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アーサー様の欲

 ダンスホールを後にしたけど、これからどうするのだろうか? 

 彼が滞在する城の部屋に行くのだろうか?

 私はアーサー様の婚約者……婚約者。それを胸の中で何度も何度も呟いていた。


「リーナ嬢」

「はひっ」


 急に名前を呼ばれて、変な返事を返してしまう、彼はそれにも可愛いと破顔した。

 

「ははっ……ごめん、ごめん。えーっとね。今から君の両親にこれからの話をするために、君の屋敷に向かう。話はすでに通してあるんだ」

「お父様に?」


「ああ、馬車も用意してあるから行こう」


 アーサー様は私の手を掴むと、馬車置き場まで走ろうとする。いつもの落ち着いた彼とは違い楽しそうだった。


「あの、アーサー様待ってください。私はヒールです、そんなには早く走れませんわ」


「そうか、そうだな……では、失礼する」

「きゃっ⁉︎」


 彼は私を持ち上げて、お姫抱っこで城の中を走って行く。

 今日の彼には驚くことばかり、またそれが素敵に見えた。

 

「早くリーナ嬢を私の国へと連れて帰りたい。私が国のことやすべてをリーナ嬢に教える、知らないことは共に覚えよう」


(共に……)


 いつも一人だった国の勉強。アーサー様は国のことをご一緒にやってくださる。嬉しくてお姫様抱っこをする、彼の胸に頬をすり寄せた。


「よろしく、お願いしますね」


 彼はピクッと体を揺らして、走るのをやめてしまった。どうしたのと見上げると、彼の切れ長の目が開かれていた。

 

(あ、ほのかにアーサー様の頬が赤いわ)


 はぁ……と彼は深い息を吐いた。


「やばい……先程からする、君の甘い香りに酔うとはこういうことか、リーナ嬢の唇に今すぐに触れたくなる」


 彼の欲望を含んだ声を間近で聞いた。


「え、ええ……私の唇?」

 

 アーサー様は私にキスがしたいと言ったの? その瞬間に彼との瞳がかち合う。彼の熱がこもった瞳を近くて見てしまい、治った熱が戻ってきた。

 心の中はもう荒れ狂う。初めての出来事に、恥ずかしさに、彼を見ていれなくて目をキュと瞑った。

 彼は、それを肯定と取ったのか……


「ふふっ、リーナ嬢も俺と同じ気持ちかな」


 アーサー様の嬉しそうな声が降ってくる。ああ、このままでは鼓動がどうにかなってしまいそうだわ。


「なんて、可愛いんだ。真っ赤な君を誰にも見せたくないな。しっかり掴んでいてね」


「へぇっ、アーサー様ぁー?」


 私がしっかり掴むのを見て、アーサー様

は馬車まで大急ぎで進んだ。


 ♢


 迎えの馬車の前には、メイドに従者が待っていた。


「はぁ、はぁ……流石に馬車までは遠かったな」

「お、重かったですよね」


 彼は違うと首を振る。


「これは、嬉しい重みだな。できればこのまま私の部屋に連れて行きたいと、何度も思ったよ」


(部屋⁉︎ きゃーーっ‼︎ なんてことを平気で言うの)


 私が両手で顔を覆い恥ずかしがると、ふふっと彼は上機嫌に笑った。


「私の欲望は深いぞ」

「お手柔らかにお願いしますわ」


「うむ、善処する」


 馬車の前で笑う、アーサー様に従者が近寄り頭を下げた。


「アーサー殿下、それまでにしてあげては? カトリーナ様がお可愛そうなほど真っ赤ですよ」

「本当です。アーサー殿下」


「なんだよ。カルにマリだって二人の時はそうだろう?」


 アーサー様と仲良く話す、従者とメイドは聞き覚えのある声だった。

 顔を前の手を離して二人を見た。


「カールさんにマリーさん?」


「ああ、そうだよ。カトリーナ様」

「ええ、そうです。カトリーナ様」


 学園の中で唯一、私と仲良くしてくださった二人だった。


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