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馬車の中での告白

 王子に冷たくさてれ辛くて、悲しくて、その時に側にいて私を励ましてくれた二人。

 

(カールとマリーは、アーサー様とお知り合いなの?)


 アーサー様は二人に目配をすると「大丈夫だ」と頷き私に話した。


「君を驚かせるが……この二人は俺の専属の従者にメイドで、幼少期からの幼馴染みだ」


(……お二人がアーサー様の幼馴染み?)


 従者とメイドとアーサー様に紹介をされて、二人は私に深く頭を下げた。


「カトリーナ様、俺はアーサー殿下の専属の従者をしております、カール・ローントです」

「私はメイドのマリー・サランドラです。カトリーナ様」


 二人の自己紹介の後、カールさんは馬車の扉を開けて、マリーはその横に立った。

 なぜか、二人の表情は沈んで見える。

 もしかして二人とも、アーサー様に頼まれて私の側に友のようにいたことを、気にしているの?


 私は二人がいつも笑って、側にいてくれたことに感謝をしてる。

 そして二人より距離を開けた所には、たまにしか話の輪に入っては来なかったけど、アーサー様もいらしたわ。


(そうか、三人で私を優しく見守ってくれていたのね)

 

「カルにマリそんなに心配をするな。馬車の中で私からしっかり、リーナ嬢に説明をする」


 私を下ろして、先に馬車に乗ったアーサー様に助けていただき、馬車に乗った。

 馬車の中で向かい合わせに座ると、カールさんとマリーさんは前の操縦席に並んで座り、馬車を操り私の屋敷へと走らせた。


 アーサー様の説明をしっかり聞こうと彼を見つめた。その私の目を見つめ返して彼は話し出す。


「屋敷に着く前に君に全てを話そう……君はーーリーナ嬢は私の初恋の人なんだ」


(ええ⁉︎)


「アーサー様の初恋の人? 私がですか?」

「あー、そうだ、ち、ちょっと待ってくれ、やはりこの話をするのは照れてしまうよ……私が君に何年も恋煩いをしていた、話だ」


 向かいの席で頬を赤らめて、横を向き照れた様子のアーサー様。


(耳まで真っ赤だわ)


 落ち着こうとする彼を見て、私は彼に初めて出会ったときのことを思い出した。

 彼と初めて会ったのは王子の十一歳の時の誕生会。

 金の刺繍が施された黒の軍服を彼は身につけていた。


『キリム王子の誕生会に、お招きありがとうございます』

 

 それから毎年、王子の誕生会に招かれるアーサー様とも仲良くなっていった。


 あれは十四歳の誕生会。私達は歳も近いと同じく次の国王となられるからと、顔合わせと言う名目で誕生会の後に、食事会をすることになった。


 彼の印象は堂々として凛とした方、彼の話からわかる自国を愛して国のことを常に考え、たくさん学んでいる方といった印象を受けた。

 こんなに素敵な方なのに、婚約者の方がまだお決まりになっていないと聞き、驚きを覚えたのを覚えている。


 よし! とアーサー様は声を出して、まだ頬に赤らみの残る顔をこちらに向けた。


「リーナ嬢、待たせた話を続けよう。私は約一年だけ頼むと、父上に頼み込んでこちらの学園に通いたいと願い出た。父上から承諾をもらい通えることになったが、実際は国の生誕祭や祭事ごとがあり、諸事情なども終わらせて学園に来れたのは半年後になっていた」


 その時のことを覚えているわ。多くの令嬢達はアーサー様を見つめ、頬を赤らめていた。

 彼の婚約者になりたいと、令嬢達が狙っていることも知っている。


 次の話をする前、彼の瞳の奥が揺らいだように感じた。

 

「私がこの学園に来た、本当の理由は君を諦めるためなんだ」


「私を諦める?」


「ああ、情けない話だろ。でも、リーナ嬢を思う気持ちは本当だ。だからといって二人の間に入り、キリム王子から君を奪うなんて考えていなかった。最後に君を見て、この胸に刻み込み、国に帰った際。私の婚約者となる人を選ぼう、そしてその人を心から愛すると決めていた」


 そう言った後、アーサー様は膝の上で拳を握り、眉を潜めて声を荒げた。


「私は学園に入学をした日、挨拶をするために二人を探した。その日、庭園で見たその光景に自分の目を疑った、こんなことがあってたまるか、と。王子の誕生会から数ヶ月しか経っていないのだぞ。その数ヶ月前、私の前で仲むつまじく微笑み合っていた二人が? リーナ嬢のあの悲しみに満ちた表情はなんだ? 嘘だろ……その時に走った衝撃に、胸の痛みは今も胸に残っているよ」


 言い切り、彼の握った手は震え怒りに力が入る。私はその手にそっと自分の手を添えた。


「リーナ嬢……君のその姿を見るのも苦しくて、私の身の回りのことをするために来ていてもらった、私が最も信頼する二人ーーカルとマリを至急に学園に呼んだ。私は隣国の王子だ。いくら愛しの君が悲しんでいても、王子を婚約者として待つ君の側に寄れないからね」


 彼は膝の上で握っていた拳をとくと、私の手を優しく握った。


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