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御前会議

重圧な扉が開き近衛兵でも最上位の騎士級が四名、それに遅れて冠をつけた魔法師が六名、その後に道化を演じているかに思える四人の暗殺を得意とした祭司が入ってきた。そしてその後に、ラッパを吹きながら小人がゾロゾロと来て、漸く国王がその姿を現した。


 一同は起立し、国王が座に着くまで微動だにせず待っていると、小人の吹くラッパの音色が代わった。

 国王はそれに合わせるかのように座に着くと、これまたラッパの音色が変わった。

 そして国王は右手を挙げ開口一番、

「余は不機嫌である。その理由は分かるな!」

 と言うと指先で合図をすれば、先ほどの小人たちが演劇でもするかのように動き回り、

「ゲルマニア国王陛下にあらせましては、先のコラジンでの騒動にいたくご不満であらせられ、今か今かと報告を待たれておられました」

 と、一人の小人が言えば、他の小人は、

「その姿はなんともいたわしいくも、この身が張り裂けんばかりでありました」

 そう言って全員の小人が泣きわめき出すのであった。


 その騒動が収まると、再び国王が右手を挙げ、

「そちたちに言い分があるのなら聞こう」

 そこでまたしても小人たちがラッパを吹き出し、器用にも組み体操のような立体的な一つの像を造り出し、

「寛大にして偉大なる我らが王のお許しが出されましたぁぁぁぁ!」

 と、締めくくって座の後ろに退いていった。


 それが終わりの合図かというように国務大臣のジッポが口火を切った。


「プロイセン国王陛下におかれましてはご壮健のご様子、大臣一同から、お慶びを申し上げまする」


 それを受けて再び小人たちが舞を舞い、

「喜ばしいかな喜ばしいかな! 我が国王に長寿の祝いを」

 そう言うとラッパを吹き鳴らして後ろに下がっていった。


 それを待ってジッポが、

「それで陛下、何を気になさっておられるのでしょうか。フランク帝国と言えば聞こえが良いかも知れませぬが、その実質はカペルナウム州にも劣る始末。小競り合いのあったコラジンに至っては、その半分程度しかありません。まさしく子犬が吠えた程度でございます。子犬が吠えたくらいで陛下のお耳にいれるなど恐れ多いことでございます」

 そう言っては恭しく頭を垂れる。


 しかし小人が三段組み体操をし、その上に立ち上がった小人が、

「フランク帝国が弱小だと言うことは知っておる。ここにいる全員、我が王国がどうして弱小帝国を取らないか知らぬものはおるまい」

 とまるで国王のように威張った口調で言うと、


 他の小人が全員で、

「それはフランクにはリズナの大森林があるからです」

 と芝居がかった答えを返し、そのまま後ろに下がっていった。


 それでもジッポは足らない部分を付け加えるように、

「あの大森林はあの大森林は我が王国の二倍以上の広大な面積を占めております。道理から申し上げれば、あれだけの領地を放っておくのは宝の持ち腐れというものです。ですが、問題はそこに棲むものたちの正体です。その説明はジョンソンが適任でしょう」

 と捲し立てた後はあっさり話を放棄してしまった。


 皆の視線を一手に引き受けたジョンソン軍務大臣が厳かに、

「以前、国王陛下にもご報告申し上げましたが、これまで二度もリズナの大森林を調査したことがあります。民間に委託しての調査隊と……」


 それを遮るように統一大臣のアルマンが、

「ジョンソン君、それは甘すぎるんじゃないのか? 民間なんかに調査を依頼するとは、手抜きと言われても致し方ないぞ!?」

 とほんの僅かではあるが毒汁を含んでいた。

 しかし、それに異議を唱えるように敵対関係にある近衛大臣のモザンズゥが、

「まだジョンソン君には話の続きがあるのだろう? まずはそれを聞いてからでも遅くはあるまい。それともアルマン君には思うところがあると言うのかい?」


 そう言われればアルマンも、

「いえ、別にそう言うつもりではないので、ジョンソン君、続きを話すが良い」

 と軍務大臣が格下とでも言うかのように命じる。


 ジョンソンは自分の立場を弁えているのか、

「民間人を送り込んだのには分けがありまして、弱小帝国といえども隣国には違いないために、軍を送り込む分けにいけなかったためと、小手調べのつもりもありました。民間人なら金でどうにもなりますし、全滅したとても軍の損失にはならないからです。それに対面の問題もありますから」

 と回りくどい話し方をし、いつまでも確信を話したがらない。


 それに業を煮やしたモザンズゥが、

「ジョンソン君、率直に言い給え。リズナの大森林は危険なのかね?」


 そう言われ冷や汗をかきながらジョンソンは、

「はい! かなり強大な魔物の巣窟との報告を受けています」


 それを聞いた小人たちは国王の前で演劇を始め、剣士に扮した小人が大蛇に扮した小人に呑み込まれる場面を披露していき、最後のラッパを鳴らして終わりとした。


 今か今かと口を挟もうとしていたアルマンは素早く、また早口で、

「その根拠はあるんだろうな? ジョンソン君? 陛下の御前だと言うことを忘れたなどと言わせぬぞ。そしてモザンズゥ君にも同じ事が言えるんだぞ!」

 と今度は脅しのような口調で締めくくった。


 額の汗をハンカチで拭き拭きしながらジョンソンが、

「はい、我が軍きっての魔法の使い手に剣の名手を送り込み、漸く掴んだ魔物の情報です。彼らが遭遇した魔物は蜘蛛の姿をした化け物にオオトカゲの化け物です。これには多くの兵が食われてしまいましたが」

 そう言っては悔しがって見せてもいた。


 それに乗じてかモザンズゥが、

「もしお疑いなら、アルマン君がお手持ちの兵でも秘蔵っ子でも送り込んでみたら如何です? そこで何も出てこなかったとするならば」

 と区切ってから、

「この首を差し出してもよろしいですよ」

 と勝ち誇ったように言い出した。


 すると小人たちが大喜びをし、

「取った取った首を取った!」

 と、ある小人は、

「モザンズゥの首を取った!」

 などと大騒ぎをし出し、周囲に真っ赤なバラの花びらをまき散らした。それがまるでモザンズゥの鮮血でもあるかのような趣向だった。


 それには国王も右手を挙げて制止、それから左右に振った。


 それを受けて小人たちが大合唱し、

「プロイセン国王陛下はこのように申された!」

 次の小人は、

「静まれ!」

 その次の小人までもが、

「静まれ!」

 そしてまた次の小人までもが、

「静まれ!!」

 その後、小人の分際で、

「モザンズゥ! 正気であろうな、取り返しは効かぬぞ!」

 と極めつけの台詞を吐いた。


 小人に睨まれても怖くはないのだろうが、ここは御前会議なのだから常に白刃の上にいる覚悟でいるモザンズゥは軽やかに微笑みを返し、


「勿論でございます、陛下。その調査隊には我が軍きっての腕っこきを送り込みましたから情報は確かです、し……」

 と言いながら、持参の皮袋から得体の知れないものを取りだし、

「ほら、これが証拠です」

 と、ゴトッと音を立てその得体の知れないものをテーブルの上に置いた。


 それには剛毛がびっしりと生えそろい、鋭く先が尖っていた。そしてそれはピクリピクリと動いているのだ。それはどう見ても蜘蛛の足先なのだが、サイズが桁違いにばかでかい。軽く乙女のふくらはぎを凌いでいる。


 それに仰天した意識が戻った魔法師たちが王の前に進み出ると身構え、

「不測の事態に備えよ!」

 とひときわ大きな冠を被ったものが命令を出す。


 続いて騎士たちも王の周りを堅め、

「身を挺してお守りせよ! ここが主戦場ぞ!」

 そう言っては剣を身の前に突き出した構えをする。


 しかし祭司たちは王の側から離れず、どちらかと言えばブルっているように見えるし、小人などは完全に王の椅子の裏に姿を消していた。


 それで驚いたモザンズゥが慌てて、

「これは蜘蛛の化け物の一部、鋭い先端からもお分かりの通り、蜘蛛の足の部分です。切り取ってからすでに一年が経過したというのにまだこうして動いています。その生命力なのか霊力なのか、凄まじいほどの力が分かります」


 そんな暢気なモザンズゥに、怒りを発したアルマンが、

「そのような危険なものを持ち込み、陛下を危険な目に遭わせるとは正気とは思えん。護衛兵は直ちにモザンズゥに怒りの鉄槌を加えろ!!」


 しかしモザンズゥは平気な顔をし、

「これには魔法をかけ動きを封じてありますから、ご心配には及びません。わたしなどはベッドにまで持ち込んでも平気なほどですからな」

 そう言ってはモザンズゥは高笑いをした。


 それを確認しようと騎士たちと魔法師たちが蜘蛛の化け物の足に群がり、手に取ったり足で踏みつけたりし気が済むまで確認した後で、

「陛下、危害はなさそうです」

 と報告することを忘れなかった。


 それに安心したのか小人たちがしゃしゃり出てきては、

「お前たちは下がっておれ」

 とラッパを吹きつつ大袈裟な立ち居振る舞いをしてみせる。


 それから小人の主立った者が組み体操の一番上から、

「モザンズゥ! そう言うところを見れば、何か考えがあるのだろうな? 申してみよ」

 と何時もの座興とでも言うような台詞回しだ。


 モザンズゥもその調子に合わせ、恐れながらと恭しく頭を垂れながら、

「リズナの大森林を調査した結果からですが、帝国を粉砕した場合と、そうでない場合の税制面を計算させました」


 そこは小人たちは小躍りしながら嬉しそうに、

「流石はモザンズゥ、我らが給金も上がるのであろうな?」

 とちゃっかり自分たちの主張も加えている。


 しかしモザンズゥは首を振り振り、

「それは叶うますまい。すでに給金が上限を超えておりますれば、これよりは下がるばかりかと!」


 急に低姿勢になる小人たちは、私心のみで、

「そうこをなんとかモザンズゥ様のお力で下がらないようにお願いしますぅぅぅ!!」


 それに気を悪くしたのか王の杖が床を叩く音がして、

「コツコツ!」

 その音でスイッチが入ったのか再び小人たちがちゃっちゃと即興の演劇を始め、

「手回しが早いな!」

 と一人目の小人が言えば、

「流石はモザンズゥ!」

 しかし次なる小人は、

「それで損得勘定はどうなったのだ?」

 それで次の小人までもが、

「どうなった?」

「早く申せ!」

 と急かすばかりになった。


 それでモザンズゥも小人が途切れた瞬間に、

「はい、後で税収大臣のステルス君から報告させますが、大まかに言えば帝国を滅ぼしたところで得る税収よりもリズナ周辺の維持費がかさみ、また、それに伴っての被害が大きいと予測されました」


 それにまたしてもアルマンが噛みつき、

「帝国を滅ぼした後など考えるまでもない。そのまま放置すれば良いではないか」

 と高らかに笑い出した。


 それには国務大臣のジッポが大きな咳払いをした後で、

「放置した場合ですが、そうなったら帝国領全域が魔物の支配下になるは火を見るより明らか、国王陛下、どうかそのようなご判断だけはいたしませぬようにお願い申し上げます。損得勘定から帝国を滅ぼすことが得策ではないのなら、このままリズナの大森林を封印する重しとお考えなされますように」

 と至極まっとうなことを言い出した。


 それに応えてなのか国王が、

「今までの習わしはどうなっておったのか?」

 と重箱の隅を突くような物言いで小人の尻を叩く。


 それで小人たちが大仰なラッパと台詞で、

「先代も、先々代も!」

 クルッと回って小人が転がり、

「深く調査もせずに慣わし習わしとばかりに言いおって」

 またしても前に転がり、

「リズナの大森林には触れるなとの御触れだけを残し!」

 またしてもゴロリと転がっていき、

「帝国に一兵たりとも送ったこともせずに」

「のうのうと安楽を貪り腐った挙げ句に」

「習わし習わしと無策にも程がある!」

 そう言っては三人の小人が右左真ん中と転がっていく。

 そうして最後に残った小人が、

「我らが手を出さないことを、我らが弱いかのように嘲笑いだした。それが今回のコロナド侵攻の全貌であろうが」

 そうすると戻ってきた小人が高らかに、

「帝国の悪行を!」

 次の小人が、

「許すと言う大臣はおらぬだろうな?」

 そう言うと全員の小人で大臣の顔色を伺った。


 こう言われて、『はい、おります』などと言える大臣はいない。

 それで小人たちの独演会がまだ続くことになり、

「しかし、言い伝えに逆らう愚かは控えねばなるまい!?」

 と首を左右に振りつつ言えば、次の小人が、

「リズナの大森林は脅威よ。モザンズゥが言わんでも分かるほどの化け物の巣窟よ!」

 こう言って再び化け物の演技をした後で、

「しかし、どういう分けか帝国はそのリズナの大森林を封じておるのだぞ。その理由を解き明かしたものはこの王国におるのか?」

 と一番の力を込め小人たちが大合唱して見せた。


 またもや、これにも答えることの出来る大臣はいなかった。


 そこで国王に似せた小人が大威張りで、

「ところで先のいざこざで得たものがあっただろう? あれはどうなったのだ?」

 と召使い役の小人に言うのだが、それに呼応するはずの小人は黙りしている。


 それで、大臣同士で顔を見合いながら、ヒソヒソと相談し合ったのだが答えが見つからずにいると小人同士がに目配せを演技混じりですれば、

「これがなんだか分かるか? 誰か答えてみよ。剣なのは見れば分かるな?」

 と第一の小人が言えば、次の小人が、

「しかし、その素性を誰か知ったものはいないか? 軍関係の、ジョンソン、モザンズゥ、それにアルマンの誰でも良いから、答えてみろ!」

 と王命のように睨みつける。


 しかし、彼ら三人には答えるだけの情報が不足していた。それで押し黙っているとジッポ国務大臣が致し方なく、

「陛下、お願いです。愚かな我らにお教え下さい」

 とその場で頭を垂れた。

 また、それに習って一同の大臣も首を垂れた。


 それに満足したかのような小人たちが声高に、

「分からぬのも無理からぬ話よ。これは国宝級の業師が鍛えた剣。そこいらな鎧などバターのように切り刻んでしまうぞ!」

 と、木で出来た剣の玩具を振り回す小人は、次々とやられ役の小人たちを切り刻んでは床に転がしていった。


 その話に大袈裟のように驚く大臣たちを目にし、さらに機嫌が良くなって小人たちは調子に乗り乗り、

「このような剣を我が国でも作れるのか、そちたちに問うてみたい。どうじゃ?」

 と極めつけに凄んでみせる。


 それにも答えられる大臣が現れずにいると小人たちの筋書き通りの演劇が始まり、

「そこでじゃ、さきのモザンズゥの損得勘定など度外視とは思わぬか?」

 とまるでモザンズゥを嘲笑うかのように言い切った後、付け足しとばかりに、

「これほどの業物を前にすると、せせこましい税収と兵の出費などの話は取るに足らぬとは思わぬか? いや、思うはずじゃ、その上でだ!」

 とこれ以上無い程の大仰な立ち居振る舞いで、

「最大の問題は帝国が、この業物のゆえにリズナの大森林を封じていた、やも知れぬということじゃ、そうだろ? 考えても見ろ!!」

 そう言ってから小人たちはしばしの静寂を待った後、

「リズナの大森林を封じるほどの力を帝国は蓄えていたとするならば、これを脅威と呼ばずして何が脅威となるのだ?!」

 まるで勝ち誇ったかのような代表的の小人が、数人の小人の上で勝ち名乗りのポーズを決めて見せた。

 そうしてから再びおもむろに不安を煽るように、

「そこでだ。もしこの威力を持って帝国が王国に刃向かってきたとしたのなら!?」


 するとそこで途切れた小人の影から、別の小人が声色を使い、

『実際、コラジン侵攻の際、帝国はこの業物を持参してきたのだ! これを王国の危機と思わない大臣は大臣の資格がないのではないのか?!』

 と恐ろしくも声を震わせている。


 それに返答するかのように別の小人が、

「この業物の前に、誰か立ち塞がるものが、この王国にいるのか!」

 するとラッパと共に、

「いるなら前に出ろ!」

 別の小人も、

「前に出ろ!」

「名を申せ!!」

 と大合唱の嵐を巻き起こした。


 するとモザンズゥが恐れながらと、

「我が国には三名の大英雄が陛下のご命令を待っております」

 と言えば他の大臣も大喜びしならが、

「そうです。国王陛下! 三大英雄が王のご命令を今か今かと待っております」

 と大喝采しだしたは、先の不安を払拭しようと懸命だったからだ。それだけこの時の大臣たちは追い込まれていた。


 しかし小人たちは容赦しない。


 小躍りしながら謳うかのように一人目の小人が、

「今までリズナの大森林を野放しにしておきながら!」

 別の小人は転がりながら、

「どうして、いやさぁ! どうやって帝国がリズナを押さえ込んでいたのかすら知ろうともせずに!」

 そして全員の小人で、

「これほどの業物をも見逃してきた罪は非常に重い!」

 さらにラッパの音で威嚇してから、

「その罪! どうやって払拭するというのだ!???」

 と懺悔でも強要するかのような小人たちだ。


 その展開に言葉を失っていた大臣たちは互いの顔を見合うばかりだった。


 そのざわつきも大臣たちの精神的疲労から静まり返ったとき、おもむろに国王が、

「我が軍と英雄たちを余は誇りに思うぞ。しかし、だからといって安寧を貪って良い言い訳にはならぬ! 脅威は刻々と押し迫ってきたいるのだ。我がゲルマニアはその準備が出来ておるのか? いや、悲しいかな、どの大臣も出来てはおらぬ。そうだな?」

 と一喝するも、大臣からの返答は皆無だ。


 さらにの静寂の後、再び国王が、

「今から、そうだ、三日の猶予をやろう。それだけあれば十分だろう。三日後に立案を持って参れ。出来るな?」

 と睨むように言いつければ、全大臣がこぞって、

「はい! できます!」

 と言うやいなや平伏したまま下がっていく。


 も、全員が退室していく中、一人だけ居残った大臣がいた。


 それで国王が、

「ユリウスかしか残らなかったのか」

 と独り言のように言う。

 そのユリウスは平伏したままの状態で、

「はぁ! きっとわたし奴がおべんちゃらのために残ったと思っているでしょう」

 その言葉をも相手にする気もない国王は、

「確かにそちはおべんちゃらうまい。しかし、甘いものだけを持ってくるのではなく、甘辛いものを持ってくる。だから良いのだが、して、今回はなんだ?」


 ユリウスは敬意を捧げてから起き直り、

「国王陛下は先日のコラジン戦の後に起こった帝国でのスケルトン騒動をご存じでしょうか? 事は帝都城で起こったことでしたが」

 それにはビックリしたような国王が、

「帝都城でか? してやつは? もしや? 政変か?」

「いえ、皇帝は無事とこのと。しかし、カント伯爵他、数名が処断されたそうです。その際に起きたことに、スケルトンが城を乗っ取ったらしいのです」

 国王は不思議そうに、

「スケルトンとは化け物だろうに? どうして化け物に乗っ取られたのに皇帝が無事なのだ? そのカント何とかがスケルトンを使ったのではないのか?」

「どうも違うようです。皇帝側がうまくスケルトンを使い、カント伯爵が支配していた帝都城を奪還したらしいのです」

「すると皇帝はスケルトン使いか何かを雇っているというのか?」

「その解釈が正しいかと。しかし、帝都での噂話です。どこまで正確かは分かりかねますが、これだけは言えます。帝国に異変が起きていると!」


 国王は雰囲気を変え、小人たちに指先で指示を与え、

「今宵の宴は期待しておるぞ」

 そう言っては立ち上がり、小人たちが踊りながら先頭に立ち、続いて騎士級が、その後に魔法師が、その後に祭司、そして国王がのっしのっしと退室していった。


 部屋にただ一人残されたユリウスは内心、

『これは王国にも嵐が吹き荒れるぞ』

 と言った覚悟で腹をくくった。


 そうとは知らずに先に退室していった大臣たちは別室に集まり、

「おべんちゃらで出世した没落貴族のくせに」

 とユリウスのことを侮蔑をもって皮肉っていた。


 その興奮が覚めきったとき、モザンズゥとアルマンとが互いにいがみ合いだした。


「ここでどちらの軍が優秀なのか勝負しようではないか?」

 と息がピッタリ合った合い言葉を言った。

「統一軍など取るに足らぬわ!」

 とモザンズゥが言えば、

「近衛軍にはお城の中がお似合いだってっぇの!」

 とアルマンが吠え立てた。


 それを見てため息をついたジッポ国務大臣は、ジョンソンに、

「お前も大変だな。近衛軍、統一軍、そしてお前の所の国軍と、王国には三軍が揃っているというのに、みんなバラバラだ。兵の補給にも頭を悩ませる始末だ。結局のところ、お前の所が割を食うのだろ、難儀なことだな」


 そう国務大臣から慰めの言葉をもらったジョンソンだったが、

「いえ、わたしの不徳のいたすところですから」

 と言葉を句切ってから、

「それより先の国王陛下の言葉なんですが、どう思われます?」

「うん? リズナの大森林の話か? それとも業物に剣の話か? それとも三日のことか? 三日あれば何かを出せるだろう?」

「いえ、それではなく三大英雄です。確か国務大臣の手元にガンズ・ドン・プレンナがおりましたよね。もしよろしかったら、プレンナ殿をお借りできないでしょうか?」


 それにはジッポも思案してから、

「ガンズ殿に聞いてからお返事しよう。なに、悪いようにはしないさ」


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