのこと。それくらいは理解して欲しいぞ。それより餌は何だと言うんだ。まだ答えてもらっていないんだがね?!」


 どうも噛み合わないのでムーは整理するように、

「向こうにはこちらの存在が知れたというのだから、奴としてもこちらのことに興味があるだろう。それが餌になるとは考えないのかね? ランカスター君よ」

 すぐさま反応するランカスターは、

「どこのどいつなのかも分からないのなら、四方八方に情報を流すのが一番手っ取り早いではないか。それを局部的に一本釣などとおこがましいことを言うから馬鹿みたいに見えると言うんだ」

「馬鹿とは何だ!?? お前こそアホまるだしのくせに!」

「アホ!?? だと、それは死亡フラグだと言うことを今教えてやる!」


 ムーとランカスターとで取っ組み合いが始まる寸前で、総統轄のメドゥーサが、

「エルニドス様の御前であるぞ! 少しは場所を弁えろ!」

 と割って入るのだった。


「よいよい。それぞれの言い分もあろう。とにかく情報を収集するのは確定事項だ。その次ぎにこちらの情報も流す。しかしそれは偽の情報だ。そこでだ、我らのダミー拠点を造らねばならぬ。ダミーといえども我らの名に恥じぬものだ。そこの情報を流すことで奴らの反応を見ようと思う。誰か造る者はいないか?」


 そこに傲慢のアモンが進み出て、

「そのお役目、このアモンにお任せ下さい。エルニドス様の名に恥じぬものを造ってご覧に入れます。そこでまずはこの惑星での建造物を参考にし、それよりも立派なものなり、また細部にわたって考え抜いた構造に仕上げたく思います」

 そう言っては平伏する。


 それに満足気味のエルニドスは手を叩きながら、

「うむ、良い。ではアモンに任せよう。今すぐにここの生き物たちから学んで参れ」

 そう言いアモンをこの座から見送った。


 アモンがいなくなった後にエルニドスはもう一度、

「では囮は誰にすべきか? そうだな、メンテナンス部から適当な人選ができないか?」

 と残りの六名の顔を見定める。


 メンテナンス部はやはり総統轄のメドゥーサの管轄である。それで、

「わたしから適任を選びましょう。そこで拠点が出来上がるまでは情報収集でよろしいでしょうか? それとも何か別の任務も与えましょうか?」

「いや、それで十分だ。この地から、この地の国、そして四方の国に解き放て。まずはこの五国で良いだろう。しかし、人選は任せるとしても二人組が良いだろう」



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