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第10話:始まりの男女

狂戦士(ベルセルク)奥義! 屠り喰らうスラッシュ・アンド・イート発動ッッッ!!」


 ヤマドー=サルトルは両腕を振り上げ、その両手に持つ黒鉄(クロガネ)戦斧(バトル・アクス)をぶん投げる。それはルナ=マフィーエたちに迫りくる大岩に向かって真っすぐに飛んでいき、その刃をもってして粉砕する。


 だが、意思を持った戦斧(バトル・アクス)はそこで勢いを止めずに、またしてもどこからともなく落ちてくる大岩群に向かって、縦横無尽に軌道を変えつつ、その全てを破砕する。大岩は粉々になり、小石の雨あられとなり、ヤマドー=サルトルたちの頭上へと降り注ぐ。ヤマドー=サルトルたちは両腕でそれらから頭をガードし、難を逃れることとなる。


「いったいぜんたい、何なのじゃっ! これはどこのどいつからの攻撃なのじゃ!!」


 ルナ=マフィーエは激昂し、怒声をあげるが、その声はドーム内に響き渡るだけで、何からも反応が無かった。それでもだ。彼女は両手で魔法の杖(マジック・ステッキ)を支えながら、自分から前後左右に向けて、警戒心をマックスにする。


「どうやら真のラスボスの登場のようですね……。ゲームで言うなれば裏ボスと言ったほうが適切なのでしょうが……」


 ヤマドー=サルトルは戦斧(バトル・アクス)をぶん投げたことで、その手から武器を失っていた。そのため、魔法の荷物入れ(マジック・バッグ)から短剣(ダガー)を5本取り出し、ドーム内の天井へとそれを全部、投げつける。


 すると、その短剣(ダガー)はドームの天井付近でカキンカキン! と軽快な音を立てて、弾かれることとなる。


「上かえっ!?」


 ルナ=マフィーエは虚を突かれていた。ヤマドー=サルトルが上方へと短剣(ダガー)を投げたことにより、彼女は『チッ!』と舌打ちし、彼が投げた短剣(ダガー)の先へと攻撃魔法:炎の柱(ファー・ピラー)を放つ。


 魔法の杖(マジック・ステッキ)の先端に取り付けられた宝石が紅く明滅し、そこから渦巻く炎の柱が現出する。炎柱はそのまま真っ直ぐに天井を穿つかと思えば、そうならず、まるでそこの空間が歪んでいるかのように、ある一点を中心として、炎柱は広がるように霧散してしまうのであった。


「フフッ……。ワタクシの領域(テリトリー)に足を踏み入れたのは、貴女たちなのデスワ。ワタクシはあくまでも自己防衛を(おこな)っただけですノニ……」


 ドームの天井付近からエコーのかかった妖艶な声が聞こえてくる。ルナ=マフィーエたちは身構えて、その声の主の登場を待つ。するとだ、先ほど破砕した大岩の成れの果てが宙に浮きあがる。そして天井のある一点に集い、4本足の何かしらの生物へと形を取り始める。その生物? はヤモリのようにドームの天井に張り付いていた。そして、ニンゲン族の女性らしき姿を成したと同時に、ドームの天井から地面へと背中から落ちるように着地する。


 その女性? と表現して良いのかわからないが、岩で出来たニンゲンはのっそりと立ち上がり、顔に笑みを浮かべて、ルナ=マフィーエたちに語り掛ける。


「出来ることなら、貴女たちが肉片と化したあと、その血肉を使い、ヒトの身になりたかったのデスワ……。久方ぶりのヒトの姿が砂利と石では、わたくしの豊満なボディが味気ないモノになってしまいマシタワヨ?」


 土色の肌とはまさにこのことであろう。生気をまったく感じさせない土くれの裸体を散々に見せつけてくるが、ヤマドー=サルトルたちには怖気しか感じさせないのであった。


「知ったことかっ! 何故、わらわたちを襲ったのじゃっ! 先ほど倒したヴァンパイア・エンペラーの連れ合いか何かなのかじゃっ!」


「アラ? あのひとは倒されてしまったノ? 嫌デスワ。あんな顔色の悪い男をワタクシの相方などとおっしゃるノハ。ワタクシの夫はあくまでも『アダム』、あのひとのみヨ? これはこの世界では常識ではありませんコト?」


 土くれで出来た女性の口から『アダム』という名を聞き、ルナ=マフィーエとアズキ=ユメルはその顔に驚きの表情を浮かべる。夫があのアダムだとすれば、眼の前の女性の名は決まっていると言っても過言でなかった。


「あなたさまは『リリス』さまなのかえ? この世界の『始まりの男女』のリリスさまじゃと?」


「ご名答デスワ。ワタクシの名は『リリス』……。アダムの気配をワタクシの領域(テリトリー)内にて感じたために、嬉しさの余りに受肉、いえ、この場合は受石したというわけデスワ」


 身体が土くれで構成されているために、やや彼女の表情は判別しにくいが、喜色ばっているかのように感じるルナ=マフィーエたちであった。しかし、ルナ=マフィーエたちには、リリスの言うところのアダムが誰に当たるのかがわからない。そんなたいそれた人物が自分たちの徒党(パーティ)に居るとは思えないのであった。


「えっと……。始まりの男女って、『アダムとイヴ』なの……では? 何故に『アダムとリリス』なのです?」


 話に置いてけぼりにされていたヤマドー=サルトルがルナ=マフィーエにそう問いかける。問われた側のルナ=マフィーエは、え? 何言ってんだこいつ……という表情をありありとその顔に映している。ヤマドー=サルトルは、え? 僕が間違っているんです!? という表情で返すこととなる。


 ルナ=マフィーエは、はあああと深いため息をつき


「おぬしはいったい、どこの世界からやってきたニンゲンなのじゃ……。アダムとリリスは夫婦であり、そこに割って入って、アダムを寝取ろうとしたのがイヴじゃろうが……。こんなの赤ん坊以外、誰でも知っている話なのじゃ……」


「出会った時から、ヤマドーは常識を知らないとは思っていたけど、ここまで浮世離れしているとは思っていなかったのニャ……。錬金術の研究をしすぎて、とち狂ってしまったのかニャン?」


 ヤマドー=サルトルは自分が非常識すぎると言われて、憤慨しそうになる。しかしだ、ここは現実世界とは似て非なる世界であることは百も承知だ。まさか、創世記自体が違っているとは、さすがのヤマドー=サルトルには予想外すぎただけなのである。


「フフッ。イヴという名を久方ぶりに聞きましたわ……。もしかして、貴方はイヴの血に繋がるニンゲンなのカシラ? アダム……。そう……。シヴァ=ザワ・ゴゥの不倫相手の子孫なの?」


「ちょーーーっと待ってください!? そこで何故、豆柴・豪(まめしば・つよし)会長の持ちキャラであったシヴァ=ザワ・ゴゥの名前が出てくるんです!? 誰か説明をプリーズ・ミー!!」

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